2005年11月アーカイブ
アシカ科にはアシカ、オットセイ、オタリア、トドなどがいますがトドは大きさも違うんでわかりやすいんですが、オットセイとアシカの区別がわかりません。どのようなところが違うのでしょうか?教えてください。
アシカとオットセイは近縁な動物でとてもよく似ていて、区別が難しいですね。一応違いはありますが、素人がぱっと見てわかるようなはっきりした特徴はないと言っていいでしょう。アシカとオットセイの一番大きな違いは、後肢にあります。あの、ひれ状になった後肢をよく見ると、縁がぎざぎざして指があるのがわかりますね。この指の長さが全部ほぼ同じなのがオットセイで、両端の二本の指だけが少し長くて不揃いなのがアシカです。これ以外にも、オットセイの方が吻が尖って頭が小さい感じに見える、とか、オットセイには長くて厚い剛毛と密な下毛があるがアシカの毛足は短い、とか、オットセイの耳介-耳たぶのことですね-の方がアシカのものよりも長くて目立つ、といった違いがあるそうです。でも、こんな細かい違いは、動物園などでよほどしげしげと観察しないとわかりませんよね。
和名:マダラサラマンドラの仲間
学名:Salamandra
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過去記事でも取り上げられています。
道にサンショウウオかイモリのような
よろしければ、こちらも御覧下さい。
今年も、クリスマスツリーが飾られる季節になりましたね。ツリーになるのはモミの木と、誰もが思っているでしょう。「もみのき」という歌もありますよね。
実はそうとは限りません。現在のヨーロッパでクリスマスツリーにされるのは、主にドイツトウヒという木です。日本のモミよりも、エゾマツに近い種です。ドイツだけでなく、ヨーロッパの東半分からシベリアにかけて、広く分布します。
クリスマスツリーの風習はドイツで生まれました。ドイツトウヒは、シュヴァルツヴァルト(黒い森)と呼ばれるドイツの森にたくさん生えています。この木が聖木にふさわしいとされたのは、樹形が美しく、冬でも緑を絶やさないためでしょう。
ドイツトウヒは、もともと日本にはありませんでした。今は日本にも移入されて、各地に生えています。暑さが苦手なので、北海道に多いです。防雪林に使われます。
ヨーロッパにも、日本のモミに近い種があります。ヨーロッパモミです。この木がクリスマスツリーにされることもあります。日本で「クリスマスツリーはモミの木」とされたのは、おそらくヨーロッパモミのツリーを見てのことでしょう。
ドイツトウヒもヨーロッパモミも、マツ科の針葉樹です。ドイツトウヒやエゾマツはマツ科の中のトウヒ属に、ヨーロッパモミや日本のモミはマツ科のモミ属に分類されます。トウヒ属とモミ属は似ていて、素人目には区別ができません。簡単な区別法としては、実の付き方を見るとよいです。トウヒ属は、花が咲いた後に垂れ下がって実がなりますが、モミ属は上を向いたまま実がなります。
トウヒ属とモミ属は、すべてが常緑樹です。冬の厳しいヨーロッパでは、一年中緑のある木が神聖視されました。古代には、ドイツトウヒやヨーロッパモミに限らず、類縁の木が多く崇拝されたことでしょう。
ですから、日本にあるトウヒ属のエゾマツや、モミ属のモミなどをクリスマスツリーに仕立てても、間違いとはいえません。どうかお好きなトウヒ属やモミ属の木を選んで、お楽しみ下さい。
ホオジロザメの名は、おそらく誰もが聞いたことがあるでしょう。映画『ジョーズ』のせいで、とても有名になりました。この映画では、ホオジロザメがヒトを襲う悪鬼のように描かれています。
ホオジロザメは、専門的にはホホジロザメと呼ばれます。このサメは、本当にヒトを襲って食べるのでしょうか?
ホホジロザメがヒトを襲うことはあります。けれども、彼等はヒトを常食しているわけではありません。
ヒトは陸上生物です。いつも海にいるわけではありませんね。そんな生き物を餌にしていたら、ホホジロザメはとっくに飢えて死んでいます。彼等は、本来、アシカやアザラシなどの海の哺乳類を食べています。
ヒトを襲うのは、アシカやアザラシと、ヒトを間違えてのことです。特に、サーフボードに乗ったヒトを海面下から見ると、アシカそっくりに見えます。サメは、アシカを食べるつもりでサーファーを襲ってしまいます。どちらかといえば、サメのいる海域で、紛らわしいことをするヒトのほうが不注意です。
ホホジロザメは、全長5mをゆうに越える大型のサメです。これほどの体を維持するには、たくさんの食べ物を取らなければなりません。すばしこいアシカやアザラシを捕獲できるように、ホホジロザメの体には特殊な仕組みがあります。
魚の一種なのに、ホホジロザメは、哺乳類のように体温を高く保つことができます。周囲の水温より、10~15℃も高いことがあります。これは、奇網【きもう】という特別な組織の働きです。
このように体温を高く保てば、いつでもすばやく動けます。獲物を襲える機会を逃しません。運動選手が、試合の前にウォームアップするのと同じ原理ですね。
サメは、よく原始的な生き物だとばかにされます。しかし実は、哺乳類並みに発達した部分もあるのですね。偏見にとらわれず、サメの研究が進むことを願っています。
図鑑にはオグロメジロザメ 、カスザメが掲載されています。ぜひご利用ください。
日本には、生きている化石と呼ばれる生き物がたくさんいます。カブトガニもその一種です。北九州の沿岸や瀬戸内海に分布します。カブトガニは、泥や砂のある海岸に棲みます。硬い甲羅をかぶり、同じく硬い長い尾を持っています。いかめしい姿から、カブトガニと名付けられました。カニといってもカニに近縁ではありません。遠い昔に滅びた三葉虫【さんようちゅう】の親戚です。卵の中にいるカブトガニの赤ちゃんは、三葉虫にそっくりです。
三葉虫とカブトガニは、今から五億九百万年以上前は同じものでした。古生代のカンブリア紀と呼ばれる時代です。この時代、三葉虫は爆発的に栄えていました。場所によっては、三葉虫の化石がびっしり詰まった地層があるほどです。
カンブリア紀のどこかの時点で、三葉虫とカブトガニは分かれて進化し始めました。
その後、古生代の二畳紀の末に、三葉虫は滅びます。あれほど栄えたのに、なぜ絶滅したかはわかっていません。カブトガニは大絶滅の時代を生き延びました。恐竜がいた中生代ジュラ紀のカブトガニと、現代のカブトガニは、ほとんど形が変わりません。生きている化石といわれる所以【ゆえん】です。
地球の激変を何度もくぐり抜けたのに、現代のカブトガニは絶滅の危機にあります。生息できる海岸がどんどん減っているからです。
カブトガニが棲めるのは、波が静かで水がきれいで、干潟のある海岸です。そのような場所は埋め立てしやすいため、人間によって多くが破壊されました。家庭や工場の排水で海が汚されたことも、カブトガニを激減させました。
生きたカブトガニは、きれいな海岸でゆったりと歩いたり泳いだりしています。重そうに見える彼らでも、泳ぐことができるのですね。その姿はなかなかユーモラスです。歩く時とは逆に、腹側を上にして背泳ぎします。
カブトガニが棲めない海岸は、ヒトにとっても住みにくいです。汚れた海は誰でも嫌ですよね。カブトガニの背泳ぎが、いつでも見られる海岸を増やしたいものです。
図鑑にはカブトガニが掲載されています。ぜひご利用ください。
シマホッケとホッケの違いが分かりません。教えていただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。
和名ホッケと呼ばれる魚は、学名を【Pleurogrammus azonus】という「アイナメ科」の魚です。地方によっては、標準和名でアイナメと呼ばれる魚をホッケと呼ぶそうですので、注意が必要です。アイナメとホッケの違いは「アイナメは尾鰭(おびれ)の縁が丸いのに対して、ホッケでは深く二叉しています(「自然界」より引用)。シマホッケというのは、標準和名でキタノホッケと呼ばれる魚の方言名です。アイナメ、ホッケ、キタノホッケは互いによく似ていて、分類学上も近い仲間ですので、混同されやすい魚たちです。その上、日本の魚にはたいへん多くの方言名があることが多いので、混乱に拍車がかかっていることがよくあります。日本の魚に方言名が多いのは、それだけ豊かな魚文化がある証拠です。
イチョウは、街路樹や公園樹として人気があります。実の銀杏【ぎんなん】が食用になることでも有名ですね。平凡な樹木でありながら、イチョウが「生きている化石」なのは御存知でしょうか?
イチョウの仲間は、恐竜が栄えていたのと同じ時代に栄えました。中生代のジュラ紀という時代です。ジュラ紀は、今からおおよそ二億五百万年前~一億三千五百万年前を指します。その頃には、たくさんのイチョウの種がありました。今あるのは、私たちが見るイチョウただ一種です。仲間はみな絶滅しました。イチョウは孤立した種です。
イチョウは、恐竜時代から基本的な形が変わっていません。イチョウの中に、お葉つきイチョウというのがあります。「葉に花が付いて実がなる」という不思議な性質を持ったイチョウです。これこそ、イチョウが生きている化石である証拠です。
植物の花は、もとは葉でした。葉が進化して花になりました。イチョウは、葉から花が分化した頃の性質を残しています。そのために、葉の一部が花になって実がなることが起こります。葉から花になりかけの状態ですね。
イチョウの花を見たことがある人は少ないでしょう。イチョウの樹は雄株と雌株に分かれています。雄株には雄花が咲き、雌株には雌花が咲きます。銀杏は雌株にしか実りません。お葉つきイチョウはほとんどが雌株で、葉に銀杏が付きます。まれに、葉に雄花が咲く雄株があります。
お葉つきイチョウは日本の各地にあります。そのうち何本かは、国の天然記念物に指定されています。
イチョウは、秋の黄葉が見事ですね。黄葉の美しさが人間に好まれて、今では世界中にイチョウが植えられています。恐竜時代のイチョウも、現代のように黄葉したのかどうかはわかりません。
恐竜の目にイチョウはどう映ったでしょう? もしも黄葉したのなら、恐竜も美しさを感じたのでしょうか? 太古の光景に思いを馳せると、いつものイチョウも違って見えますね。
図鑑にはイチョウが掲載されています。ぜひご利用ください。
カマキリの仲間は、夏から秋にかけてよく見られます。人家の近くにも多くて、馴染み深い昆虫ですね。カマキリ類は、どの種も秋に産卵します。枯れ草や枯れ枝に、茶色い卵塊が付いているのを見た人は多いでしょう。カマキリの親虫は冬に死に絶えて、卵が越冬します。卵塊のあの茶色い表面は、防護壁です。本物の卵は、防護壁の内側に包まれています。防護壁には、冬の寒さから卵を守る働きがあります。
古来、日本には、カマキリの卵について不思議な言い伝えがありました。「雪の多い年は、カマキリの卵が高い位置にある」というのです。つまり、カマキリは、雪に卵が埋もれないように、雪が積もらない位置に卵を産む、というわけです。
もし、本当にそうならば、これは大変なことです。その年、雪がどのくらい降るか知らなければ、そんなことはできません。カマキリの母親は冬には死んでしまいます。自分が死んだ後、どのくらい雪が降るかを、カマキリは予知するのでしょうか?
長い間、この言い伝えは言い伝えでしかありませんでした。明確な証拠がなかったからです。最近になって、これを実証する研究が公にされました。ある民間の研究者が、成果をまとめた論文を発表しました。雪国の新潟県にお住まいの方です。
この研究によれば、カマキリが積雪量を「予知」するのは本当らしいです。カマキリはあらかじめ雪の積もる量を知り、卵が埋もれて死なないように、産卵する位置を調整するといいます。
カマキリは、いわゆる「超能力」で「予知」するのではありません。どうやら、樹木が出す何らかの信号を読み取っているらしいです。樹木は気象の微妙な変動により、体内の水の流れを変えます。その変化をカマキリは読み取って、積雪量を知るというのです。
こういう話を聞くと、自然界の生き物の強さや神秘性を感じますね。この研究成果は、農山漁村文化協会から出ている『カマキリは大雪を知っていた』(酒井與喜夫【さかい よきお】著)に載っています。詳しくはこちらをお読み下さい。
図鑑にはオオカマキリ、コカマキリ 、チョウセンカマキリ 、ハラビロカマキリ 、ミズカマキリ が掲載されています。ぜひご利用ください。
北極圏に「ジャコウウシ」という野生の動物が生息している事を知りました。北極圏で氷に覆われた所で何を食料にしているのか知りたいので教えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
ジャコウウシは、偶蹄目ウシ科に属する動物です。名のとおりウシの一種に見えます。しかし、ウシよりはカモシカに近い動物です。 ジャコウウシは、北アメリカ北部・グリーンランドなどの北極圏に棲んでいます。北極圏には、雪と氷以外何もないと思われがちですが、実は豊かな生態系があります。 北極圏は、ツンドラと呼ばれる湿地帯が多くを占めています。ツンドラの土は、冬には地表近くまで凍りつきます。けれども、夏には溶けてたくさんの植物が生えます。これらの植物が、北極圏の動物たちを支える食料となります。ジャコウウシもこれらの植物を食べて暮らします。 短い夏の間に、ジャコウウシは食べられるだけ食べます。そうして、冬を越すエネルギーをたっぷり貯えます。 冬の間も、ツンドラの植物は全部枯れてしまうわけではありません。雪の下で越冬しています。ジャコウウシは角や足の蹄を使って雪を掘り、下の植物を食べています。
日本人にとって、サルは身近な生き物ですね。日本にはニホンザルが棲んでいるからです。『さるかに合戦』や『桃太郎』のように、サルが登場する民話が多いことを見ても、昔から親しまれたことがわかります。
温帯にある国としては、これはとても珍しいことです。霊長目【れいちょうもく】=サル類は、大部分が熱帯に分布します。温帯に棲むサルはごく一部です。全世界に分布するヒトは例外です。
ヒトを除けば、ニホンザルは世界最北に分布するサルです。ニホンザルの分布北限は青森県の下北半島で、ここが世界のサルの分布北限地です。
雪の中で活動するサルは、世界的に見れば驚異です。ニホンザルが英語でsnow monkey(雪のサル)と呼ばれることがあるのはこのためです。子ザルはヒトの子供のように、雪玉を作って遊ぶことさえします。なぜ、ニホンザルがこんなに寒い地域にまで分布を広げたのかは謎です。
長野県・地獄谷温泉のサルなど、寒さをしのぐために温泉に入りますね。雪と温泉が多い日本ならではの光景です。ここには、世界で唯一の「サル専用露天風呂」があります。実物を見なければ信じない外国人が多いでしょう。「温泉ザル」を撮影するために、真冬の地獄谷にやってくる外国人カメラマンが多いそうです。
ニホンザルは日本人に身近すぎて、その貴重さがわかりにくいです。最近は畑を荒らしたといった報道が多く、悪い印象が付いてしまっています。けれども、本来のニホンザルは、ヒトの起源を考えさせてくれる自然界の隣人です。
例えば、ヨーロッパには、本当の野生のサルはいません。ヨーロッパ人にとって、サルは遠い熱帯にいる生き物です。ヒトに最も近い生き物を、身近に観察する機会がありません。そういう機会を持っている私たちは、幸運ではないでしょうか。
ニホンザルにとっても私たちにとっても、駆除したりされたりという関係は不幸です。こういう場面にこそ人類の叡智を発揮して、共存する方法を見出したいものですね。
図鑑にはニホンザルが掲載されています。ぜひご利用ください。
寒くなると、海の幸が美味しくなってきますね。カニの仲間は、海の幸の代表でしょう。ズワイガニ、松葉【まつば】ガニ、越前【えちぜん】ガニ、コウバコガニなど、いろいろなカニが献立を飾ります。
ここに挙げた四つの名は、実は、みな同じ種を指します。正式な日本語名は「ズワイガニ」で、あとの三つは「ズワイガニ」の別名です。
ズワイガニは、食用としてとても重要で、日本各地で獲られています。そのために方言名が多いのです。加えて、雄と雌とで大きさや味に差があるので、名前が呼び分けられています。雌のほうが雄よりも小さく、卵を持つために味も違います。
ズワイガニとは、もともと石川県や富山県で使われていた名でした。今でもこの地方では、雄だけをズワイガニと呼び、雌をコウバコガニと呼びます。越前ガニとは、福井県での雄の呼び名です。雌はセイコガニと呼ばれます。松葉ガニは、兵庫県北部・鳥取県・島根県などの山陰地方で、雄のズワイガニを呼ぶ名です。この地方では、雌をオヤガニ、セコガニなどと呼びます。
ズワイガニの雌が雄より小さいのには、理由があります。それは、ズワイガニの繁殖の仕方に関わっています。
ズワイガニの雌は、生まれておよそ八年経つと卵を産めるようになります。そうなるやいなや、待ちかまえていた雄が交尾して、雌は産卵します。卵が孵化するまで、雌はおなかに抱いて保護します。孵化すると、雌はすぐに次の産卵をします。
カニは、硬い外皮を何回も脱いで大きくなります。けれども、卵を抱いている間、雌は脱皮できません。雌の成長は産卵した時点で止まってしまいます。雄は卵を抱かないので、雌よりも脱皮する回数が多いです。だから雌よりも大きくなるのですね。
海底では、雄と雌のズワイガニが、まるで手をつなぐように鋏【はさみ】をつないでいることがあります。微笑ましい光景ですね。しかしこれは、雄が他の雄に雌を取られないようにしているのだそうです。「嫉妬深い」などと言っては気の毒でしょう。厳しい生活の中で、自分の子孫を残そうとする工夫です。
「かすべ」と言う魚をレストランなどのメニューで見ますが、実はどんな魚なのかわかりません。検索しましたがやはりわかりませんでした。「がんぎえい科」で北海道の魚らしいのですがどんな魚なのでしょうか?教えてください。お願いします。
「かすべ」とは、ガンギエイの地方名です。ガンギエイは、名前のとおりエイの一種です。 エイは御存知でしょう。上下につぶれた平たい形をした魚です。サメと同じ軟骨魚類に属します。体表には鱗がなくて、ざらざらした皮膚(いわゆる「鮫肌」)をしています。 ガンギエイも上下に平たい、エイらしい形をしたエイで、体長約65cmくらいになります。上から見るとやや角張って、菱形に近い形をしています。水深20mから80mくらいの海底に、ぺったりと貼りつくようにして暮らします。底引き網で捕獲し、一般的にはかまぼこの材料にされます。青森県以南、南シナ海までの海に分布します。実際にはガンギエイは動きますから、北海道で捕獲されてもおかしくないでしょう。 分類学的に言うと、ガンギエイはエイ目ガンギエイ亜目ガンギエイ科に属します。ガンギエイの「ガンギ」は漢字で書くと「雁木」で、雁が列をなして飛ぶ時のようにぎざぎざした形のものを指します。ガンギエイの尾の部分には棘が並んでいて、それが雁木のようなのでこの名前が付けられました。 ガンギエイのことを「かすべ」と呼ぶ地方は、日本のあちこちにあるようです。
両生類の中で、カエルは馴染みがある動物ですね。カエル以外に、イモリやサンショウウオと呼ばれる両生類がいます。トカゲのような、長い尾と短い四肢を持った動物です。
サンショウウオの仲間は、知られざる生き物です。ほとんどの種は体が小さく、色が派手なわけでもなく、声も出さないからです。
しかし、サンショウウオに関しては、日本は自慢できる国です。サンショウウオ科に属するものだけでも十五種以上もいます。しかも、そのうち一種を除いて、あとは日本固有種です。世界のどこにもいない種がこんなにいるなんて、日本の自然が豊かな証拠です。
外国にも分布する唯一の種は、キタサンショウウオです。日本では、北海道の釧路湿原でのみ分布が確認されています。外国では、シベリアに広く分布しています。なぜキタサンショウウオは、こんな不思議な分布をしているのでしょうか?
実は、似た分布の生き物が、他にもいます。クモの一種ミズグモです。ミズグモもヨーロッパからシベリアにかけて広く分布するのに、国内では釧路湿原など、ごく限られた地域にしかいません。ここにヒントがあります。
キタサンショウウオもミズグモも、寒さに強いです。そのかわり暑さに弱いです。そのため、氷河期には今よりずっと広く分布していました。氷河期が終わると、どんどん寒い地域に押し込められてゆきました。国内では、かろうじて氷河期の名残がある釧路湿原に残ったわけです。両種とも、氷河期の記憶を伝える貴重な存在です。キタサンショウウオとミズグモは、古い盟友みたいですね。けれども、キタサンショウウオは水生昆虫やミズグモを餌にします。遠い氷河期から、厳しい自然の中で、両種は追いつ追われつしていたのでしょう。
分布以外にも、キタサンショウウオには興味深い特徴があります。その一つが、「産卵直後の卵嚢【らんのう】が青く光る」ことです。卵嚢とは、卵の入った袋です。水中でそれが輝く様子は、「湿原のサファイア」と呼ばれるほど美しいそうです。こんな神秘的な「生きている宝石」が、いつまでも釧路湿原にあって欲しいですね。
その他釧路湿原に見られる生物コラム『食虫植物タヌキモ』
残念ながら、キタサンショウウオは掲載されていませんが
図鑑にはオオイタサンショウウオ、オオサンショウウオ、オオダイガハラサンショウウオクロサンショウウオトウキョウサンショウウオトウホクサンショウウオハクバサンショウウオハコネサンショウウオヒダサンショウウオホクリクサンショウウオが掲載されています。ぜひご利用ください。
アシカとアザラシは、外見が似ています。どちらも愛嬌があるので、動物園や水族館で大人気ですね。そのわりに、両者の違いは知られていません。
アシカもアザラシも、一種だけではありません。いくつもの種がいます。アシカの仲間では、オットセイやトドが日本近海に分布します。アザラシの仲間には、タマちゃんで有名になったアゴヒゲアザラシや、ゴマフアザラシなどがいます。
アシカとアザラシは、ほとんどの種が海に棲みます。どの種も手足がひれになっていて、泳ぎが上手です。すべての種が、魚・イカ・カニなど、水中の動物を食べる肉食性です。
こういった共通点以外に、以下のような違いがあります。
アシカやアザラシが陸にいるところを観察してみましょう。アシカは、前足と後ろ足を両方使って歩きます。ひれ足というだけで、普通の四足動物と同じ歩き方ですね。アザラシは、前足と後ろ足を両方使って歩くことができません。前足は使えるものの、後ろ足は尾のように伸ばしたきりです。後ろ足で体を支えられないため、アザラシは、おなか全体を使ってイモムシのように歩きます。歩くというより、這うという感じです。
アシカとアザラシは、泳ぎ方にも違いがあります。アシカは、前足をぱたぱたさせて泳ぎます。ひれ足がまるで翼のようです。前足で水を掻くために、そういう泳ぎ方になります。アザラシは、水中で前足を動かしません。前足で水を掻かないからです。体全体をくねらせて水を掻きます。専門的には、他にもいろいろな違いがあります。けれども、普通の人が観察すればすぐにわかるのは、ここに挙げた「動き方の違い」でしょう。
時おり、タマちゃんのように、人が多い地域に来るアザラシやアシカがいます。二〇〇四年と二〇〇五年には、千葉県にゴマフアザラシ(愛称はカモちゃん)が現われました。一九四八年には、大阪府の淀川にアシカが現われた記録があります。
もしも皆さんの身近に、アザラシやアシカが現われたら、動き方を観察すると面白いでしょう。ただし、彼等を脅かさないように、そっと見守るのがマナーです。
図鑑にはアゴヒゲアザラシ、クラカケアザラシ、ゴマフアザラシ、ゼニガタアザラシが掲載されています。ぜひご利用ください。
日本には、タヌキモという名の水草があります。動物のタヌキにちなんだ名前です。茎に葉が付いている様子が、タヌキの尾に似ているのだそうです。愛嬌があって、一度聞いたら忘れられない名前ですね。
名前以外に、タヌキモには興味深い特徴があります。食虫植物であることです。水中のミジンコや水生昆虫などを捕らえて、自分の栄養にしてしまいます。
タヌキモの葉には、捕虫嚢【ほちゅうのう】という小さな袋が付いています。袋には小さな口があります。この口から小動物を吸い込んで、袋に閉じ込めます。獲物は袋の中で消化されます。タヌキモの捕虫嚢は小さいため、ごく小さい獲物しか捕らえられません。
食虫植物というと、ちょっと恐ろしい印象がありますね。けれども、タヌキモの外見はちっとも恐ろしげではありません。普通の水草です。夏には、水上に茎を伸ばして可愛い花を咲かせます。
なぜ、タヌキモのような食虫植物が存在するのでしょうか? ヒントは、食虫植物が生える環境にあります。
北海道の釧路湿原は、タヌキモの分布地の一つです。ここには他の食虫植物も分布します。モウセンゴケです。タヌキモと違い、モウセンゴケは陸に生えます。しかし、昆虫などを捕らえて栄養にするのは同じです。
実は、釧路湿原は、土の栄養分が少ないところです。タヌキモやモウセンゴケは、動物を栄養にすることによって、足りない栄養分を補っています。食虫植物は、栄養の乏しい環境で生き抜くために、動物を利用しています。
動物のほうも、利用されっぱなしではありません。例えば、釧路湿原に棲むミズグモは、タヌキモを糸でつづって巣を作ります。生き物たちは、お互いに利用したりされたりしながら、自然界で生きています。昆虫を食べるタヌキモも、それを巣にするミズグモも、たくましいですね。
ミズグモについては、過去のこのブログで扱っています。そちらも参照されると面白いでしょう。
アクアラングを持ったクモ? ミズグモ
図鑑にはタヌキモが掲載されています。ぜひご利用ください。