今年も、クリスマスツリーが飾られる季節になりましたね。ツリーになるのはモミの木と、誰もが思っているでしょう。「もみのき」という歌もありますよね。
実はそうとは限りません。現在のヨーロッパでクリスマスツリーにされるのは、主にドイツトウヒという木です。日本のモミよりも、エゾマツに近い種です。ドイツだけでなく、ヨーロッパの東半分からシベリアにかけて、広く分布します。
クリスマスツリーの風習はドイツで生まれました。ドイツトウヒは、シュヴァルツヴァルト(黒い森)と呼ばれるドイツの森にたくさん生えています。この木が聖木にふさわしいとされたのは、樹形が美しく、冬でも緑を絶やさないためでしょう。
ドイツトウヒは、もともと日本にはありませんでした。今は日本にも移入されて、各地に生えています。暑さが苦手なので、北海道に多いです。防雪林に使われます。
ヨーロッパにも、日本のモミに近い種があります。ヨーロッパモミです。この木がクリスマスツリーにされることもあります。日本で「クリスマスツリーはモミの木」とされたのは、おそらくヨーロッパモミのツリーを見てのことでしょう。
ドイツトウヒもヨーロッパモミも、マツ科の針葉樹です。ドイツトウヒやエゾマツはマツ科の中のトウヒ属に、ヨーロッパモミや日本のモミはマツ科のモミ属に分類されます。トウヒ属とモミ属は似ていて、素人目には区別ができません。簡単な区別法としては、実の付き方を見るとよいです。トウヒ属は、花が咲いた後に垂れ下がって実がなりますが、モミ属は上を向いたまま実がなります。
トウヒ属とモミ属は、すべてが常緑樹です。冬の厳しいヨーロッパでは、一年中緑のある木が神聖視されました。古代には、ドイツトウヒやヨーロッパモミに限らず、類縁の木が多く崇拝されたことでしょう。
ですから、日本にあるトウヒ属のエゾマツや、モミ属のモミなどをクリスマスツリーに仕立てても、間違いとはいえません。どうかお好きなトウヒ属やモミ属の木を選んで、お楽しみ下さい。
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