2006年1月アーカイブ
/
猫を現在飼っています。猫はどのくらい生きるものなのですか?寿命を教えてください。また、今飼っている猫は10年目です。人間におきかえると、どのくらいの年齢になるのでしょうか?
飼い猫の寿命は、飼われている条件によってずいぶん違います。大事に飼われていれば、10年~15年くらい生きるようです。私が知っている範囲では、21年生きた猫もいますよ。
しかし、病気や怪我のために、5、6年で死んでしまう飼い猫も少なくありません。生き物を飼ったら、最後まできちんと面倒を見てあげて欲しいですね。
10年も飼われている猫がいるとは、長生きですね。人間に換算すると、だいたい70歳くらいだと思います。もう老猫ですね。それだけ長生きをしているなら、大事にされているのでしょう。飼い主さんにとっても飼い猫にとっても、それは幸せなことです。
大切にしてあげてくださいね。
前から見ると、ちょっと恐ろしげですが、横からみると可愛い・・・不思議ですね。
和名:キンクロハジロ (オス)
学名:Aythya fuligula
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
図鑑には、キンクロハジロが掲載されています。ぜひご利用ください。
昆虫は、ふつう冬には活動しません。寒さに弱いからです。種によって、様々な形で冬に耐えます。活動しなくてもいいように、卵や蛹【さなぎ】になるものが多いですね。幼虫や成虫が土に潜ったり樹皮の陰に隠れたりして、じっと耐えるものも多いです。
ところが、中には変わった昆虫がいます。なんと、雪の中でなければ活動できないというのです。その名をセッケイカワゲラといいます。
セッケイカワゲラは、カワゲラという昆虫の仲間です。カワゲラは原始的な昆虫で、広い意味ではトンボに近いものです。トンボと同じように、幼虫の頃は水中に棲みます。成虫になると陸に棲みます。成虫には翅【はね】があり、飛ぶことができます。
カワゲラの中でも、セッケイカワゲラはとびきりの変わり者です。幼虫の頃は、他のカワゲラと同じように水中に棲みます。春先に生まれた幼虫は、秋まであまり成長しません。秋に急速に成長し、晩秋に成虫になります。多くの昆虫が姿を消す頃ですね。
成虫のセッケイカワゲラには翅がありません。多くのカワゲラと違い、彼らは飛べません。かわりにせっせと歩きます。氷点下の雪の中を歩くのです。彼らは低温に強く、高温に異常に弱いです。ヒトの手に載せられただけで、暑さで麻痺してしまいます。これでは、雪の中にしか棲めませんね。
冬を生きた成虫は、春先に卵を産んで死にます。春から夏の間、彼らは幼虫として、涼しい水中にいます。普通の昆虫とまるで逆ですね。
なぜ、セッケイカワゲラはこんな生活をするのでしょう? 一つの仮説があります。他の昆虫がいない時期に活動すれば、食べ物を独占でき、敵に襲われる確率も低いから、というものです。
「雪の中に食べ物なんてあるのか?」と思われる方もいるでしょう。意外にあります。小さな昆虫ならば、雪中の細かい樹皮やコケのかけらなどで、充分生きてゆけます。
それでも、雪中で暮らせる昆虫は少ないです。セッケイカワゲラは珍しい例です。運が良ければ、スキー場で彼らを見ることもあるそうです。
図鑑には、セッケイカワゲラが掲載されています。ぜひご利用ください。
冬は食べ物が美味しい季節ですね。鮟鱇(アンコウ)鍋は、日本を代表する冬の御馳走でしょう。「あんきも」と呼ばれる肝臓も美味とされます。
食用にされるアンコウには、いくつかの種が含まれます。どの種も姿と名前が似ていて、普通の人には区別しがたいです。
一番美味しいのは、キアンコウだといわれます。何も付かないただのアンコウという種もあります。他のアンコウと区別するために、ただのアンコウはクツアンコウとも呼ばれます。キアンコウやアンコウ以外に、ニシアンコウ、メダマアンコウなどが食用にされます。どの種も、海底に貼りつくようにして生活しています。
アンコウの仲間は、姿が醜いことでも有名ですね。踏んづけられたように平たい体、ぼろきれのような体の突起、がま口に負けない大きな口など、どこも奇妙に見えます。
しかし、醜いとするのは、ヒトの一方的な価値観です。アンコウ類の独特な姿には、ちゃんと意味があります。
平たい形は、海底にうずくまるのに都合がいいです。体の突起は、岩に付いた海藻のようです。アンコウの仲間が海底にいると、ただのこぶや岩に見えます。他の生き物は、すぐそばにいても気づきません。うっかり近づけば、大口で一呑みにされます。逃げる暇はありません。餌を捕らえるために、よくできていますね。
また、彼らは素晴らしい「釣り道具」を持っています。背びれの一部が長く伸びて、先端が少し膨らんでいます。これをちょいちょいと動かせば、小さな動物が泳いでいるように見えます。小魚などが食べ物かと思って近づくと、ぱくり!自分のほうが食べられてしまいます。天然の釣り竿ですね。
英語では、アンコウ類をanglerfishといいます。「釣り師魚」という意味です。言い得て妙ですね。アンコウのあの姿は、不細工どころか、海底の釣り名手の証拠です。
アンコウ類と似た魚に、チョウチンアンコウ類がいます。似ていても、両者は少し違うグループに分類されます。この話は、また別の機会にしましょう。
図鑑には、キアンコウが掲載されています。ぜひご利用ください。
立春の前日を、日本では節分としますね。節分とは、季節の分かれ目という意味です。
昔の日本人は、季節の分かれ目には魔物が現われると信じていました。そこで、節分には追儺【ついな】という魔除けの儀式が行なわれます。今、節分に「鬼は外、福は内」と豆まきをするのは、その名残です。
豆まきに使われるマメは、ダイズですね。昔の人は、ダイズに魔物を追い払う力があると考えました。おそらく、ダイズがとても栄養のある食べ物だからでしょう。ダイズには、良質の蛋白【たんぱく】質がたっぷり含まれています。植物には珍しいことです。蛋白質は、人体に欠かせない栄養です。
普通、良質の蛋白質を得るには、野山で鳥獣を狩ったり、海や川で漁をしたりしなければなりません。けれども、ダイズは畑で作ることができます。狩りや漁に比べれば、ずっと安定して、大量に蛋白質を得られます。
栄養が満ち足りれば、ヒトは健康になりますね。病気に強くなります。医療の発達していない時代には、病気は魔物のしわざと信じられました。栄養豊富なダイズが魔除けとされたのは、当然かもしれません。
ダイズは、中国で作り出された栽培種です。原種はツルマメという植物で、日本にも自生しています。ダイズの栽培が、いつ頃、中国から日本に伝わったのかはわかっていません。縄文時代には、まだなかったようです。
奈良時代には、確実に日本に伝わっていました。古事記にダイズが登場します。大宜都比売【おおげつひめ】という食物の女神の体から、ダイズが現われたといいます。同時にイネやムギも現われたとされていますから、それらと同じくらい、ダイズが大切だったことがわかります。
女神は、自らの体を犠牲にしてダイズを生みました。この神話は、きっと、命をつなげる大切さを示しているのでしょう。古代の人のメッセージを、私たちもしっかり受け止めたいですね。
図鑑には、ダイズが掲載されています。ぜひご利用ください。
寒中お見舞い申し上げます。昔の人は、この寒さを乗り切るために、栄養豊富な物を食べました。選ばれた食物の一つがシジミです。寒中のシジミは「寒しじみ」と呼ばれます。寒しじみは、寒さに耐えるための栄養を貯えています。それをヒトがいただきます。
シジミは、冬以外に、夏にも旬【しゅん】があります。夏のシジミは「土用しじみ」と呼ばれます。寒しじみと同様に、体に良いものとされます。
一年に二回も旬があるとは、珍しいですね。なぜそんなことになるのかといえば、じつは、シジミにはいくつもの種があるからです。
生物学的には、「シジミ」という種はありません。私たちが普通に食べている「しじみ」には、三つの種があります。マシジミとヤマトシジミとセタシジミです。これら三種は、生息域も旬も違います。けれども、普段は混同されています。
マシジミは、完全な淡水に棲む貝です。きれいな川の砂底にいます。江戸時代には、隅田川でたくさん採れました。江戸っ子が「しじみ」と言ったのはマシジミです。マシジミは冬が旬です。ですから、寒しじみと呼ばれるのは、本来はマシジミのことです。
ヤマトシジミは、海水と淡水が混じる汽水域に棲みます。島根県の宍道湖【しんじこ】や青森県の十三湖【じゅうさんこ】、茨城県の利根川河口が名産地です。現在売られる「しじみ」には、ヤマトシジミが一番多いです。旬は一年中ですが、「土用しじみ」と呼ばれるのは、ヤマトシジミです。
セタシジミは、淡水の琵琶湖特産です。他の淡水域に移入されたこともあります。しかし、琵琶湖以外ではうまく育ちません。旬は冬でも夏でもなく、春です。俳句の季語で「しじみ」を春とするのは、セタシジミを指しているからです。
どのシジミも、栄養が豊富なのには変わりありません。昔から、日本人の食生活を助けてきました。ところが、今、特にマシジミとセタシジミが減っています。人間が水環境を汚染したためです。小さな貝が生きる場所くらい、保全してあげたいですね。
飼っているウーパールーパーに白い点が無数に、最近ついています。何かの病気でしょうか?どうすれば治るのか、教えていただけませんか?
「ウーパールーパー」というのは、日本のペット業者が勝手に付けた俗称で、学術上の種名は「メキシコサンショウウオ」という両生類の一種ですね。
メキシコサンショウウオは、鰓を持った幼生の姿のまま一生水中で過ごすことで有名で、このような状態のメキシコサンショウウオは「アホロートル」とも呼ばれます。
アホロートルは、水質の悪化にとても弱いです。皮膚に異常が現われたということは、水質に問題がある可能性が高いです。まずは水を換えてやりましょう。アホロートルを飼育する場合には、少なくとも週に一度は水を換えてやらなければなりません。目で見てきれいな水でも、水質が悪化していることがよくありますから、面倒くさがらずにひんぱんに水換えをしてやって下さい。
とにかく、アホロートルの飼育には、良い水質を保ってやることが大変重要です。
1733年に建立された琉球王の別邸で、主に王家の保養や外国(中国)から来た使者をもてなす迎賓館として利用されました。回廊や橋、庭園なども素晴らしく、興味深いのは、高台に建てられたにもかかわらず海が見えない角度になっています。
外国の使者に「琉球は大きな国」と思われるよう、考えられて建てられたといわれています。
この建物に使われている木材は、シロアリに強く沖縄の気候にも合っている「イヌマキ」が使用されています。
図鑑には、イヌマキが掲載されています。ぜひご利用ください。
ガンの仲間は、古来、日本に秋を告げる鳥でした。彼らは遠い北国から、列をなして渡ってきます。昔の子どもたちは、飛ぶガンの列を見て、「さお(形)になれ、かぎ(形)になれ」とはやしました。ガンが登場する和歌や俳句は、枚挙にいとまがありません。
けれども、農民からは、害鳥として憎まれることもありました。ガンの仲間は草食性で、稲穂を好んで食べます。苦労して収穫を得た人々にすれば、憎みたくなるでしょう。
今では、あまりガンの害は言われませんね。乱獲と環境破壊のせいで、ガンの数が激減したからです。今、日本でガンの仲間のマガンやヒシクイが見られるのは、宮城県の伊豆沼などのごく一部です。
しかし、農家の人にとっては、ガンは害鳥というイメージが強いようです。長い間、収穫を横取りされてきましたから、無理もありません。ガンが集中する伊豆沼の付近などでは、いろいろな問題が起こっていると聞きます。
そんな対立の中に、新しい動きが出てきました。ガンを敵視するのではなく、味方につけようというのです。質の良い収穫のために、わざとガンを呼び寄せる運動です。
普通の田は、冬に水をなくしますね。稲刈り後、もう一度田に水を入れて、水田にする方法があります。こういう田を、冬期湛水【とうきたんすい】水田、または「ふゆみずたんぼ」といいます。
冬期湛水水田は、ガンのすみかにぴったりです。ガンは用心深いため、寝る時には、見通しの良い広い水場が必要です。また、ねぐらの近くには、落穂などがたくさんある餌場も必要です。冬期湛水水田は、どちらの条件もばっちり備えています。
冬期湛水水田には、たくさんのガンが糞をします。その糞は、とても良い肥料になります。加えて、ガンが雑草を食べてくれるので、除草剤を使わなくても済むようになります。つまり、ガンのおかげで、安全で美味しいお米が取れる田ができます。
食べ物が豊富で、しかも安全なすみかができて、ガンは喜んでいるでしょう。美味しいお米は、ガンの恩返しかも知れません。
寒い気候が続きますね。電線に止まるスズメやハトでさえ寒そうです。
こんな季節、昆虫たちはどうしているのでしょう? 冬にはほとんど昆虫を見ませんよね。みんな死んでしまって、卵だけを残しているのでしょうか?
卵や蛹【さなぎ】で冬を越す昆虫は多いです。卵や蛹は丈夫な外皮に覆われていて、暑さや寒さに強いからです。卵や蛹の間は、食べ物を捜す必要もありません。
けれども、幼虫や成虫で冬を越す昆虫も多いです。そういった昆虫たちは、土の中や落ち葉の下や樹皮の隙間に入り込んで、寒さを避けています。成虫で越冬するのは、体表が厚くて丈夫な甲虫(コウチュウ)が多いようですね。ひらひらと、いかにも弱そうに飛ぶチョウの仲間は、卵や蛹で越冬するものが多いです。
ところが、冬でも成虫のチョウを見ることがあります。真冬に小さな黄色いチョウと遭って、びっくりしたことはありませんか? それはきっと、シロチョウ科のキチョウです。また、翅【はね】の縁がぎざぎざした、赤茶色のチョウと遭いませんでしたか? それは、タテハチョウ科のアカタテハやキタテハやヒオドシチョウでしょう。縁がぎざぎざで、瑠璃【るり】色の帯が入った翅のチョウなら、たぶんルリタテハです。
冬、ツバキなどの常緑樹の葉裏を覗いてみて下さい。銀色の翅の小さなチョウが止まっているかも知れません。それは、シジミチョウ科のウラギンシジミです。
どういうわけか、わざわざ成虫で越冬するチョウがいるのですね。彼らは葉陰などに止まって、ひたすら寒さに耐え抜きます。暖かい日には、日光浴に出てくることがあります。そういうところを人に目撃されて、驚かれるわけです。
越冬したチョウたちは、春、待ってましたと飛びだします。そういうチョウの翅は、たいていぼろぼろになっています。厳冬を乗り越えたチョウの勲章ですね。ぼろぼろになりながらも、彼らは生きる戦いに勝ちました。
こういうチョウの姿を見ると、勇気づけられますね。小さなチョウでも、耐え抜いて勝つことができます。苦しい時があっても、がんばれば必ず春が来る、という見本ですね。
冬になると、各地から「ハクチョウが飛来した」という便りが聞かれます。この冬は、いつもならば来ない地域にまでハクチョウが来ていますね。東京都や静岡県にコハクチョウが来たというニュースを聞きました。格別に寒いからでしょうか。
ハクチョウは、どれも白くて大きくて、同じように見えますね。けれども、じつはいくつかの種があります。日本に来るのは、主にオオハクチョウとコハクチョウです。
名のとおり、オオハクチョウのほうがコハクチョウより少し大きいです。日本に来る渡り鳥の中では最大で、体重10kgを越えるものもいます。こんな重さで、空を飛ぶのは大変です。長く助走してからでないと、オオハクチョウは飛び立てません。重い体を翼に乗せて、ユーラシア大陸の北部から日本へと、彼らはやって来ます。
小さいとはいえ、コハクチョウも大型の鳥です。オオハクチョウとは、嘴の模様でも区別できます。嘴の黄色い部分が多いのがオオハクチョウ、黒い部分が多いのがコハクチョウです。コハクチョウは北極圏から日本に飛来します。
オオハクチョウもコハクチョウも、シベリアなどの極寒の地から渡ってきます。彼らにしてみれば、たとえ北海道であっても「暖かい」地域に来ているのでしょう。
北海道では、世界で唯一かも知れないオオハクチョウの風景が見られます。なんと、温泉に暖まりに来るオオハクチョウたちです。
その風景は、屈斜路湖【くっしゃろこ】のコタン温泉で見られます。冬の屈斜路湖は、ほぼ全面凍結します。しかし、温泉の湧いている一部だけは凍結しません。そこにオオハクチョウが集まります。コタン温泉には、湖畔の一部を仕切っただけの露天風呂があり、すぐそばのオオハクチョウを眺めながら温泉に入れるそうです。
ハクチョウも、冷たい水より温水のほうがいいのでしょうか? おそらく、それ以上に重要な理由から、温泉の周囲に集まると思われます。凍結した湖上は、キツネや野犬などが歩けます。そういった敵に襲われないようにという工夫でしょう。優雅に見えるハクチョウたちも、生きるためには苦労が絶えないのですね。
日本が消費するまぐろは、世界のどこで1番獲られているのですか?まぐろがどのように釣られるのかも教えてください。
一口にマグロと言っても何種もあり、種によってどこにすんでいるかが違います。そのうえマグロの仲間はみな泳ぐ力が強くてどんどん移動するので、どのあたりで一番よく獲れるのかを決めるのは大変難しいです。
マグロの主な獲り方は、はえなわ・巻き網・定置網などによるものです。はえなわは、長いなわにえさと釣り針をいっぱい付けて海の中に流しておき、それに魚がかかるのを待つ方法です。魚がかかったら、なわを巻き上げて魚をとらえます。巻き網は、魚の群れの回りを網で囲んでしまって、網を巻き上げて魚をとる方法です。定置網は、魚の通り道に網を仕掛けておいて、魚が入ったら網を巻き上げる方法です。マグロの仲間はどれも非常に大きく、釣り上げるのは大変です。そのため、釣りで獲られるマグロの数はあまり多くありません。
ハダカカメガイという動物を御存知でしょうか? 大概の方は「知らない」と答えるでしょう。では、クリオネという動物を御存知ですか? こちらなら、「知っている」という方が多いでしょうね。一時期、CMに登場して有名になりました。
じつは、クリオネの正式名称がハダカカメガイなのです。漢字で書くと「裸亀貝」です。この名のとおり、彼らは巻貝の仲間です。サザエやカタツムリの遠い親類といえます。
ハダカカメガイは、一生海中を漂って過ごす、特殊な巻貝類です。海に浮くためには、貝殻が邪魔ですね。ですから、彼らは殻を退化させました。そして、普通の巻貝が這うのに使う足は、泳ぐのに使われるようになりました。体の両側でぱたぱたさせているのが、彼らの足です。翼に似た形のため、「翼足【よくそく】」といいます。
こんなふうに特殊化したので、彼らは巻貝には見えません。ぱたぱた泳ぐ姿がかわいく見えて、「流氷の天使」や「流氷の妖精」などと呼ばれたのでしょう。
あだ名のとおり、彼らはオホーツク海の流氷下によく現われます。けれども、天使や妖精というのは、人間が勝手に抱いたイメージですね。実際のハダカカメガイは、他の巻貝を襲って食べる肉食動物です。
ハダカカメガイは、ミジンウキマイマイという巻貝を捕食します。ミジンウキマイマイも、一生海中を漂って暮らす貝類です。ただし、彼らには貝殻があります。殻を持ったまま泳ぐのは大変そうですが、彼らも翼足で泳いでいます。
ミジンウキマイマイに近づくと、ハダカカメガイは、頭部からにゅっと触手のようなものを出します。それでミジンウキマイマイを捕まえ、殻の中の体を食べてしまいます。
この食事風景を、残酷だとかグロテスクだとか言うのは、人間の身勝手でしょう。生き物は、みな他の命を食べて生きています。人間も、肉を食べますよね。
私たちは、普通、専門職の人に他の命を殺してもらって、解体してもらった状態しか見ていないのですね。ハダカカメガイと同じく、ヒトも他の命をもらって生きていることを、忘れてはいけないでしょう。
図鑑には、ハダカカメガイが掲載されています。どうぞご利用ください。
翅を開くと13cmほどの大きさで、ヒラヒラと漂うように飛んでいました。優雅なチョウです。羽化してから半年位生きるそうですよ。長寿ですね。赤い花がこのチョウもお好きなようです。
先日投稿したツマベニチョウも好きでしたね。
和名:オオゴマダラ
学名:Idea leuconoe
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
スイセンは、真冬に咲き匂う花として、日本人に愛されていますね。各地にスイセンの名所があります。有名なのは、福井県の越前海岸・静岡県の爪木崎【つめきざき】・兵庫県の淡路島などです。こういった名所には、毎年何万人もの観光客が訪れます。
これほど愛されているのに、スイセンは、日本土着の植物ではありません。万葉集や、平安時代の文学には登場しません。鎌倉時代から室町時代くらいに、中国から渡来したようです。スイセンの本当の故郷は、中国のはるか西にある地中海沿岸です。
はるばるシルクロードを通って、この可憐な花はやってきました。地中海沿岸には、フサザキスイセンというスイセンの一種が分布します。この種は、日本に自生するスイセン(ニホンスイセン)と同じ種です。ニホンスイセンは、本来のフサザキスイセンと少しだけ違うので、フサザキスイセンの中の変種とされています。
スイセンといえば、ギリシャ神話を思い出す方がいるでしょう。美少年ナルキッソスの物語ですね。ナルキッソスは、どうあっても報われない恋に落ちます。水面に映った自分の姿に恋するのです。彼は自分の姿に見とれて、やつれ果てました。ある日、彼は姿を消します。彼がいた水辺には、一本のスイセンが咲いていたといいます。
スイセンの仲間には、たくさんの種があります。ナルキッソスが変じたのが、どんなスイセンだったのかはわかりません。一説では、クチベニスイセンといわれます。このスイセンの花は、フサザキスイセンとちょっと違い、口紅のような赤い縁取りがあります。
しかし、私は、ナルキッソスのスイセンはフサザキスイセンでは?と考えています。なぜなら、フサザキスイセンには種子ができないからです。難しい説明は省きますが、体の仕組み上、そうなっています。あれほど美しく咲く花に、実りがありません。古代ギリシャの人々は、その不毛さをナルキッソスの物語に表わしたのではないでしょうか。
フサザキスイセンは、球根で殖えます。それなら花を咲かせる必要はありませんよね。でも毎年花は開いて、私たちを楽しませてくれます。もしかすると、彼らは、人間に守ってもらうために、花という「魅力兵器」を使っているのかも知れません。
図鑑には、スイセンが掲載されています。どうぞご利用ください。
「くまんばち」の毒は、どういう毒ですか?どのような事をすると刺されるのでしょうか?教えてください。
「くまんばち」というのは通称で、正式には「クマバチ」と呼ばれるハチのことです。クマバチは大型で羽音も大きいため、恐ろしげに見えますが、日本にすんでいるハチの中ではとてもおとなしい方で、人を刺したという報告はほとんどありません。ただ、大きいだけに刺されるとかなり痛いそうです。
通常は、クマバチに刺されても腫れて痛いだけで、命に別状はありません。しかし、時々ハチの毒に対してアレルギーを持つ人がいて、そういう人がハチに刺されると、どんな種のハチでも命にかかわります。一度でもハチに刺されたことがある人は『ハチ毒アレルギー』になっている可能性があるので、刺されないように気をつけましょう。また、万が一ハチに刺された場合は、すぐに病院へ行きましょう。
1月1日コラム(羽根突き【はねつき】とトンボの関係)で、羽根突きについて書きましたね。羽根突きの羽根は、トンボの形を模しています。この羽根は、羽子【はご】、衝羽根【つくばね】などとも呼ばれます。
面白いことに、トンボ以外の生き物で、羽根にそっくりなものがいます。その名もツクバネという植物です。名の由来は、むろん「衝羽根」です。
ツクバネは低木です。全体の形は羽根に似ていません。森の中では、全く目立たない木です。どこが羽根と似ているかといえば、果実です。果実には、四枚の細長い葉のようなもの(蕚片【がくへん】といいます)が付いています。まさに、羽根突きの羽根としか思えない形です。
羽根突きの起源にツクバネが関係ある、という説があります。羽根突きが発明された当初は、ツクバネの果実を手で打ち合っていたというのです。その説が本当かどうかはわかりません。けれども、思わず信じたくなるほど、果実は羽根そっくりです。
ツクバネの果実は、なぜこんな形をしているのでしょう? それは、子孫を増やすための工夫です。
羽根突きをやったことがおありでしょうか? あるなら、羽根が落ちるのを見たことがありますよね。四枚の羽毛を、くるくるとプロペラのように回転させながら落ちてきます。普通の球のように、すとんとは落ちません。つまり、滞空時間が長いのです。
ツクバネの果実は、動きも羽根にそっくりです。似た形のものは、似た動きをするのですね。枝から離れた果実は、くるくると回転しながら落ちてゆきます。普通の果実よりも、滞空時間が長いです。
空中にいる時間が長ければ、遠くへ飛ぶ可能性が高いですね。風が強い日なら、かなりの距離を飛べそうです。果実のプロペラのおかげで、ツクバネは、遠くまで子孫を広めることができます。
ヒトが発明するよりはるかに昔から、ツクバネはプロペラを使ってきました。ヒトは威張れません。自然から学べることは、きっと限りなくあるでしょう。
図鑑には、ツクバネが掲載されています。どうぞご利用ください。
ツルの仲間は、どの種も姿が美しいですね。そのためか、多くの国で、ツルは縁起の良い鳥とされています。日本でもそうですね。お正月や結婚式の飾りに使われます。
TVなどで「ツルの舞」といわれる行動を御覧になった方もいるでしょう。釧路湿原のタンチョウの様子などが、よく放映されます。実際に見た方によれば、雪中でツルが舞う様子は、この世のものとは思えないほど美しいそうです。
タンチョウに限らず、すべてのツルは「ツルの舞」をします。タンチョウ以外に、日本で見られるナベヅルやマナヅルも舞います。舞い方は種によって違います。
なぜ舞うのでしょう? じつは、理由はよくわかっていません。
若いツルも年寄りのツルも、雄も雌も舞います。集団でいる時も一羽の時も、繁殖期もそうでない時も、舞は見られます。こうしたことから、ツルが舞う理由は一つではなく、いくつもあると考えられています。
理由の一つに、異性に対するディスプレイがあるとされています。ツルの舞は、繁殖期前に最も盛んになるからです。まだ配偶者が決まらない若鳥が、適齢期の異性に求婚しているわけです。
舞は、すでに夫婦となったツルの間でもよく見られます。これは、夫婦の絆を強める働きがあると考えられています。
鳥の中でも、ツルはとても夫婦仲が良いです。一度配偶者を決めたら、同じ相手と一生添い遂げます。ツルは寿命が長いので(さすがに千年は生きませんが)、何十年も同じ相手と添うことになります。
ツルの夫婦は、しょっちゅう一緒に舞ったり鳴き交わしたりして、熱心にコミュニケーションします。夫婦円満の秘訣は、そういうところでしょう。
人間の結婚式に、ツルの模様や飾りを使うのは、あながち間違いではありませんね。ツルにあやかりたいのなら、ツルの行動も見習ったほうがいいでしょう。コミュニケーション不足ゆえの夫婦不和、なんて、ツルに笑われてしまいそうです。
「鶴は千年、亀は万年」といわれるように、カメは長生きで知られていますね。一万年は大げさにしても、カメがとても長生きなのは本当です。
一般的に、動物は、大型のものほど長生きです。カメの中でも、体の大きいウミガメやゾウガメが、特に長生きです。ウミガメやゾウガメは、どの種でも、甲羅の長さが五十センチ以上になります。大型の種では一メートルを越えます。
確認されている限りでは、今、最も長生きしているカメは、オーストラリアの動物園で飼われています。ハリエットという名のガラパゴスゾウガメの雌です。年齢は、二〇〇五年十一月十五日で、百七十五歳になった!そうです。
ハリエットの生まれ故郷は、南米の沖合にあるガラパゴス諸島です。一八三五年、彼女はそこから動物園に送られました。送ったのは、進化論の提唱者チャールズ・ダーウィンです。鑑定の結果、ハリエットは、一八三〇年の十一月生まれと判明したそうです。
小型のカメでも、条件が良ければ何十年も生きるようです。日本の水辺に生息するクサガメで、九十年ほど生きた例があります。
そのカメは、日本の博物学者、南方熊楠【みなかたくまぐす】が飼っていたものでした。大正元年(一九一二年)に南方氏に拾われ、「お花」と名付けられます。お花は主人が亡くなった後も生き続け、二〇〇一年に老衰で死にます。拾われた時にはすでに成体だったので、百歳近くまで生きたのではといわれています。
クサガメの寿命は、通常は二十五年ほどらしいです。こんなに長生きしたのは、きっと大事に飼われたからでしょう。
いくら丈夫なカメでも、環境が悪ければ長生きはできません。硬い甲羅を持っていても、ヒトや病気には勝てません。現に、ハリエットの仲間のガラパゴスゾウガメは、ヒトに乱獲されたために絶滅寸前です。お花の仲間のクサガメも、棲める環境が減っています。
のんびりしたカメたちが、のんびりと生き続けられる環境を残したいですね。そのほうが、人間のためにもなると思います。
図鑑には、クサガメが掲載されています。どうぞご利用ください。
羽根突きというお正月の遊びがありますね。長方形の木の板で、鳥の羽毛を付けた球(羽根といいます)を打ち合うものです。最近は、とんと見かけなくなりました。羽根を突くための羽子板【はごいた】だけが、装飾用に売られて有名ですね。
昔の日本人にとって、羽根突きは大切な遊びでした。ただの女の子の遊びではなく、宮中で貴族たちが行なった記録もあります。羽根突きには、疫病【えきびょう】避けの意味があるからです。それは、トンボと関係があります。
羽根突きの羽根には、四枚の羽毛が付いていますね。この形は、トンボを模したものです。羽根が打たれて行き交う様子が、トンボの飛ぶ姿に見立てられました。
すべてのトンボは肉食性です。飛びながら、他の昆虫を襲って食べます。同じく空を飛ぶカやハエは、トンボにとってちょうどいい餌です。カやハエは病気のもとの細菌などを運びますね。それらを食べてくれるトンボは、疫病避けになるわけです。
細菌など知らなかったのに、昔の人の洞察力はあなどれませんね。長年の観察から、「カに刺されると病気になる」ことや、「ハエが多い不潔な環境では病気になる」ことを知ったのでしょう。
医療が発達していない時代、疫病は恐ろしいものでした。病気にかかったら、治すすべはほとんどありません。昔は、疫病で死ぬ人が大勢いました。疫病を防いでくれるトンボは、とてもありがたいものだったでしょう。昔の人は、トンボを模した羽根を突いて、カやハエを脅し、追い払おうとしました。
現代では、トンボは豊かな環境の指標になっています。きれいな水のある場所でなければ、トンボは暮らせません。幼虫時代を水中で過ごすためです。また、他の昆虫がたくさんいるところでないと、生きてゆけません。幼虫も成虫も肉食性で、他の昆虫を食べるからです。残念なことに、そういう環境はどんどん減っています。
トンボは、長い間、疫病から私たちを守ってくれました。恩返しのために、もう少しトンボの棲みやすい環境を用意してあげてもいいでしょう。
図鑑には、アキアカネ、ギンヤンマ、モノサシトンボなどが掲載されています。ぜひご利用ください。