立春の前日を、日本では節分としますね。節分とは、季節の分かれ目という意味です。
昔の日本人は、季節の分かれ目には魔物が現われると信じていました。そこで、節分には追儺【ついな】という魔除けの儀式が行なわれます。今、節分に「鬼は外、福は内」と豆まきをするのは、その名残です。
豆まきに使われるマメは、ダイズですね。昔の人は、ダイズに魔物を追い払う力があると考えました。おそらく、ダイズがとても栄養のある食べ物だからでしょう。ダイズには、良質の蛋白【たんぱく】質がたっぷり含まれています。植物には珍しいことです。蛋白質は、人体に欠かせない栄養です。
普通、良質の蛋白質を得るには、野山で鳥獣を狩ったり、海や川で漁をしたりしなければなりません。けれども、ダイズは畑で作ることができます。狩りや漁に比べれば、ずっと安定して、大量に蛋白質を得られます。
栄養が満ち足りれば、ヒトは健康になりますね。病気に強くなります。医療の発達していない時代には、病気は魔物のしわざと信じられました。栄養豊富なダイズが魔除けとされたのは、当然かもしれません。
ダイズは、中国で作り出された栽培種です。原種はツルマメという植物で、日本にも自生しています。ダイズの栽培が、いつ頃、中国から日本に伝わったのかはわかっていません。縄文時代には、まだなかったようです。
奈良時代には、確実に日本に伝わっていました。古事記にダイズが登場します。大宜都比売【おおげつひめ】という食物の女神の体から、ダイズが現われたといいます。同時にイネやムギも現われたとされていますから、それらと同じくらい、ダイズが大切だったことがわかります。
女神は、自らの体を犠牲にしてダイズを生みました。この神話は、きっと、命をつなげる大切さを示しているのでしょう。古代の人のメッセージを、私たちもしっかり受け止めたいですね。
図鑑には、ダイズが掲載されています。ぜひご利用ください。
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