七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しき

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 山吹(ヤマブキ)といえば、題名の和歌がすぐ引き合いに出されます。和歌の中で有名なものの一つでしょう。太田道灌【おおたどうかん】の故事で知られますね。
 この歌は、大田道灌が作ったと思っている方が多いようです。実際は違います。作者は兼明親王【かねあきらしんのう】という人です。道灌は、当時から有名だったこの歌を知りませんでした。それを恥じて、歌の修業に励んだ、ということです。
 花が美しいために、ヤマブキは、庭によく植えられますね。歌のとおり、七重や八重の花が咲きます。また、歌のとおり、花が咲くのに果実は実りません。
 なぜ、ヤマブキには実がならないのでしょうか? それは、七重や八重の花が咲くことと関係があります。ヤマブキに限らず、八重咲きの花には、果実が実りません。
 どんな八重咲きの花も、原形は一重【ひとえ】です。一重の花には、花びらと雄しべと雌しべがあります。「雄しべの花粉が雌しべに付いて、果実ができる」と、小学校などで教わった覚えがおありでしょう。
 八重の花は、突然変異により、雄しべと雌しべが花びらに変わったものです。そのために、花びらの数が多いのです。花粉を作る雄しべも、果実になる雌しべもありませんから、果実ができません。
 じつは、野生のヤマブキは、一重咲きです。一重のヤマブキには果実が実ります。普通の植物と同じように、種子ができて繁殖します。庭のヤマブキの中にも、時おり一重のものがありますね。
 いつの時代か、人間が植えたヤマブキの中に、八重のものが現われたのでしょう。野生では、そういうものは子孫を残せません。けれども、人間の手にかかれば、株分けなどで子孫を残せます。八重の美しさが好まれて、殖やされたに違いありません。
 かくて、「ヤマブキといえば八重咲き」が定着しました。八重咲きの花は豪華に見えるので、他にもそういう植物があります。バラや八重桜も、もとは一重でした。
 私は、一重のヤマブキも好きですね。素朴な美しさもいいものだと思います。


図鑑にはヤマブキが掲載されています。ぜひご利用ください。

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このブログ記事について

このページは、松沢千鶴が2006年3月31日 00:15に書いたブログ記事です。

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