ゴールデンウィーク最後の祝日が、五月五日ですね。古来の端午【たんご】の節句です。端午の節句は、別名で、「あやめの節句」とも呼ばれました。
「あやめ」といえば、普通は、美しい花が咲くアヤメを思い浮かべるでしょう。なぜ、端午の節句にアヤメなのでしょうか?
じつは、端午の節句を「あやめの節句」としたのは、誤解から始まっています。
昔、「あやめ」という言葉は、複数の植物を指しました。今のアヤメだけを「あやめ」と呼んだのではありません。現在、ショウブと呼ばれる植物も、「あやめ」と呼ばれました。端午の節句に使われたのは、本来、アヤメではなく、ショウブのほうでした。
アヤメとショウブとは、遠縁です。アヤメはアヤメ科に、ショウブはサトイモ科(またはショウブ科)に属します。けれども、両種は、葉が似ているため、混同されました。アヤメもショウブも、漢字で書くと「菖蒲」です。ややこしいですね。
さらに、ややこしいことがあります。アヤメには、姿が似た近縁種が、たくさんあります。それらの近縁種まで混同されて、「あやめ」や「しょうぶ」と呼ばれることがあります。
代表的なものが、ハナショウブですね。葉がショウブに似て、ショウブよりも美しい花が咲きます。だから、「花菖蒲」です。ハナショウブの花は、アヤメにそっくりです。「花菖蒲」と書いて「はなあやめ」とも読めるのが、混乱に拍車をかけています。
アヤメと、アヤメの近縁種とは、区別が難しいです。どの種も似ているからです。他の種からアヤメを分ける特徴は、おおむね、以下のとおりです。
1)花期が比較的早い。日本の内地で、平地であれば、四月下旬~五月中旬。
2)湿地には生えない。乾いた地面に生える。
3)花の色に変異が少ない。ほとんどが青か紫。まれに白。花弁の付け根に、黄色っぽい網目模様がある。
生物学では、種を区別するのは、大事なことです。でも、鑑賞するなら、一つの種にこだわる必要はありませんね。それぞれの種の美しさを、お楽しみ下さい。
過去の記事で、端午の節句に関連する生き物を取り上げています。また、アヤメの画像もあります。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
鯉(コイ)は本当に滝を登るか?(2006/4/24)
端午の節句に欠かせない菖蒲(ショウブ)(2006/4/21)
どちらがアヤメか?カキツバタか?(2006/1/19)
などです。このほかに植物に関する投稿が盛りだくさんです。各カテゴリーよりご覧ください。
図鑑には、アヤメ、ショウブやカキツバタに似たキショウブなどが、掲載されています。ぜひご利用下さい。
2007年4月アーカイブ
明日からゴールデンウィークでお休みされる方もたくさんいらっしゃるのではないではないでしょうか。皆さんは、どこかへ出かけますか?
私のお勧めレジャーは、潮干狩りです。今年のゴールデンウィークは、五月二日前後が、潮干狩りに絶好です。二〇〇七年は、五月二日が満月で、大潮だからです。
海辺へ行くと、貝以外の生き物にも、よく会いますね。モミジガイは、潮干狩りで会うかも知れない生き物の一種です。
貝と付くのに、モミジガイ(紅葉貝)は、貝の仲間ではありません。ヒトデの一種です。姿を見れば、誰もが「ヒトデだ」と納得するでしょう。モミジガイは、五本の腕を持つ、最もヒトデらしい形のヒトデだからです。
では、なぜ、「貝」の名が付いたのでしょう? この理由は、わかっていません。
モミジガイは、砂地の海底に棲むヒトデです。夜行性で、昼間は、砂に潜っていることが多いです。他のヒトデと同じく、肉食性です。生きたものも死んだものも食べます。
近縁な種に、トゲモミジガイなどがあります。モミジガイの仲間は、みな砂地の海底に棲んで、似た生活をしています。基本的に、ヒトに害はありません。
ただ、貝などを食べるので、潮干狩り場では嫌われます。釣り餌を食べようとして、釣り針にかかることもあります。キス釣りやカレイ釣りで、よく釣れてしまいます(笑)
ヒトデの仲間としては、モミジガイは変わり者です。その主な理由は、以下の二つです。
一つは、食事方法が違うことです。普通のヒトデは、「口から胃を吐き出して、体外で食べ物を消化する」(!)方法を取ります。けれども、モミジガイの仲間は、普通に口から食べ物を入れます。「普通」のほうが「変」なんて、面白いですね。
もう一つは、管足【かんそく】の形が違うことです。管足とは、ヒトデ類が、動くのに使う器官です。生きたヒトデを観察してみましょう。体の下側に、小さな管のようなものが、たくさん付いています。これが管足です。
普通のヒトデは、管足の先端に、吸盤があります。でも、モミジガイにはありません。砂の中では、必要ないからです。砂粒がいちいち吸いついてきたら、邪魔でしょう。
モミジガイは、砂地という環境に、うまく合った生き物ですね。
過去の記事で、他のヒトデや、潮干狩りで会う生き物について取り上げています。ヒトデの奇妙な食事方法についても、説明しています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
潮干狩りの主役、アサリ(2006/04/27)
潮干狩りの悪役、ツメタガイ(2006/04/17)
ヒトデの仲間でモミジガイという貝(2006/03/07)
などです。
このほか無脊椎動物に関するコラム、Q&Aなど盛りだくさんです。過去の記事はカテゴリーよりどうぞご覧ください。
図鑑には、モミジガイ、トゲモミジガイが掲載されています。ぜひご利用ください。
和名:フジ ナガサキイッサイ【長崎一才】
学名:Wisteria floribunda cv. Nagasakiissai
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
東京 文京区【2007.04.20】
図鑑には、フジが掲載されています。ぜひご利用下さい。
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和名:アマミセイシカ 【奄美聖紫花】
学名:Rhododendron amamiense Ohwi
奄美大島固有のツツジ
和名:アワノモチツツジ 【阿波の餅躑躅】
学名:Rhododendron macrosepalum Maxim. var. decandrum (Wils.)
和名:シロバナオオヤマツツジ 【白花大山躑躅】
学名:Rhododendron transiens f. Shirobanaoyamatsutsuji
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
東京 文京区【2007.04.20】
図鑑には、ミツバツツジ、ヤマツツジなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。
春から夏にかけては、海辺が気持ちいい季節ですね。今回も、潮干狩りなど、海のレジャーで会えそうな生き物を紹介しましょう。
アメフラシは、海に棲む貝類の一種です。浅い海に多いため、磯遊びなどで会う機会があります。彼らは、一見、貝に見えません。殻がないからです。
アメフラシは、殻が退化した巻貝です。ナメクジのようなものですね。でも、ナメクジとは遠縁です。姿も違います。普通のナメクジより、ずっと大きいです。
アメフラシの色は、おおむね、白黒のまだら模様です。海藻が生えた場所にいると、とても見分けにくいです。この体色は、敵から逃れるのに役立つのかも知れません。
殻がないため、彼らの体は非常に軟らかいです。ぐにゃぐにゃして、よく伸び縮みします。これが気持ち悪いという方もいますね。貝というより、ナマコのように見えます。
正確には、多くの種のアメフラシに、殻があります。小さな殻が、体内に埋もれています。外から見えないだけです。一部に、本当に殻がない種もいます。
アメフラシの仲間には、たくさんの種がいます。日本だけでも、何十種も分布します。一番、普通に会うのは、アメフラシ科のアメフラシという種でしょう。
どの種のアメフラシも、海藻を食べる、おとなしい種です。殻に頼れないのでは、身を守るのに、どうするのでしょう? じつは、彼らには毒があります。海藻に含まれる毒を、体に取り込んでいます。有毒でも、ヒトには無害ですから、安心して下さい。
一部の種のアメフラシは、いじめられると、体から汁を出します。紫の汁が多いですが、赤や白の場合もあります。海の生き物には、この汁は、まずく感じられるようです。おかげで、アメフラシは、食べられずに済むのでしょう。
アメフラシとは、奇妙な名ですね。この名の由来には、いくつかの説があります。なかで、「いじめると雨が降るから『雨降らし』」という説が、面白いなと思いますね。
もちろん、アメフラシをいじめても、実際に雨が降ることはありません。なぜ、こんな俗説が生まれたのでしょうね。アメフラシは、龍神のお使いと思われたのでしょうか。
過去の記事で、アメフラシと同じ巻貝の仲間を取り上げています。また、アメフラシと同じく潮干狩りなどで見られる生き物も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ナメクジは塩をかけると溶ける?(2006/6/23)
鉄の鱗【うろこ】を持つ貝、スケーリーフット(2006/4/2)
などです。
このほか無脊椎動物に関するコラム、Q&Aなど盛りだくさんです。過去の記事はカテゴリーよりどうぞご覧ください。
図鑑には、
アメフラシが掲載されています。ぜひご利用ください。
東京・上野の国立科学博物館で、特別展『花』が開かれています。昨日御案内しましたね。(花のことがいろいろわかる、展覧会『『花 FLOWER ~太古の花から青いバラまで~』』 科学博物館で、もう一つ、とても面白い展覧会が開かれています。
それは、「相模湾の生物 きのう・きょう・あす」です。神奈川県沿いの海、相模湾の生物を紹介しています。私は観てきました。
深海生物ファンなら、「相模湾」という名に、聞き覚えがあるはずです。相模湾は、世界でも有数の、深海生物の宝庫ですね。
この展覧会は、深海生物ファンには必見です。相模湾の深海生物の動画が観られます。一般家庭では望むべくもない大画面で、です。有櫛動物【ゆうしつどうぶつ】のチョウクラゲの仲間が泳ぐ姿や、カニの一種のエゾイバラガニが夫婦(つがい)でいる様子が、写されています。
チョウクラゲの仲間は、普通の人ではめったに会えない生き物です。蝶(チョウ)という名のとおり、透明な体で、羽ばたくように泳ぎます。優雅なその動きを見ていると、神秘的な気分になります。
エゾイバラガニのつがいは、なんと、雄(オス)が雌(メス)を持ち運びます。他の雄に、雌を取られないためのようです。大きな雄が、小柄な雌を鋏【はさみ】でつかみ上げる様子は、滑稽【こっけい】で笑ってしまいます。
他にも、貴重な展示物がたくさんあります。私のお勧めは、クモヒトデの仲間、テヅルモヅルの標本です。樹木のように細かく枝分かれした腕が、よく保存されています。
もう一つのお勧めは、コトクラゲの標本です。コトクラゲは、日本でこれまでに三例しか報告がない、たいへん珍しい生物です。チョウクラゲと同じ有櫛動物の一種です。
この展覧会は、地味ですが、マニアにはたまりません(笑) 一見、冴えない標本が、世界的に貴重なものであることが多いです。あまり宣伝されていないためか、会場は空いています。ぜひ、会場で、「深海生物ひとり占め」気分を味わって下さい。
過去の記事でも、深海生物を取り上げています。また、有櫛動物【ゆうしつどうぶつ】のツノクラゲも取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ホタルイカはなぜ光る?(2007/4/12)
ラブカはなぜ「生きている化石」か?(2007/1/27)
クラゲと付いてもクラゲでない? ツノクラゲ(2006/7/29)
今回は、ちょっと変わった展覧会をお知らせしましょう。東京・上野の国立科学博物館で、開催中の展覧会です。
その展覧会は、『花 FLOWER ~太古の花から青いバラまで~』といいます。題名どおり、植物の花について、進化の様子・花の仕組み・文化的な扱いなど、多面的に扱っています。
私は、この展覧会を観に行ってきました。青いバラと青いカーネーションは、評判どおり美しかったです。残念ながら、私が行った時には、「ヒマラヤの青いケシ」は咲いていませんでした。このケシは、咲いている時と咲いていない時があります。どうしても観たい方は、花展公式ブログを確認してから、お出かけ下さい。
私が観た中で、気に入ったのは、
1)キソウテンガイ(奇想天外)
2)花の香り比べ
3)花の発色の仕組み
といったところでしょうか。
キソウテンガイとは、植物の種名です。本当に、こういう名前の植物があります。奇想天外な生態のため、このように名付けられました。どのように奇想天外なのかは、ぜひ、会場で御覧下さい。会場で、生きているキソウテンガイに会えます。
「花の香り比べ」と、「花の発色の仕組み」は、科学博物館らしい展示でした。単に美しい花を並べるだけなら、普通の花屋さんでもできますよね。そうではなく、種ごとの花の差を克明に比べたり、花の構造を解明したりできます。楽しく、わかりやすく学べるのが、科学博物館の良いところですね。
他に、珍しい花の化石や、熱帯植物のヒスイカズラなどにも会えます。世界最大の花ラフレシアの実物標本と、世界最小の花ミジンコウキクサの顕微鏡写真もあります。
地味な展示でも、花の化石は、必見でしょう。「こんなちっぽけなものから、現在の花が進化したんだ」と、感動します。小さくて見にくいため、会場では、拡大図を大画面に投影してくれています。
「科学で花を紹介する」展覧会です。覗いてみてはいかがでしょうか。
過去の記事で、青いカーネーションを取り上げています。また、バラの品種についても取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
青いカーネーションの秘密(2006/5/14)
すべてのバラ(薔薇)は雑種?(2006/5/2)
和名:花梨【カリン】
学名:Cydonia sinensis Thouin
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
東京 新宿【2007.04.10】
図鑑には、カリンの仲間、ボケが掲載されています。ぜひご利用下さい。
和名:フジ
学名:Wisteria floribunda (Willd.) DC.
オフィス近くの公園の藤棚が、満開でした。たくさん花がついてますね。
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
東京 赤坂【2007.04.19】
去年のサクラの様子や春の風景、コラムなどは、
2006年3月は、こちらをご覧ください。
2006年4月は、こちらをご覧ください。
図鑑には、フジが掲載されています。ぜひご利用下さい。
藤は、日本人に好まれる花ですね。つる性の植物なので、藤棚にされます。
つる性の植物は、どちら回りにつるが巻くか、種によって決まっています。フジは、右巻き、左巻き、どちらでしょうか? ここでは、上から見た場合に、時計回りの渦になるのを右巻き、反時計回りの渦になるのを左巻き、とします。
皆さんのお近くにあるフジは、どうですか? 「右巻きだよ」という方と、「左巻きだよ」という方と、両方いらっしゃるはずです。
じつは、普通に「フジ」と呼ばれる植物には、二種あるのです。ノダフジ(野田藤)とヤマフジ(山藤)です。ノダフジのつるは右巻き、ヤマフジのつるは左巻きです。
ノダフジもヤマフジも、日本に昔からある種です。姿はそっくりで、区別しがたいです。花期も同じです。両種とも、私たちが思い浮かべる「藤」そのものです。
普段の生活の中では、ノダフジとヤマフジとは、区別されていません。そんな必要がないからです。どちらも同じく美しいため、観賞用に栽培されます。
栽培される中には、変わった「藤」もありますね。花の色が白い白藤【しらふじ】、花びらが八重になる八重藤【やえふじ】、花の房が長く伸びる長藤【ながふじ】などです。これらの変わりだねは、ノダフジでしょうか、ヤマフジでしょうか?
答えは、「両方ある」です。ノダフジにもヤマフジにも、いろいろな栽培品種があります。
例えば、ノダフジには、昭和白藤(ショウワシロフジ)という、白い花の品種があります。八重黒龍(ヤエコクリュウ)という、八重の黒っぽい花が咲く品種もあります。野田長藤(ノダナガフジ)というのは、花の房が1mを越えることもある長藤です。
ヤマフジには、白カピタン(シロカピタン)という白藤の品種があります。八重山藤(ヤエヤマフジ)、または八重カピタン(ヤエカピタン)という八重の品種もあります。
日本の各地に、藤の花を、農作業の目安にする伝承が残っています。「フジの花を見てワタの種をまけ」・「フジの花が咲く頃ウグイ(魚の一種)が群れる」などの伝承があります。二種のフジが日本人に好まれるのは、実用的な意味もあったのでしょう。
植物に関するコラム、Q&A、画像など盛りだくさんです。過去の記事は各カテゴリーよりどうぞご覧ください。
図鑑には、フジ(ノダフジ)が掲載されています。ぜひご利用ください。
和名:普賢象【フゲンゾウ】
学名:Cerasus lannesiana 'Albo-rosea'
普賢象【フゲンゾウ】の歴史も古く、室町時代から栽培されていたそうです。サトザクラの栽培品種では、最も古い品種と考えられています。
本当にサクラは、歴史があり古く昔から愛されてきたのですね。
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
東京 新宿【2007.04.10】
去年のサクラの様子や春の風景(目黒川のサクラの画像もたくさんあります)、コラムなどは、
2006年3月は、こちらをご覧ください。
2006年4月は、こちらをご覧ください。
先日、深海にすむイカのニュースをこちらでご紹介しましたね。また深海にすむイカのニュースが今日のお昼に報道されました。
今度のイカは巨大イカではありません。小さな深海にすむイカです。このイカが見つかったのは、山口県です。これで4例目だそうです。ダイオウイカも、1月と2月にみつかっています。どうしてこんなに山口県近海でみつかるのでしょうね。不思議です。さて、こちらのイカは萩博物館に寄贈され、今年の夏に開催される企画展 『君と竜宮城へ-知られざる深海への旅-(平成19年7月7日(土)~9月2日(日)』で、展示されるそうです。今から楽しみですね。
深海のイカ『ダイオウイカ』や『ダイオウホウズキイカ』の過去のニュース・トピックは以下のページにあります。
世界最大のイカは、ダイオウイカではない?(2007/02/23)
深海のイカ、続々と生態を解明中(2007/02/23)
フタバアオイ(双葉葵)という植物を、御存知でしょうか? おそらく、ほとんどの方は御存知ないでしょう。けれども、日本人ならば、この植物の葉を、どこかで見たことがあるはずです。正確に言えば、フタバアオイの葉の模様です。
京都に、葵祭【あおいまつり】という有名なお祭がありますね。このお祭に使われる葵【あおい】が、フタバアオイです。この植物の葉が、お祭の行列の、牛車などを飾ります。
葵祭は、京都の上賀茂神社【かみがもじんじゃ】・下鴨神社【しもがもじんじゃ】合同のお祭です。賀茂祭【かもまつり】というのが、本来の名でした。それが、フタバアオイを使うところから、葵祭と呼ばれるようになりました。「賀茂祭の葵」ということで、フタバアオイは、別名カモアオイ(賀茂葵)とも呼ばれます。
フタバアオイは、もう一つ、重要な場面で活躍しています。徳川家の家紋「三つ葉葵【みつばあおい】」です。『水戸黄門』の印籠【いんろう】にある紋所ですね。これは、フタバアオイの葉を図案化したものです。
実際のフタバアオイは、三枚の葉が一緒に付くことはありません。「双葉」の名のとおり、二枚ずつ葉が付きます。「三つ葉葵」にされたのは、図像的に、格好いいからでしょう。
フタバアオイは、小さくて、目立たない植物です。花も決して派手ではありません。紋所にあるとおり、葉の形は、整ってきれいです。でも、似た葉を付ける植物は、他にもいくつもあります。なぜ、フタバアオイばかりがこんなに重視されるのかは、謎です。
昔、フタバアオイは、日本に広く自生していました。上賀茂神社の周囲にも、たくさんあったそうです。ところが、今では、珍しい植物になってしまいました。環境破壊が進んだためです。お祭に使う葵を集めるのも、一苦労だといいます。
日本の文化を象徴するものを、絶滅させてはいけませんね。多くの人々の協力により、フタバアオイ復活計画が始まりました。京都に、フタバアオイの群落を復活させる計画です。すでに、今年(二〇〇七年)、フタバアオイの栽培や移植が始まっています。
これは、素晴らしい計画ですね。自然と文化を守る計画は、成功して欲しいです。
図鑑には、フタバアオイが掲載されています。ぜひご利用下さい。
和名:鬱金【ウコン】
学名:Cerasus lannesiana 'Grandiflora'
先回ご照会した『御衣黄【ギョイコウ】』と同様に、江戸中期ころから栽培されていた記録があるそうです。薄いクリーム色の素敵なサクラですね。
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東京 新宿【2007.04.10】
去年のサクラの様子や春の風景(目黒川のサクラの画像もたくさんあります)、コラムなどは、
2006年3月は、こちらをご覧ください。
2006年4月は、こちらをご覧ください。
春は、たくさんの生き物が、繁殖期を迎えます。目立つのは鳥たちですね。鳥の雄の多くは、雌を呼ぶために、春にさえずります。
キジも、春に繁殖期を迎える鳥です。このために、春から夏にかけて、キジは禁猟です。繁殖期に獲られたら、生き物は、子孫を残せませんね。生き物を減らさない配慮です。
キジの雄も、鳴いて雌を呼びます。キジの鳴き声は、ケーンケンだといわれますね。実際には、ゲエーとかギエーなどと聞こえることもあります。個体差があるのでしょう。
春には、キジの姿を見ることも多くなります。人家の近くでも、藪や雑木林があるところには、キジがいます。山奥だけでなく、里の近くにも多い鳥です。ヒトが会うのは、ほとんど雄のキジですね。雌のキジには、めったに会いません。
雄のキジと、春によく会うのには、理由があります。繁殖期の雄は、広い範囲を動き回るからです。この時期、雄は、雌を求めるのに夢中なのでしょう。人家が近くにあっても、堂々と姿を現わします。
キジは、姿が美しいので有名ですね。派手な色なのは、雄です。繁殖期には、特に鮮やかな色になります。顔など、真っ赤に見えます。雌を惹きつけるためです。
雌は、地味な色をしています。藪などに紛れやすいようにです。目立ってはいけないのですね。雌は、子育てをするからです。お母さんが敵に見つかったら、子どもまで見つかってしまいます。キジのお父さんは、子育てに一切、関わりません。
お母さんばかり育児をして、お父さんキジはずるく見えますね。キジの場合は、これでいいのです。雄のキジは派手で、目立つからです。雄が敵に見つかりやすいおかげで、雌と子どもは敵から逃れられる、といえるでしょう。
日本のキジの繁殖は、順調に見えます。けれども、ある面では、危機に瀕しています。大陸から移入されたコウライキジと、日本のキジとの交雑が進んでいるからです。
近縁なもの同士でも、それまでいなかった生き物を導入するのは、問題が多いです。魚の放流と同様、やたらな放鳥も、慎む必要がありますね。
過去の記事でも、鳥の繁殖について取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
子育てに張り切るお父さん、タマシギ(2006/6/17)
鴛鴦(オシドリ)は本当におしどり夫婦か?(2006/3/6)
などです。
図鑑には、キジが掲載されています。ぜひご利用ください。
和名:ハナミズキ
学名:Cornus florida L.
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東京 新宿【2007.04.10】
去年のサクラの様子や春の風景、コラムなどは、
2006年3月は、こちらをご覧ください。
2006年4月は、こちらをご覧ください。
図鑑には、ハナミズキが掲載されています。ぜひご利用下さい。
和名:御衣黄【ギョイコウ】
学名:Cerasus lannesiana 'Gioiko'
1700年代、栽培されていた記録があるそうです。昔の人も、同じようにこのサクラを愛でていたのですね。
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東京 新宿【2007.04.10】
去年のサクラの様子や春の風景、コラムなどは、
2006年3月は、こちらをご覧ください。
2006年4月は、こちらをご覧ください。
和名:関山【カンザン】
学名:Cerasus lannesiana 'sekiyama'
八重桜の品種のうち、関東で一番良く見られるのがこの関山【カンザン】です。
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東京 新宿【2007.04.10】
去年のサクラの様子や春の風景(目黒川のサクラの画像もたくさんあります)、コラムなどは、
2006年3月は、こちらをご覧ください。
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和名:アメリカ
学名:Cerasus X yedoensis 'Akebono'
ソメイヨシノによく似ています。もう、散り始めていました。アメリカから移入されたとき、すでに『曙【アケボノ】』とつけられた品種が日本にあったため、このサクラは『アメリカ』とつけられたそうです。直球ですね(笑)。
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東京 新宿【2007.04.10】
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ホタルイカは、富山県の名産品ですね。富山湾の春の味覚として、知られます。
名のとおり、ホタルイカは、光ります。なぜ光るのでしょうか?
ヒントは、ホタルイカが深海に棲むことにあります。深海には、光る生き物が多いですね。他の生き物が光る理由を知れば、ホタルイカが光る理由もわかりそうです。
深海生物が光る、最も大きな理由は、「体の影を隠すため」といわれます。
深海は、暗いところです。けれども、深さ数百mまでは、かすかに日光が届きます。深みから見上げると、上が薄明るく見えます。海中に浮くものがあれば、その影が、下から見えるわけです。
これでは、弱い生き物は困りますね。下にいる捕食者に、位置がばれてしまいます。でも、発光すれば、自分の影を打ち消すことができます。巧みな方法ですね。
深海生物の中でも、ホタルイカの光は、強いほうです。影を消すだけなら、それほど強く光る必要はありません。他にも、光る理由があると考えられています。
一つは「敵を脅すため」、もう一つは「仲間とコミュニケーションを取るため」だろうとされます。「敵を脅すため」は、わかりやすいですね。暗い深海で、いきなり強い光を浴びせられたら、敵は驚くでしょう。その隙に、逃げることができます。
「仲間とコミュニケーションを取る」のは、イカ類の特徴です。普通のイカは、体色を変えることによって、仲間とコミュニケーションを取ります。深海では、体色を変えても、暗くて見えませんね。そこで、光でコミュニケーションするのでしょう。
春先のホタルイカは、昼に深海にいて、夜に浅海へ上がってきます。浅海へ来た時に、漁獲されます。サクラエビやシロエビ(シラエビ)と同じですね。多くの深海生物が、このような行動をします。なぜなのかは、まだ、よくわかっていません。
漁獲される時、ホタルイカは、強く光ります。ヒトの目には、とても美しく見えます。しかし、ホタルイカにしてみれば、きっと悲鳴を上げているのでしょう。ホタルイカに限らず、私たちは、他の命をもらって食べています。それを忘れたくありませんね。
過去の記事で、ホタルイカ以外のイカや、深海生物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
コウイカとヤリイカはどう違う?(2006/11/10)
四億年前からの生き残り? オウムガイ(2006/10/26)
脚があるのに歩かない? サクラエビ(2006/3/27)
などです。
この投稿のほかにも、深海生物に関するコラム、Q&A、ニュース・トピックなど盛りだくさんです。過去の記事は各カテゴリーよりどうぞご覧ください。
図鑑には、ホタルイカが掲載されています。ぜひご利用ください。
和名:一葉【イチヨウ】
学名:Cerasus lannesiana 'Ichiyo'
新宿御苑では、この『一葉(イチヨウ)』は、200本ほど植えられているそうです。本当に見事でした。
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
東京 新宿【2007.04.10】
去年のサクラの様子や春の風景(目黒川のサクラの画像もたくさんあります)、コラムなどは、
2006年3月は、こちらをご覧ください。
2006年4月は、こちらをご覧ください。
2007年01月22日(月)より01月26日(金)まで、日本の神戸国際会議場で、アメリカ、オーストラリアなどの国際機関が集結し、マグロについての諸問題について考える会合が開かれましたね。この会合のことは以前こちらのブログでもお伝えしました。
さて、 その後の最新情報をお伝えします。WWFの最新活動情報、ナショナルジオグラフィックの特集で、マグロのことが伝えられています。PC版ですが、URLをご紹介しておきます。
EUは地中海クロマグロの自主的な資源の保全を!(2007/04/04 WWFジャパン) ※PC版
http://www.wwf.or.jp/activity/marine/news/2007/20070404.htm
特集:地球の悲鳴 魚が消えた海『マグロの危機を検証』(ナショナルジオグラフィック 2007/04号 大特集トピック) ※PC版
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0704/feature01/
特集:地球の悲鳴 魚が消えた海『マグロをつくる-日本の漁業』(ナショナルジオグラフィック 2007/04号 大特集トピック) ※PC版
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0704/feature02/
過去の記事もあわせて御覧下さい。
マグロ(鮪)は温血魚?(2006/10/18)
日本が消費するまぐろは、(2006/01/10)
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春には、たくさんの花が咲きますね。花の蜜を求める虫たちは、大忙しです。
なかでも、花に来るハチは多いですね。しかし、ハチそっくりでも、ハチでない昆虫がいます。
春先に、毛むくじゃらで、丸っこい形をした、大きな「ハチ」を見たことがありませんか? 観察すると、花の前で、空中に止まったまま、飛んでいます。
それはきっと、ハチではありません。ビロードツリアブという、アブの一種です。
体が大きいため、ビロードツリアブは、恐ろしげに見えますね。けれども、この種は、ヒトには全く害がありません。花の蜜を食べる、おとなしいアブです。
空中に停止する姿は、まるで、空から糸で吊るされているようです。このため、「吊りアブ」と名付けられました。「吊り」状態で、細長い口を伸ばして、花の蜜を吸います。
このような食事をする生き物は、他にもいます。昆虫のガ(蛾)や、鳥のハチドリや、哺乳類のコウモリなどの中にいます。ガの場合は、ビロードツリアブと同じく、細長い口を持ちます。ハチドリやコウモリの場合は、長い舌を持ちます。舌を伸ばして、蜜をなめとるわけです。類縁がないのに、食事方法が似ているのは、便利だからでしょうね。足場が不安定でも、花の蜜を食べることができます。
ビロードツリアブの幼虫は、成虫とは、全然違う生活をします。多くの昆虫と同じですね。ツリアブ科の昆虫は、幼虫時代に、他の昆虫に寄生します。ビロードツリアブの場合、寄生する相手は、ヒメハナバチというハチの仲間です。
ヒメハナバチ科のハチは、土中に巣を作ります。幼虫は、親が与えた花粉や蜜を食べます。この幼虫に、ビロードツリアブの幼虫が寄生します。どのような寄生生活をしているのか、詳しいことはわかっていません。
ビロードツリアブと、ヒメハナバチの仲間とが出現する時期は、おおむね一致しています。幼虫が食べ物に事欠かないように、そうしているのでしょう。どうしたら、こんな仕組みができるのか、感心しますね。
過去の記事でも、アブの仲間を取り上げています。また、コウモリを取り上げた記事もあります。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
人間の役に立つコウモリ(2006/8/18)
ミツバチのそっくりさん、ハナアブ(2006/3/10)
図鑑には、ビロードツリアブが、掲載されています。ぜひご利用下さい。
和名:ソメイヨシノ
学名:Cerasus X yedoensis (Matsum.) A.Vassil.
【目黒川】
和名:シダレザクラ
学名:Cerasus spachiana 'Itosakura' Siebold
【目黒川周辺】
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東京 目黒【2007.03.31】
去年のサクラの様子や春の風景(目黒川のサクラの画像もたくさんあります)、コラムなどは、
2006年3月は、こちらをご覧ください。
2006年4月は、こちらをご覧ください。
四月八日は、お釈迦さまの誕生日とされていますね。お寺では、灌仏会【かんぶつえ】というお祭りが行なわれます。花祭りという名のほうが、有名でしょう。
灌仏会に欠かせないのが、甘茶【あまちゃ】です。名のとおり、甘いお茶ですね。お釈迦さまの像にかけたり、お祭りの参加者に配布されたりします。
この甘茶は、普通のお茶を加工したものでしょうか? いえ、違います。
甘茶は、アマチャという植物から作られます。普通のチャ(茶)の仲間ではありません。なんと、アジサイの仲間です。
アマチャは、ヤマアジサイというアジサイの仲間の変種です。ヤマアジサイ自身が、ガクアジサイの変種とされることもあります。
ガクアジサイは、栽培されるアジサイの原種です。ガクアジサイから、普通のアジサイが作られました。同じ一族だけあって、アマチャの花は、ガクアジサイに似ています。
甘茶と似たものに、甜茶【てんちゃ】があります。同じように甘いお茶です。甜茶と甘茶とは、同じものでしょうか? 全く同じ、とは、言えません。
甜茶とは、本来、甘い味のお茶すべてを指しました。ですから、広い意味では、甘茶は甜茶の一種です。
けれども、今の日本で「甜茶」といえば、普通、甘茶とは違うものを指します。バラ科の一種から作られるお茶です。甜葉懸鈎子【てんようけんこうし】という植物が、甜茶の原料です。スギ花粉症に効く甜茶は、これです。
他に、アマチャと似たものとして、アマチャヅル(甘茶蔓)という植物があります。アマチャヅルも、甘いお茶にして飲まれます。名前も用途も似ているため、混同されやすいですね。しかし、アマチャヅルはウリ科です。アジサイの仲間ではありません。
アマチャと、アマチャヅルと、甜葉懸鈎子とは、それぞれ遠縁の植物です。ですが、どの種にも薬理作用があります。何に効くかは、三種とも違います。
信心深くなくても、灌仏会で甘茶をいただけば、健康になりそうですね。
過去の記事でも、仏教に関係する植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
シャラの木と沙羅双樹【さらそうじゅ】はどう違う?
お釈迦さまも食べた? レモン(2006/08/21)
などです。
この投稿のほかにも、植物に関するコラム、Q&Aなど盛りだくさんです。過去の記事は各カテゴリーよりどうぞご覧ください。
図鑑には、アマチャに近縁なヤマアジサイやガクアジサイが掲載されています。ぜひご利用ください。
和名:ゲンベイモモ 【1株に紅白の花をつける品種、花モモ】
学名:Prunus persica
和名:ヒサカキ
学名:Eurya japonica Thunb.
和名:クリスマスローズの一種(園芸種)
学名:Helleborus spp.
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東京 新宿【2007.03.29】
去年のサクラの様子や春の風景、コラムなどは、
2006年3月は、こちらをご覧ください。
2006年4月は、こちらをご覧ください。
図鑑には、ソメイヨシノ、オオシマザクラ、ヤマザクラ、ヒサカキ、モモなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
アメリカ サンフランシスコ【2007.03.10】
図鑑には、キャベツ(ブロッコリー)、チューリップが掲載されています。ぜひご利用ください。
先日のコラムで、貝に産卵するタナゴの仲間を紹介しましたね。〔貝に卵を産む? 不思議な魚たち〕 今回は、産卵されるほうの貝(産卵母貝)を紹介しましょう。
前のコラムに書いたとおり、産卵されるのは、イシガイ科の二枚貝です。イシガイ科の貝は、みな淡水に棲みます。日本には、十五種ほどが分布します。有名な種としては、イシガイ、カラスガイ、ドブガイ、マツカサガイなどがいます。
イシガイ科の種は、どれも、黒っぽくて地味です。外見は、似た種が多いです。普通の人には、種の区別をしにくいですね。淡水の二枚貝は、全部「カラスガイ」だと思う方もいるようです。一般に「カラスガイ」と呼ばれる貝には、正式種名カラスガイ以外の種が、よく混じっています。注意が必要ですね。
貝の体のどこに、タナゴ類が卵を産むのでしょう? 鰓【えら】です。ヒトでいえば、肺に当たる呼吸器官ですね。そんなところに産卵されて、苦しくないのかと心配になります。毎年、無事に子魚が育つところを見ると、致命的ではないのでしょう。
じつは、貝のほうは貝のほうで、魚を利用しています。イシガイ科の貝たち自身も、子ども時代に、魚のお世話になっています。
イシガイ科の子ども(幼生)は、グロキディウム幼生といいます。グロキディウム幼生は、貝類でも、イシガイ科だけに見られる幼生です。この幼生は、オイカワや、ヨシノボリ類などの淡水魚に寄生します。ひれにくっついて、そこから栄養をもらって、暮らします。魚にしてみれば、不愉快でしょう。ヒトにとってのシラミのようなものです。
以前、イシガイ科のグロキディウム幼生は、タナゴ類に寄生すると思われていました。お互いに、子ども時代を保護し合う関係だと考えられたのです。ところが、違いました。イシガイ科の幼生は、タナゴ類とは全く別種の魚たちに、寄生します。
タナゴ類が生きるには、イシガイ科の貝が必要です。イシガイ科の貝が生きるには、タナゴ類とは別の魚が必要です。一つの生き物を守るには、他のいろいろな生き物も、守らなければいけないのですね。生態系をまるごと保護する大切さを感じます。
過去の記事でも、淡水や汽水に棲む二枚貝を取り上げています。また、貝に産卵する魚たちも取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
貝に卵を産む? 不思議な魚たち(2007/03/30)
牡蠣(カキ)はなぜ寒い時期が旬か?(2006/2/4)
この投稿のほかにも、貝に関するコラム、Q&Aなど盛りだくさんです。過去の記事は各カテゴリーよりどうぞご覧ください。
図鑑には、イシガイ、カラスガイ、ドブガイ、マツカサガイが掲載されています。ぜひご利用ください。
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今日はエイプリル・フール、嘘をついてもいい日ですね。これにちなんで、今回は「嘘のような本当の話」をお届けしましょう。
人魚といえば、現代の普通の人は、架空の存在だと思いますよね。ところが、「人魚のミイラ」と呼ばれるものが、いくつも実在します。私も見たことがあります。
伝説のとおり、ミイラは、上半身がヒトで、下半身が魚の形をしています。正直なところ、美しいとは言いがたいです。アンデルセンの『人魚姫』とは大違いです。
ミイラは、むろん、偽物【にせもの】です。人魚の形を模して、人が作ったものです。多くは、サルの体と魚の体をつないでいます。江戸時代ころに、日本でよく作られました。昔の日本でも、西洋と同じく、人魚がいると信じられたようです。
なぜ、こんなものが作られたのでしょうか? 見世物【みせもの】にするためです。
江戸時代の日本は、見世物が盛んでした。平和が続いたので、娯楽が発達したのですね。人魚のミイラ以外に、鬼の首や、河童の手といったものが、見世物にされました。もちろん、すべて偽物です。人々の好奇心を刺激するために、作られました。
これらの見世物が、なんと、外国の博物館に収蔵されています。オランダのライデン博物館です。江戸時代、来日したヨーロッパ人が、国に持ち帰ったものです。
見世物を持ち帰った人々は、日本に人魚が実在すると思ったのでしょうか? そうではありません。彼らは、それらが作り物であることを、ちゃんと知っていました。日本の「見世物文化」を紹介するために、持ち帰ったのです。日本という国を、まるごと知ろうとする姿勢が感じられますね。当時のヨーロッパでは、日本は未知の国でした。
人魚のミイラは、日本以外の国でも作られました。他の国でも、「見世物」にあたいする娯楽があったからです。どういうわけか、人魚の存在は、世界各地で信じられていました。このために、各国で、「にせ人魚」が作られました。
「にせ人魚」を見世物にした昔の人を、笑うことはできません。それは、当時なりの、知的好奇心の現われです。未知のものを探究する心は、なくしたくありませんね。
過去の記事でも、人魚のような、ちょっと不思議な話を取り上げています。「妖怪だと思われていたものが、普通の生き物だった」といったことです。よろしければ、以下の記事もご覧下さい。
ヨシとアシは同じもの?(2006/9/8)
しゃべるナマズがいる?(2006/8/11)(2006/2/20)
妖怪の正体見たりウシガエル(牛蛙)(2006/8/7)
などです。
このほか、さまざまな生物に関するコラム、Q&A、画像など盛りだくさんです。過去の記事は各カテゴリよりどうぞご覧ください。
昨年(2006年)のエイプリル・フール記事もあります。よろしければ、こちらもお楽しみ下さい。
偽造の元祖? ピルトダウン人(2006/4/1)