お菊虫の正体は、ジャコウアゲハ?

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 『皿屋敷【さらやしき】』という伝説を御存知でしょうか? 日本各地に伝わる怪談です。お菊という名の女中が、いびり殺される、という悲惨な話です。死後、お菊は化けて出て、恨みを晴らします。この伝説に、お菊虫【きくむし】という虫が登場します。
 お菊虫は、お菊の死後に現われた虫です。まるで、人が後ろ手に縛られたような格好だったそうです。「いびり殺されたお菊の姿に似ている」と、恐れられました。
 お菊虫の伝説は、江戸時代に生まれました。現在では、その正体が、ほぼ解明されています。チョウ(蝶)の一種、ジャコウアゲハの蛹【さなぎ】だといわれます。
 なぜ、ジャコウアゲハの蛹が、「お菊虫」とされたのでしょうか?
 第一に、形ですね。ジャコウアゲハは、家の壁や木の枝などで、蛹になります。胸部を糸で支えています。その形は、「縄で後ろ手に縛られた人」に、見えなくもありません。
 第二に、色です。ジャコウアゲハ以外にも、「縛られ形」の蛹になるチョウがいます。なのに、ジャコウアゲハが「お菊虫」にされたのは、色が変わっているからです。
 普通、昆虫の蛹は、緑や茶色をしています。植物に紛れるように、です。ところが、ジャコウアゲハの蛹には、肌色っぽいものが多いです。敵の目をあざむく必要がないからです。彼らは毒を持つため、食べられません。触るだけなら、無害です。
 肌色なら、いかにも「縛られた人」ですね。ただし、すべてのジャコウアゲハの蛹が、肌色っぽいのではありません。個体差があります。
 第三に、ジャコウアゲハが、突発的に大発生することがあるためでしょう。奇怪な伝説がある土地に、見慣れない虫が、突然、大発生したら? しかも、その虫が、奇妙な形をしていたら? 「伝説と関係がある」と思われても、不思議ではありませんね。
 ジャコウアゲハは、南方系のアゲハチョウの仲間です。おそらく、江戸時代の日本には、今ほど多くいなかったでしょう。当時の日本は、今より寒かったからです。
 江戸時代の人にとって、ジャコウアゲハは、「見慣れない、奇怪な虫」だったのでしょう。伝説も、調べてみると面白いですね。生き物の生態が表われていることがあります。


 過去の記事でも、日本の伝説に登場する生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
 ヨシとアシは同じもの?(2006/9/8)
 精霊【しょうりょう】トンボとはどんなトンボ?(2006/8/12)
 しゃべるナマズがいる?(2006/8/11)
などです。



図鑑には、ジャコウアゲハヨシ(アシ)ウスバキトンボ(ショウリョウトンボ)が掲載されています。ぜひご利用下さい。

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このページは、松沢千鶴が2007年8月13日 00:09に書いたブログ記事です。

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