人に化ける蛇(ヘビ)? アカマタ

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 昔話の世界では、狐(キツネ)や狸(タヌキ)などの生き物が、人に化けますね。生物学的には、そんなことはあり得ません。けれども、民俗学的には、このような伝承に意味があります。「人に化ける」生き物は、それだけ人間に近しいといえますね。
 中には、思いがけない生き物が「化ける」といわれます。例えば、南西諸島のヘビの一種、アカマタです。沖縄でアカマター、奄美でマッタブと呼ばれるヘビです。
 アカマタには、毒はありません。ただし、気が荒いため、ヒトにも咬みついてきます。咬まれても、痛い以上のことはありません。
 アカマタの体は、赤と黒の縞【しま】模様です。派手なので、毒ヘビと誤解されがちです。日本産のヘビでは、大きくなるほうです。大型の個体では、2mを越えます。
 無毒でも、アカマタは、地元で畏怖されてきたようです。気の荒さ、大きさ、模様の派手さなどのためでしょう。「化ける」という伝承も、畏怖から生まれたと思われます。
 アカマタは、「美男子に化ける」といわれます。その姿で、若い女性をたぶらかすのですね。面白いのは、人をたぶらかす時、「尾で文字を書く」という伝承です。地面に、尾で字を書くというのです。その字を消せば、たぶらかされた人は正気に戻るといいます。
 ヘビの中には、威嚇【いかく】する時、尾を振るものがいます。ガラガラヘビなどがそうですね。しかし、アカマタは、そういう動作をしないようです。むろん、ヘビが「字を書く」わけはありません。なぜ、こんな伝承ができたのでしょうか? 理由は謎です。
 アカマタは、無毒にもかかわらず、ハブより強いといわれます。幼いハブを捕食します。そのため、「ハブ除け」として、大切にされることがあります。でも、いつもハブに勝てるわけではありません。逆に、ハブに食べられることもあるようです。
 同じヘビなのに、恐れたり大切にしたり、と扱いが違うのは、ヒトの勝手な都合ですね。アカマタにしてみれば、一生懸命生きているだけでしょう。
 今も昔も、アカマタは、南西諸島で平凡なヘビです。人々は、身近なアカマタに、「自然に対する畏怖」を重ねたのでしょうか。


 過去の記事でも、南西諸島に分布するヘビを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
「三すくみ」は嘘だった? 蛇はナメクジも平気(2007/2/15)
超偏食のヘビ(蛇)? イワサキセダカヘビ(2006/9/24)
ツチノコの正体? ヒメハブ(2006/8/14)
 ハブはなぜ危険か(2005/12/2)
などです。



図鑑には、アカマタが掲載されています。ぜひご利用下さい。

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このページは、松沢千鶴が2007年8月20日 06:10に書いたブログ記事です。

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