寒くなると、食べ物が美味しくなりますね。「北海道で、カニ三昧【ざんまい】したいなあ」なんて、考えてしまいます。私が食いしん坊だからでしょうか(笑)
北海道の有名な食材として、ケガニがありますね。名のとおり、毛だらけのカニです。東北以北の海に分布します。クリガニ科に属します。
じつは、ケガニは、昔は違う名でした。オオクリガニという名です。クリガニ(栗蟹)の仲間で、大型であることから、オオクリガニ(大栗蟹)と名づけられました。
ケガニというのは、通称だったのですね。いつの間にか、通称のほうが、正式名みたいになってしまいました。今も、学術的には、オオクリガニと呼ばれることがあります。
ケガニことオオクリガニには、似た種があります。クリガニとトゲクリガニです。みなクリガニ科に属します。どの種も毛だらけです。
クリガニとトゲクリガニも、食用になります。ややこしいことに、クリガニやトゲクリガニが、「毛ガニ」といって売られることがあります。外見がそっくりなため、混同されやすいのですね。これでは、買うほうは迷います。あまりにも安い「毛ガニ」は、オオクリガニでなく、クリガニかトゲクリガニと疑ったほうが、いいかも知れません。
ケガニの仲間は、なぜ、毛だらけなのでしょう? この理由は、まだ、よくわかっていません。防寒用でないことは、確かです。カニやエビなどの「毛」は、哺乳類と違って、保温のためにあるのではありません。
では、何のためかといえば、「周囲の動きを感知するため」です。毛が動くことによって、周囲の水の流れなどが、わかります。毛がたくさんあれば、接近する敵の気配などを、敏感に感じられるでしょう。生きるのに、有利ですね。
それなら、すべてのカニが、毛だらけになりそうなものです。実際には、そうなっていませんね。なぜ、ケガニの仲間ばかりが毛だらけなのか、謎が残っています。
最後に、ケガニの旬【しゅん】について、お教えしますね。ケガニ(オオクリガニ)の旬は、冬よりも、夏から秋だそうです。美味しい時期を逃さずに、食べたいですね。
過去の記事でも、カニやヤドカリの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カニでないカニがいる?(2006/12/24)
夫婦なのに名が違う? ズワイガニとコウバコガニ(2005/11/11)
などです。
図鑑には、ケガニ(オオクリガニ)も掲載されています。ぜひご利用下さい。
2007年11月アーカイブ
「地下展」という展覧会へ行ってまいりました。東京の、日本科学未来館で開催中の催しです。名のとおり、地下のこと全般を取り上げている展覧会です。
「おや? ここは生き物系のブログじゃなかった?」という声が聞こえそうです。もちろん、そのとおりです。「地下展」では、地下に棲む生き物についても取り上げています。その内容が、たいへん興味深かったため、ここで紹介することにしました。
地下の生き物には、どんなものがいるでしょう? モグラ、ミミズ、アリ、セミの幼虫。普通の人が思いつくのは、それくらいではないでしょうか。大した数は、いなさそうですね。ところが、実際は、大違いです。地下には、膨大な数の生き物がいます。
けれども、土を掘っても、生き物の姿は、あまり見えませんね。それは、地下の生き物は、大部分が、とても小さいからです。ほとんどが、顕微鏡を使わないと見えません。
地下展では、そういった地下の生き物たちを、たくさん紹介しています。地下の生き物には、バクテリア、菌類(キノコの仲間)、始原菌【しげんきん】などが多いです。どれも、微小なものです。彼らは、ヒトの常識からは、考えられない生活をしています。
例えば、アルカリフィルス・トランスバーレンシスAlkaliphillus transvaalensisという細菌がいます。この細菌は、なんと、地下3200mから発見されました。今のところ、生物の世界最深記録です。彼らは、「世界一アルカリ性に強い生物」でもあります。pH12.4の強アルカリ環境でも、平然と生きています。ヒトの皮膚や爪なら、溶けてしまうほどの環境です。彼らのいる地下には、このような環境があるのでしょう。
地下展では、「生物の生まれ故郷=地下説」も紹介されています。地中の粘土の中で、地球最初の蛋白質【たんぱくしつ】が生まれた可能性がある、というのです。
蛋白質は、生物の体の基礎となる物質です。これができれば、生物までは、あと一歩です。ただし、この一歩が進むのが、容易ではない、と考えられています。
地下展では、解説員の方々が、とても親切です。丁寧に説明してくれます。ぜひ、解説員の方から、お話を聴いて下さい。頭が良くなった気がすること、請け合いです。
過去の記事でも、生物系の博物館の情報を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
生命の星・地球をまるごと体感!博物館へ(2007/10/17)
「ファーブルにまなぶ」、虫の声の聴き方?(2007/10/11)
馬肥ゆる秋に、馬の博物館へ(2007/10/06)
などです。
表参道ケヤキ並木 画像
和名:ケヤキ
学名:Zelkova serrata(Thunb.) Makino
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
東京 港区 【2007.11.28】
図鑑には、ケヤキが掲載されています。ぜひご利用下さい。
ダイサギ
沖縄 金武 【2007.10.13】
和名:ダイサギ
学名:Egretta alba
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
図鑑には、ダイサギも掲載されています。ぜひご利用下さい。
カサゴは、磯釣りの対象になる魚ですね。岩場にいる魚らしく、ごつごつした姿をしています。海中では、海藻の生えた岩にそっくりです。
じつは、カサゴと呼ばれる魚は、一種ではありません。いくつもの種が含まれます。アヤメカサゴ、フサカサゴ、ユメカサゴ、イズカサゴなどです。ややこしいことに、単に「カサゴ」という種名の魚もいます。おおむね、フサカサゴ科フサカサゴ亜科に属する種が、まとめてカサゴと呼ばれます。
カサゴの仲間は、どれもよく似ています。種によって、分布する海域や、生息する深度が、少しずつ違います。そうやって、棲み分けているのですね。
例えば、フサカサゴは、本州中部以南の暖かい海に分布します。普通の「カサゴ」は、もう少し寒い海にもいます。北海道南部以南に分布します。
棲み分けているとはいえ、カサゴの仲間は、似た種が、同じような場所に棲むことが多いです。しかも、同じ種でも、体色などに幅があります。真っ赤に見えるものと、真っ黒に見えるものとが、まったく同じ種、ということもあります。
おかげで、カサゴの仲間は、分類が難しいです。「うっかりすると、カサゴに間違うくらい似ている」ために、ウッカリカサゴと名づけられた種がいるくらいです。冗談みたいですが、「ウッカリカサゴ」が正式な種名です。
「カサゴ一族」が似ているのは、みな、似た生活をするからです。海底の岩礁域で、あまり動きません。エビや小魚などの獲物を、待ち伏せて捕らえます。待ち伏せるのに、目立っては困りますね。だから、「カサゴ一族」は、全員、海底の岩に似ています。
カサゴの仲間は、食用魚としても知られます。どれも、白身の魚ですね。白身なのは、生態と関係しています。魚の白い筋肉は、瞬発力に優れた筋肉です。「じーっと待ち伏せていて、獲物が近づいたら、すばやく捕らえる」という動きに適しています。
だいたい、秋から冬にかけてが、カサゴの仲間の旬【しゅん】です。ちょうど、これからの季節ですね。煮つけや鍋物が美味しいです。どうぞ、御賞味下さい。
過去の記事でも、秋から冬に美味しい魚を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ハマチはブリの子か?(2007/1/19)
秋に美味しい鰍【かじか】(2006/11/13)
アンコウは釣りの名手(2006/1/27) などです。
図鑑には、カサゴとオニカサゴも掲載されています。ぜひご利用下さい。
海中には、陸では見られない生き物が、たくさんいますね。陸の生き物にそっくりでも、まったく類縁が遠い生き物も、多いです。ウミシダは、そんな生き物の一つです。
シダ(羊歯)という名のとおり、ウミシダは、陸上植物のシダにそっくりです。けれども、ウミシダは、植物ではありません。動物です。棘皮動物【きょくひどうぶつ】というグループに分類されます。ヒトデやウニやナマコが属するグループです。
植物のシダには、切れ込みが多くて、長い葉が付いていますね。ウミシダには、この葉に似た部分があります。ウミシダのこの部分は、葉ではなく、腕です。この腕で、食べ物を取ります。腕を広げて、海中の細かい有機物を捕らえ、食べます。
ウミシダには、葉に似た部分だけでなく、根に似た部分もあります。巻枝という部分です。普段は、巻枝で、海底の岩や、サンゴなどにしがみついています。
しがみつきっぱなしではありません。ウミシダは、移動できます。すべての種が、巻枝を動かして、歩きます。種によっては、腕を振り動かして、泳ぐこともできます。
同種のウミシダでも、個体により、色や模様の差が激しいです。このため、種を同定するのが困難です。例として、ニッポンウミシダを挙げてみましょう。日本近海に多い種です。この種の色は、赤紫が多いです。が、黄色っぽかったり、真っ黒に近かったりするものもいます。外見だけで、ウミシダの種を決めるのは、ほぼ不可能です。
ウミシダは、棘皮動物の中でも、原始的なグループです。ウミシダの直接の祖先は、ウミユリ(海百合)という棘皮動物です。ウミユリは、五億年ほども昔に、地球上に現われました。ウミユリの原始的な性質を受け継いだのが、ウミシダです。生きている化石といえますね。生物進化の謎の一部を、ウミシダが握っているかも知れません。
ウミシダは、注目されることが少ない生き物です。けれども、近年では、前記の理由などから、注目されつつあります。飼育技術なども、少しずつ進んできました。
先日、東京大学の臨海実験所が、ウミシダの継続飼育に成功しました。世界初の成果です。遅れていた研究が、これで進みそうです。今後の報告が楽しみですね。
過去の記事でも、ウミシダの仲間の棘皮動物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
海中のオブジェ? パイプウニ(2007/11/16)
棘だけでは足りない? ウニの防御作戦(2007/08/11)
貝と付いても貝じゃない? モミジガイ(2007/04/27)
食用ナマコはどんなナマコか?(2007/01/22)
サンゴ礁の海を守るナマコ(2006/07/22)などです。
図鑑には、ニッポンウミシダが掲載されています。ぜひご利用下さい。
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昔の日本家屋では、天井裏でネズミが騒いだといいますね。私自身は、そのような経験はありません。親などから、「昔は、そういうことがよくあった」と聞きます。
今は、昔ながらの日本家屋は少ないですね。コンクリート製のマンションなどが増えました。もう、ネズミが活躍する余地はなさそうです。
ところが、最近、マンションやオフィスビルで、ネズミの被害が増えています。衛生面での被害だけではありません。どういうわけか、ネズミは、電線などのケーブルをかじるのが好きなのですね。停電したり、コンピュータネットワークが使えなくなったりといった被害が、報告されています。
マンションやオフィスビルで騒ぐのは、昔、日本家屋の天井裏で騒いだのと、同じネズミです。クマネズミという種です。下水にいるドブネズミとは、違う種です。
クマネズミは、かつて、東南アジアの樹上で生活していたと考えられています。そのため、高所に上るのが得意です。ドブネズミは、体が重いので、高所が苦手です。
高層マンションやオフィスビルは、クマネズミにとって、遠い故郷の森林に似ているのでしょう。ビル内の狭い隙間には、ライバルのドブネズミも、天敵のネコ(猫)も、入れません。クマネズミの天下ですね。
クマネズミは、世界中に分布しています。ヒトの移動に付いて、分布を広げたと考えられます。主食が植物のため、農作物に被害を及ぼすこともあります。
クマネズミは、ヒトに害をなすだけではありません。植物や昆虫などの、在来の生き物が、脅かされています。小笠原諸島など、離島での害が、深刻です。
離島には、そこにしかいない固有種が、多いです。島の固有種は、敵が少なく、食べ物やすみかが限られた環境で、進化しました。そこへ、クマネズミのような外来種が現われたら? 直接襲われなくても、食べ物やすみかを奪われる可能性が、高いですね。
クマネズミが暴れているのは、人間の自業自得です。何も考えずに行動すると、自然に仕返しされる、ということでしょう。節度ある行動が必要ですね。
過去の記事でも、ネズミの仲間を取り上げています。また、いろいろな外来種についても取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
人類に貢献するハツカネズミ(2007/9/14)
セアカゴケグモは猛毒グモ?(2006/9/15)
新種発見! トゲネズミ(2006/7/10)などです。
図鑑には、クマネズミとドブネズミが掲載されています。ぜひご利用下さい。
こんにちは、はじめまして。
家の近くにある植物について質問があります。よろしければ、教えていただけませんか? 『アメリカ楓の木』と聞いた、秋には紅葉する大きな葉の並木があります。本当にアメリカ楓というのでしょうか?正式な名前、由来(どこの国からきたのか)など教えてください。よろしくお願いいたします。
「アメリカ楓の木」は、標準的な日本語名を、「モミジバフウ」といいます。漢字で書けば、「紅葉葉楓」ですね。「楓」の字は、カエデと読まれることが多いですが、この場合は「フウ」と読みます。「アメリカ楓【アメリカフウ】」というのは、別名です。
モミジバフウは、マンサク科フウ属に分類されます。「楓」という字が付いても、カエデの仲間ではありません。カエデの仲間は、カエデ科カエデ属に分類されます。
アメリカフウという別名のとおり、モミジバフウの原産地は、北米中南部から中米にかけての地域です。日本には、大正時代に移入されたといわれます。紅葉が美しいため、公園などによく植えられますね。
モミジバフウには、フウ(楓)、トウヨウフウ(東洋楓)などの近縁種があります。フウは、モミジバフウと並んで、公園などに植えられることがあります。近縁種だけあって、姿も似ています。フウの原産地は、中国中南部と台湾です。日本には、江戸時代の享保年間(一七一六年~一七三六年)に移入されたようです。
「楓」という字は、本来、中国で、フウの木を指しました。ところが、日本で、誤ってカエデに当てはめられてしまいました。「人の手のように裂けた葉で、紅葉が美しい」ところから、混同されたのでしょう。
このように、生物は、日本語名だけでは、種が確定しなかったり、別種と混同されたりしがちです。そういうことがないように、学名というものがあります。学名は、すべてラテン語で付けられています。学名は、一種に対して一つです。
モミジバフウの学名は、Liquidambar styracifluaです。
学名については、以下のコラムに取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
学名ってなんですか?(2005/099/30)
図鑑には、モミジバフウが掲載されています。ぜひご利用下さい。
和名:コチドリ
学名:Charadrius dubius
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沖縄 金武 【2007.11.03】
図鑑には、コチドリが掲載されています。ぜひご利用下さい。
現在、日本のカメに、危機が迫っています。特に危機的と言われるのが、ニホンイシガメという種です。日本にしかいない、固有種です。池などの淡水域に棲みます。
ニホンイシガメの危機の原因は、いくつかあります。近年、問題にされるのは、外来種のカメです。外国から来たカメに、生息地を奪われているのですね。
今、日本の淡水域で、最も数が多いのは、おそらく、アカミミガメです。本来は、南北のアメリカ大陸に、広く分布する種です。日本には、ペットとして持ちこまれました。
ペットショップなどで、「ミドリガメ」が売られているのを、見たことがありませんか? あの「ミドリガメ」は、アカミミガメの幼体です。「ミドリガメ」は、想像以上に大きくなります。それを持て余し、捨ててしまう人が多いのですね。不心得なことです。
アカミミガメと、ニホンイシガメは、生息地が重なります。つまり、同じような場所に棲みます。当然、すみかの奪い合いが起こります。
争いになれば、アカミミガメのほうが有利です。体が大きくなるからです。そのうえ、アカミミガメのほうが、産む卵の数が多いです。ニホンイシガメは、多くても、年に十二個程度しか産卵しません。対して、アカミミガメは、年に三十個以上産卵することも、珍しくないといいます。これでは、ニホンイシガメは、まったく敵いませんね。
外来種以上に、ニホンイシガメを脅かすものがあります。環境の悪化です。農薬がまかれた水田や、コンクリートで岸が固められた川には、カメは棲めません。
ここ数十年の間、ニホンイシガメは、環境の悪化に追い詰められていました。そこへ、強力な競合相手が現われたのです。ますます、数が減ってしまいました。
環境の悪化も、競合相手の登場も、人間のせいですね。なのに、現在のところ、ニホンイシガメがどれくらい危機的なのかも、わかっていません。データがなければ、彼らを救う方法も、うまく考えられません。心ある研究者が、細々と研究している状態です。
「気づいた時には手遅れ」などという事態は、いやですね。貴重な日本固有種が、絶滅するかも知れません。そうなる前に、対策が取られることを望みます。
過去の記事でも、カメの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カメについての質問【夏休み自由研究】(2007/8/22)
スッポン(鼈)の故郷はどこ?(2007/2/23)
浦島太郎が助けたのはアカウミガメ?(2006/7/28)
飼う前によく考えましょう、カミツキガメとワニガメ(2006/4/5) などです。
図鑑には、ニホンイシガメが掲載されています。ぜひご利用下さい。
和名:ノネコ
学名:Felis catus
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
沖縄 金武 【2007.11.03】
2007年10月のマロン
マロン(2007/10/23)
2007年6月のマロン
ノネコ(2007/06/20)
2007年5月のマロン
ノネコ(2007/06/20)
去年のマロン
美味しそうに飲んでますね。(2006/01/15)
小笠原諸島や、南西諸島には、珍しい生き物が多いですね。陸以上に、海の中が、生き物の宝庫です。中には、とても生き物とは思えないものもいます。
パイプウニは、そんな生き物の一種です。名のとおり、ウニの仲間です。棘がパイプのように太いため、こんな名が付きました。生きている時には、丸い球に、ペンをたくさん刺したように見えます。前衛芸術のオブジェみたいです。
英語では、パイプウニを、pencil urchinと呼ぶようです。「鉛筆ウニ」という意味ですね。どこの国の人が見ても、この姿が印象的なのでしょう。
ウニの棘は、身を守るためにあります。こんな棘では、武器にならなさそうですね? しかも、動きにくそうです。なぜ、パイプウニは、こんな棘になったのでしょう?
この理由は、わかっていません。「パイプ棘」でも、武器にならないことはないようです。他のウニと同じく、ちゃんと海底を這って動きます。でなければ、とっくに滅びているはずですね。多くのウニと同様、彼らは夜行性です。昼は、岩陰などに隠れています。
一説では、パイプウニは、有毒だといいます。棘に毒があり、例えばヒトが触ると、かぶれることがあるそうです。棘が鋭くない分、毒で補っているのかも知れません。
パイプウニの毒については、よくわかっていません。「毒はない」という説もあります。念のため、生きている個体には、素手で触らないほうがいいでしょう。
パイプウニのように、太い棘を持つウニは、他にもいます。ノコギリウニ、マツカサウニ、バクダンウニなどです。多くが、南方系の種です。サンゴ礁の海では、太い棘に、何か利点があるのでしょうか? これも、謎の一つです。
パイプウニには、ミツカドパイプウニという近縁種がいます。姿は、パイプウニとそっくりです。棘の横断面が、三角形になっていることで、区別できるそうです。でも、野外で区別するのは、難しいですね。
ミツカドパイプウニは、日本近海では、小笠原にしかいないようです。貴重な種ですね。このような種がいることが、小笠原が「東洋のガラパゴス」である証拠でしょう。
過去の記事でも、ウニの仲間を取り上げています。また、小笠原にいる生き物も取り上げています、よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヤシ? いいえシダの木です。マルハチ(2007/11/02)
棘だけでは足りない? ウニの防御作戦(2007/8/11)
アオウミガメは、どこが青いか?(2007/5/11)
雌(メス)しかいないトカゲがいる?(2007/3/6)
ザトウクジラはホエールウォッチングの人気者(2006/3/13)
図鑑には、パイプウニは掲載されています。その他にも、バフンウニ、ムラサキウニ、ラッパウニなどのウニが載っています。ぜひご利用下さい。
生きている化石のシーラカンスは、話題に事欠きませんね。近年、「インドネシアのスラウェシ島近海で、シーラカンスの新種が見つかった」というニュースがありました。
それまで、「シーラカンスは、アフリカ南東部のコモロ諸島近海にしかいない」と考えられていました。ラテン語の学名を、ラティメリア・カルムナエLatimeria chalumnaeという種です。インドネシアのシーラカンスは、これとは違う新種だと判断されました。ラティメリア・メナドエンシスLatimeria menadoensisという学名が付いています。
最近、さらに、第三の生息域が発見されました。東アフリカのタンザニア沖です。ここで、続々とシーラカンスが捕獲されました。漁師さんたちが、普通の魚を捕ろうとしていたのに、シーラカンスが捕れてしまった、といいます。
はじめ、タンザニアのシーラカンスは、「本来の生息域であるコモロ近海から、流されてきたのでは?」と考えられました。けれども、二〇〇七年に行なわれた調査により、「タンザニア沖に、シーラカンスの生息域がある」と確認されました。なんと、日本の調査隊による成果です。福島県にある水族館「アクアマリンふくしま」の調査隊でした。
タンザニアのシーラカンスは、第三の種なのでしょうか? これは、まだわかっていません。現在までの調査では、新種の可能性があるようです。
新種でなくとも、新しい生息域が判明したのは、嬉しいですね。しかし、喜んでばかりはいられません。判明した理由が、問題だからです。なぜ、今になって、タンザニア沖で、シーラカンスが捕れるようになったのでしょうか?
その理由は、タンザニア沿岸の海で、魚が減ったためです。漁師さんたちは、困ってしまいました。魚を求めて、より沖の海へ行ったのですね。そこが、シーラカンスの生息域でした。漁業資源の枯渇という、深刻な問題が、根底にあります。
このままでは、シーラカンスの生存も、危うくなりかねません。海全体が健全でないのに、一種だけ無事なことは、あり得ないからです。シーラカンスを含めた魚も、漁師さんたちも、豊かに暮らせる海にしたいですね。
過去の記事でも、シーラカンスを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
えっ シーラカンスを捕まえた?!(2007/5/22)
シーラカンスの動画撮影に成功! その後は?(2007/1/20)
シーラカンスはなぜ「生きている化石」か?(2006/6/1)
などです。
和名:ハクセキレイ
学名:Motacilla alba
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沖縄 金武 【2007.11.03】
図鑑には、ハクセキレイが掲載されています。ぜひご利用下さい。
メジロ(目白)は、日本人に親しまれる鳥ですね。住宅地でも、よく見られる小鳥です。似た名前の、メグロ(目黒)という鳥がいるのは、御存知ですか?
メグロは、日本の小笠原諸島に分布します。世界中で、小笠原にしかいません。とても貴重な鳥です。名前だけでなく、姿もメジロに似ています。ただ、眼の回りが黒いです。
メグロは、メジロに近縁なのでしょうか? これについては、議論があります。
これまで、メグロは、ミツスイ科に分類されるのが、一般的でした。この説では、日本で唯一のミツスイ科の鳥、ということになります。けれども、ヒヨドリ科やチメドリ科という説もありました。最近では、メジロと同じメジロ科という説が、有力です。
小笠原には、メジロも分布します。繁殖期を終えた後、メグロは、メジロと一緒に群れを作ることがあります。このように、異種同士で作られた群れを、混群といいます。
混群は、日本本土の鳥でも見られます。やはり、繁殖期を終えた冬に、作られることが多いです。なぜ、種の違う鳥同士で群れるのかは、わかっていません。
研究の結果、メグロとメジロの混群の場合は、面白いことがわかってきました。少なくとも、メグロのほうは、メジロと一緒にいることで、利益があるようです。
メグロは、食べ物に対して、保守的です。見たことのない物は、怪しんで、食べようとしません。メジロは、逆に新しいもの好きです。見たことのない物でも、喜んで食べます。メジロが食べるのを見て、メグロは、「あれは安全に食べられるんだ」と、学習するようです。こうして、メグロは、新しい食べ物を獲得するわけですね。
メグロは、よく、パパイアを食べている写真が紹介されます。パパイアは、もともと、小笠原にはありませんでした。きっと、最初は、メジロが食べるのを見て、メグロも食べ始めたのでしょう。メグロの主食は、パパイアではありません。果物よりも、昆虫やクモなどの、小動物を好みます。これは、小笠原のメジロも同じです。
小笠原は、自然が豊かなところです。しかし、人間が気を使わなければ、島の自然は、すぐに壊れてしまいます。メグロとメジロが、仲良く暮らせる島にしたいですね。
過去の記事で、メジロを取り上げています。また、小笠原の他の生き物についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
大洋に生きるオガサワラトカゲ(2007/11/09)
ヤシ? いいえシダの木です。マルハチ(2007/11/02)
梅にウグイス? いえメジロです(2007/03/12)
サクラ、メジロ(2007/01/30)
などです。
図鑑には、メグロもメジロも掲載されています。また、植物のパパイアも載っています。ぜひご利用下さい。
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和名:チュウサギ
学名:Egretta intermedia
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
沖縄 金武 【2007.11.03】
図鑑には、チュウサギが掲載されています。ぜひご利用下さい。
和名:コサギ
学名:Egretta garzetta
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。
沖縄 金武 【2007.11.03】
図鑑には、コサギが掲載されています。ぜひご利用下さい。
東洋のガラパゴス、小笠原諸島には、固有種がたくさん分布します。目立たなくても、貴重な生き物が多いのです。中から、今回は、オガサワラトカゲを紹介しましょう。
オガサワラトカゲは、地味なトカゲです。本土にいるニホントカゲより、小柄で細いです。ニホントカゲよりは、ニホンカナヘビに似ています。でも、ニホンカナヘビとは違う仲間です。ニホントカゲと同じトカゲ科(スキンク科ともいいます)に属します。
オガサワラトカゲには、変わった特徴があります。彼らは、まばたきをしません。なぜなら、瞼【まぶた】が透明になって、ぴったりと眼を覆っているからです。常に、透明な瞼ごしに、ものを見ているのですね。この特徴は、ヤモリやヘビと同じです。
普通のトカゲは、まばたきをします。普通の瞼があるからです。なぜ、オガサワラトカゲがこうなったのかは、わかっていません。
オガサワラトカゲは、ボウトンヘビメトカゲというトカゲの亜種です。ボウトンヘビメトカゲは、大洋の島々に、広く分布する種です。棲む島や、地域ごとに、亜種に分かれています。種を分けるほどでなくても、違いがある、ということですね。「ヘビメ」トカゲという名は、ヘビと同じく、透明な瞼に覆われた眼であることから付きました。
亜種とはいえ、オガサワラトカゲが貴重なことは、変わりません。彼らの先祖は、流木か何かに乗って、小笠原へ着いたのでしょう。長い年月、仲間と離れて暮らすうちに、独自の亜種になりました。小笠原の彼らが滅びてしまったら、地球上には、オガサワラトカゲという生き物が、いなくなります。
今、オガサワラトカゲの生息地が、おびやかされています。生息域の破壊や、外来種のためです。特に、外来種の影響が、強く懸念されています。
小笠原には、グリーンアノールという外来種のトカゲがいます。オガサワラトカゲと同じく、昆虫やクモを食べます。同じところに棲めば、食べ物の奪い合いになりますよね。オガサワラトカゲや、同様に前からいるオガサワラヤモリに、悪影響がありそうです。外来種に負けず、先住の種に、生き残って欲しいですね。
過去の記事でも、小笠原の生き物を取り上げています。また、トカゲの仲間も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヤシ? いいえシダの木です。マルハチ(2007/11/02)
雌(メス)しかいないトカゲがいる?(2007/3/6)
トカゲのしっぽ切りは何のため?(2006/9/11)
などです。
図鑑には、オガサワラトカゲと、同じく小笠原に棲むオガサワラヤモリが掲載されています。ぜひご利用下さい。
また、悲しいニュースがありました。「琵琶湖で、新たな外来種の魚が発見された」と報道されましたね。「エンツイ」と呼ばれる魚です。
「エンツイ」とは、魚の原産地の、中国での名です。日本語の名は、ありません。日本には、本来、分布しないからですね。
もとの中国語からすれば、「エンツイ」とは、だいぶ「なまった」発音です。「エンツュイ」、「エンツユイ」、「エンチュイ」などとも呼ばれます。
より正確には、「イェン・ツー・ユイ」という感じに発音します。漢字で書けば、「臙脂魚」です。まれに、成魚が臙脂【えんじ】色になるため、このように名づけられたのでしょう。ラテン語の学名を、Myxocyprinus asiaticusといいます。
エンツイ改めイェンツーユイは、コイ目に属します。広い意味では、コイの仲間ですね。けれども、コイと違って、コイ科ではありません。コイ目サッカー科に属します。サッカーとは、球技のサッカーsoccerではありませんよ(笑)サッカーsuckerという名の魚がいるのです。主に、北米に分布する魚のグループです。
イェンツーユイは、中国の長江流域に分布します。サッカー科の中で、唯一、北米以外に分布する種です。なぜ、一種だけこんなに離れているのかは、わかっていません。
今回見つかったイェンツーユイを、写真で見ると、奇妙な形をしていますね。背中が高く盛り上がっています。そこに、大きな背びれが付いています。これは、幼魚の姿です。成魚は、スマートな形です。普通の魚と変わりません。
イェンツーユイは、観賞魚として、日本に輸入されています。確かに、幼魚の形は、面白いですね。しかし、成魚が、1mを越えるほど大きくなることを、忘れてはいけません。「それほどの大型魚を飼う」と覚悟ができなければ、飼うべきではありません。
外来種自身には、罪はありません。いつも、ここのブログに書いているとおりですね。ペットを売る人、買う人、管理する人など、みんなの責任が、問われています。
過去の記事でも、外来種について取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ワニに見えてもワニじゃない、ガーパイク(2006/09/16)
オオトカゲは危険生物?(2006/08/22)
飼う前によく考えましょう、カミツキガメとワニガメ(2006/04/5)
ミドリガメ(アカミミガメ)から病気がうつるのは本当?(2006/03/13)
などです。
図鑑には、コイ、タナゴ、ドジョウなど、コイ目の魚が十種以上掲載されています。ぜひご利用下さい。
和名:セイタカシギ
学名:Himantopus himantopus
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沖縄 金武 【2007.10.13】
図鑑には、セイタカシギが掲載されています。ぜひご利用下さい。
だんだん寒くなってきましたね。季節は、海の中にもめぐります。
例えば、伊豆の海を見てみましょう。伊豆は、ダイビングスポットとして人気です。おかげで、たくさんの種の魚が、ダイバーに観察されています。
初夏から初冬にかけて、伊豆では、きれいな魚がたくさん見られます。クマノミ、ハマクマノミ、ツノダシ、タテジマキンチャクダイなどです。これらの多くは、サンゴ礁に棲む魚です。本来、もっと南の海にいるものたちです。
温かいとはいえ、伊豆の海は、サンゴ礁ができるほどではありません。なぜ、サンゴ礁の魚が、伊豆にいるのでしょうか?
彼らは、南の海からやってきます。海流に乗ってくるのです。伊豆の場合なら、黒潮ですね。日本の太平洋岸を通る暖流です。
伊豆の海でも、初夏から初冬にかけては、かなり温かいです。南の海の魚が、普通に暮らせます。ところが、温度が下がってくると、そうはいきません。南海生まれの魚たちは、大部分が、冬に死んでしまいます。春になると、南から、新しい幼魚たちがやってきます。
このような魚を、死滅回遊魚と呼びます。死滅しては、新たに回遊してくることを、繰り返すからです。死滅回遊魚は、南海の魚とは限りません。けれども、日本近海では、「南から北へ来て、冬に死滅する魚」が、こう呼ばれることが多いです。
死滅回遊は、無駄なことに見えますね。なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?
同じ場所では、生きられる数が、限られるからです。すみかが足りないものは、別の場所へ、すみかを求めるしかありません。そうなるのは、たいてい、新たに生まれた幼魚です。彼らは、生きるために旅立ちます。死滅するために、旅するのではありません。
たまたま、行き着いた先が、生きるのに適さない場所ですと、死滅回遊になってしまいます。でも、中には、生きやすい場所に着くものもいるでしょう。ひょっとして、そこは、思わぬ新天地かも知れません。リスクがあっても、旅立つ利点があります。
自然は厳しいです。どの生き物も、その中で、精一杯、生きているのでしょう。
過去の記事でも、サンゴ礁に棲む魚を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
海中の一角獣【いっかくじゅう】? テングハギ(2007/7/23)
クマノミの親子関係(2005/10/31)
ニモのお父さんはお母さんだった?(2005/10/28)などです。
図鑑には、サンゴ礁の魚として、クマノミ、ハマクマノミ、タテジマキンチャクダイ、ツノダシ、テングハギ、バラフエダイなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。
日本は、自然が豊かな国ですね。中でも、何ヶ所かに、特に豊かな自然があります。
小笠原諸島が、その一つです。ここは、「東洋のガラパゴス」という別名で知られます。南米のガラパゴス諸島に匹敵するほど、珍しい生き物が多いのですね。
例えば、マルハチは、小笠原諸島にしか自生しない樹木です。小笠原の固有種ですね。一見、南の島のヤシの木のように見えます。けれども、ヤシとは、まったく違います。
何より違うのは、マルハチには、花が咲かないことです。マルハチは、隠花植物と呼ばれるシダ(羊歯)の仲間です。ワラビやゼンマイの親類ですね。
「シダが樹木になるの?」と、驚かれる方もいるでしょう。マルハチのように、樹木になるシダは、何種もあります。このようなシダを、木生【もくせい】シダと呼びます。
マルハチは、ヘゴ科ヘゴ属の木生シダです。ヘゴという名の木生シダと近縁です。ヘゴの仲間は、園芸の世界で、材木として使われますね。ヘゴ材というものです。
マルハチのようなシダ植物は、原始的な植物です。花が進化する前の段階にいます。
恐竜が現われるより、もっと前に、シダ植物は現われました。両生類や、原始的な爬虫類の時代です。その時代、シダの仲間は大繁栄しました。地球の多くの地域が、木生シダの大森林だった、と考えられています。
後に、花の咲く植物が現われて、シダの仲間は数を減らしました。特に、木生シダは、打撃を受けたようです。現在、ほとんどの木生シダは、熱帯に分布します。
マルハチは、亜熱帯の小笠原に分布します。高さ7~8mにもなります。遠い昔の、シダの巨木に似ています。生きている化石といえるかも知れません。
小笠原諸島には、約八十種のシダ植物があります。そのうち、固有種は、約二十五種といわれます。なんと、四分の一以上が固有種です。まさに「東洋のガラパゴス」ですね。
マルハチが、小笠原で生きてこられたのは、人手が入りにくい島だからでしょう。島の環境は、壊れやすいものです。人間が不注意に開発すれば、マルハチの生える「原始の楽園」は、なくなってしまいます。そんなふうには、したくありませんね。
過去の記事でも、小笠原諸島の生き物を取り上げています。また、シダ植物の仲間も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アオウミガメは、どこが青いか?(2007/5/11)
雌(メス)しかいないトカゲがいる?(2007/3/6)
ザトウクジラはホエールウォッチングの人気者(2006/3/13)
などです。
図鑑には、マルハチは掲載されています。ぜひご利用下さい。
先日、深刻なニュースがありました。今、生息している霊長類の三割が、絶滅するかも知れない、というのです。
霊長類とは、サル(猿)の仲間ですね。生物学的には、哺乳綱【ほにゅうこう】霊長目【れいちょうもく】に属する生き物を指します。ヒトも、この仲間ですね。
ヒトは、こんなに栄えています。なのに、なぜ、他のサルには、絶滅しそうなものが多いのでしょうか? いくつかの原因があると、考えられています。
中で、有力な原因として、熱帯の環境破壊が挙げられます。サルの仲間は、大部分が、熱帯に分布するからです。逆に言えば、熱帯以外に分布するサルは、とても少ないです。
私たちヒトは、熱帯から寒帯まで、広く分布しますね。ですから、「サル類が、圧倒的に熱帯にいる」ことを忘れがちです。寒い地域に棲むサルとしては、ニホンザル、アカゲザル、キンシコウ(金絲猴)などがいます。これらの種は、珍しい例外なのですね。
有名なサルの種を、並べてみましょう。チンパンジーやゴリラは、アフリカの熱帯地域にいますね。リスザルやオマキザル――どちらも、ペットや実験動物として人気です――は、中米から南米の熱帯地域にいます。歌で知られるアイアイは、アフリカ沖のマダガスカル島に棲みます。確かに、ほとんどの種が、熱帯のものですね。
そんなわけで、熱帯の環境破壊は、サル類に、重大な影響を及ぼします。棲む場所がなくなれば、どんな生き物でも、絶滅せざるを得ません。
二十一世紀になってからも、熱帯では、サルの新種が発見されています。キプンジや、ブロンドオマキザルなどです。キプンジは、二〇〇五年に、アフリカのタンザニアで発見されました。ブロンドオマキザルは、二〇〇六年に、南米のブラジルで発見されました。
続々と新種が発見されるのは、熱帯の環境が、豊かな証拠です。熱帯の環境を壊すと、膨大な生き物のすみかを、奪うことになります。
今の状況では、キプンジやブロンドオマキザルは、発見された早々に、絶滅しかねません。サルたちに、数多い絶滅種のあとを、たどらせたくありませんね。
過去の記事でも、サルの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
チンパンジーの贈り物はパパイア?(2007/9/13)
ニホンザルは世界北限のサル(2005/11/14)
などです。
図鑑には、ニホンザルが掲載されています。ぜひご利用下さい。
イギリスから、びっくりニュースです。なんと、四百年以上も生きた貝が、発見されたとのことです。二枚貝の仲間です。
この貝は、北大西洋のアイスランド沖にいたところを、採集されました。残念ながら、採集直後に、死んでしまったそうです。けれども、貴重な標本が残されました。
外見は、これといった特徴がありません。白っぽい二枚貝です。報道では、ハマグリに近縁だとされていますね。それは、間違いではありません。ハマグリと同じ、マルスダレガイ目に属します。ただし、目【もく】より下の分類は、ハマグリと違います。
この貝は、マルスダレガイ目アイスランドガイ科に属します。この科に属する、ただ一つの種です。北大西洋に分布します。日本近海には、いません。
ラテン語の学名では、この貝は、Arctica islandicaといいます。日本語名は、アイスランドガイとされています。ハマグリなどと同じく、海底の砂や泥に潜って、生活します。カナダやアイスランドでは、食用に漁獲されています。
今回見つかった貝が、なぜ、四百年以上も生きているとわかったのでしょうか? その理由は、貝殻にあります。アイスランドガイは、貝殻にある筋を数えることで、年齢を知ることができます。木の年輪を数えるのと、同じ原理ですね。
このように、動物の体の一部(主に、貝殻など硬い部分)から、年齢を決める方法があります。英語でsclerochronologyといいます。日本語では、適当な言葉がありません。
以前から、アイスランドガイは、二百年以上も生きることが知られていました。長生きの秘密は、体のエネルギー消費を、少なくすることにあります。
アイスランドガイは、心拍数を、通常の10分の1にまで減らせるといいます。(貝にも心臓があります)こうすることにより、体のエネルギー消費を減らします。すると、成長が遅くなります。当然、老化も遅くなります。長生きするわけですね。
四百年以上も生きたものを、死なせてしまったのは、惜しいことです。そのかわりに、生命の神秘を解く研究が、発達するといいですね。
現在、日本近海には、アイスランドガイの仲間はいません。しかし、大昔は、日本近海にも、近縁種がいたようです。岩手県の大船渡【おおふなと】市立博物館や、富山県の八尾【やつお】化石資料館で、アイスランドガイの近縁種「イソシプリナIsocyprina」の化石が見られます。
過去の記事でも、多くの二枚貝を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
魚と持ちつ持たれつ? イシガイ科の二枚貝たち(2007/4/2)
真珠貝【しんじゅがい】の秘密(2006/6/16)
潮干狩りの主役、アサリ(2006/4/27) などです。
図鑑には、アサリ、チョウセンハマグリなど、マルスダレガイ目の二枚貝が掲載されています。ぜひご利用下さい。