常夏【とこなつ】の花とは、どんな花?

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 常夏といえば、現在では、「一年中が夏のような気候」を指しますね。けれども、平安時代の日本では、違いました。常夏とは、植物を指す言葉でした。
 それは、ナデシコ(撫子)のことです。秋の七草の一種として、知られますね。正確には、カワラナデシコという種の草です。秋の七草なのに、なぜ、「常夏」なのでしょう?
 カワラナデシコは、秋にしか、咲かないわけではありません。夏から秋にかけてが、花期です。秋に、夏の名残のように咲く姿から、「常夏」と付けられたようです。
 カワラナデシコは、日本土着の植物です。ナデシコ科ナデシコ属に属します。
 ナデシコ属の植物は、外国にも、多いです。いくつかの種は、日本に移入されました。観て楽しむためです。中国産のナデシコなどは、早くも、平安時代の日本にありました。カラナデシコ(唐撫子)、セキチク(石竹)などと呼ばれるものです。
 土着のカワラナデシコも、早くから、栽培されました。観賞するためです。中国産のナデシコと交配されたりして、多くの品種が作られました。中には、とてつもない品種があります。「花びらが長すぎて、垂れている」というものです。
 それは、「伊勢撫子【いせなでしこ】」と呼ばれる品種の一群です。花びらの長さが、20cm以上になるものもあります。花びらは、それぞれ、先が細かく分かれて、よじれています。まるで、「髪を縦ロールに巻いたお嬢さま」みたいです。
 伊勢ナデシコは、人間が手伝わないと、花が開きません。花びらが変形しすぎたため、開く途中で、引っかかってしまうのですね。特殊な櫛【くし】を使って、人がすいてあげるそうです。まさに「お嬢さま」ですね。
 私は、伊勢ナデシコの実物を、見たことがあります。確かに、見事な花でした。ですが、野にあるカワラナデシコのほうが、好きですね。素朴な風情があります。
 源氏物語に「常夏の女」という人物が、登場します。これは、「夕顔」の別名です。光源氏に愛されながら、若くして亡くなる女性ですね。彼女のイメージには、伊勢ナデシコでは、人工的すぎるでしょう。野のカワラナデシコが、ふさわしいと思います。



図鑑には、カワラナデシコが掲載されています。ぜひご利用下さい。


 過去の記事でも、秋の七草を取り上げています。また、源氏物語に関係する生き物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
 古代の「朝顔」は、キキョウ(桔梗)?(2008/08/08)
 「朝顔」は、謎の植物?(2008/07/21)
 ムクゲ(木槿)は昔、朝顔だった?(2008/07/04)
などです。


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このページは、松沢千鶴が2008年8月20日 07:28に書いたブログ記事です。

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