「くいな叩く」のクイナとは?

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 初夏ですね。今の季節には、夏鳥たちが次々に渡ってきます。昔の日本人は、渡り鳥の鳴き声に、季節の風情を感じました。
 夏の季語の一つに「くいな叩【たた】く」があります。「くいな」とは、鳥の一種の名です。「くいな」が鳴く様子を、昔の人は「叩く」と表現しました。「くいな」だけでも、夏の季語とされます。水鳥の一種です。漢字では、水鶏【くいな】と書きます。
 ところが現在、クイナと呼ばれる鳥は、日本の多くの地方では冬鳥です。昔、都があった近畿地方でも、冬にしかいません。これはどういうわけでしょう?
 じつは現在、クイナと呼ばれる鳥と昔「くいな」と呼ばれた鳥とは、種が違います。
 昔、「くいな」と呼ばれた鳥には現在、ヒクイナという種名が付いています。クイナと同じクイナ科に属しますが別種です。体色が赤っぽいため「緋クイナ」と名づけられました。ヒクイナは、日本の多くの地方で夏鳥です。
 昔の人は、おそらく、現在のクイナとヒクイナとの区別が付いていなかったのでしょう。クイナもヒクイナも、水辺の草の中を忍び歩くのが得意です。姿を見るのが難しいです。おまけに、姿が似ています。区別が付かないのは、無理もありません。
 外見が似ていても、鳴き声は違います。クイナのほうは、ビュービューという感じの鳴き声で、連続して鳴きます。ヒクイナのほうは、キョッキョッという感じの鳴き声で、だんだん速いテンポになります。「叩く」という表現が似合います。
 昔の人は、ヒクイナのほうの鳴き方に、「風情がある」と感じたようです。夜、鳴くことが多いのも風情が増すと考えられました。
 この点ヒクイナは、ホトトギスと通じますね。ホトトギスも夏鳥です。夜に鳴くことが多いのも、同じです。ヒクイナとホトトギスは、ともに夏の風情を表わす鳥とされました。昔の人は、夏の宵に響く声に、おもむきを感じたのでしょうか。
 ヒクイナには、ナツクイナという別名があります。夏鳥だからでしょう。対して、クイナのほうには、フユクイナという別名があります。


図鑑には、クイナ,ヒクイナが掲載されています。ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、クイナの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
秋にも繁殖する? バン(2009/09/18)
シロハラクイナ(2009/05/15)
ツルクイナ(2007/10/24)
ヤンバルクイナは絶滅寸前?(2006/10/02)
などです

このブログ記事について

このページは、松沢千鶴が2010年5月17日 07:29に書いたブログ記事です。

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