忘れ草【わすれぐさ】とは、どんな植物?

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 今の季節、野へ行くと、点々と橙【だいだい】色の花が咲くのが見られます。ユリに似た花です。それらは、ユリではなく、カンゾウ(萱草)の仲間です。
 「かんぞう」と呼ばれる植物には、いくつかの種が含まれます。まったく同名で、漢字名が違うカンゾウ(甘草)という種もあります。紛らわしいため、「萱草」のほうのカンゾウは、近年、ワスレグサという別名で呼ばれることが多いです。
 ワスレグサ(忘れ草)とは、万葉集にも登場する名です。由緒ある名ですね。
 ところが、こちらの名は、ワスレナグサ(忘れな草)と紛らわしいです。ワスレグサとワスレナグサとは、一字違いでも、まったく違う(遠縁の)植物です。
 「忘れ草」とは、意味深長な名ですね。「この花を見ると、憂いを忘れられる」からだといいます。「この花を食べると、憂いを忘れられる」説もあります。
 実際、この花は食べられます。中華料理で、金針菜【きんしんさい】というものを、食べたことがありませんか? あれは、ワスレグサ属の植物の花を干したものです。
 日本には、ワスレグサ属のうち、いくつもの種が分布します。それらのうち、「○○カンゾウ(萱草)」と名が付くものは、ホンカンゾウ(本萱草)という種の変種です。
 つまり、「種」としては「ホンカンゾウ」です。が、通常、その種名は使われません。変種名で呼ばれます。ノカンゾウ(野萱草)、ヤブカンゾウ(藪萱草)、ハマカンゾウ(浜萱草)などです。本家のホンカンゾウは、中国に自生するものに対して使われます。
 ホンカンゾウの変種には、それぞれ特徴があります。花弁の数が多く、ごちゃごちゃした花が咲くのはヤブカンゾウです。海岸に咲くのは、たいてい、ハマカンゾウです。海岸以外の野山で、ユリにそっくりな花が咲くのは、おおむね、ノカンゾウです。
 「憂いを忘れる」ワスレグサの伝承は、中国から伝わったといわれます。中国の古い文献に、『萱草忘憂』とあります。中国の詩人も、ワスレグサ(忘憂草)を詠みました。
 中国の詩人が詠んだのは、ホンカンゾウでしょう。日本の万葉びとが詠んだのは、ノカンゾウでしょうか、ヤブカンゾウでしょうか? 想像が広がりますね。
ノカンゾウヤブカンゾウハマカンゾウが掲載されています。ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、万葉集に登場する植物のうち、食べられるものを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アサザ、あざさ、どちらが本当?(2010/7/02)。※若葉が食用にされたこともありました。
平城京の野菜? ニラ(韮)(2010/04/30)
可憐なだけでは生きていけない、カタクリ(2008/03/24)
などです。

このブログ記事について

このページは、松沢千鶴が2010年8月25日 07:57に書いたブログ記事です。

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