宿主をあやつる、フクロムシの驚異

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 寄生生物という名の響きは、ちょっと怪しげですよね。実際、寄生生物には、私たちの想像を絶する生活ぶりのものが多いです。
 今回は、そのような寄生生物の仲間を紹介しましょう。フクロムシです。
 磯で、カニやヤドカリの腹部に、袋状のものが付いているのを、見たことがありませんか? それは、フクロムシの一種かも知れません。
 フクロムシの仲間は、海に棲みます。カニ、エビ、ヤドカリなどの節足動物に寄生します。最も目にする可能性が高いのは、おそらく、ウンモンフクロムシという種でしょう。この種は、磯によくいるイソガニ、イワガニ、ヒライソガニに寄生するからです。
 ウンモンフクロムシは、一見、カニの卵のように見えます。カニの腹部から、フクロムシの体の一部がはみ出して見えるため、「卵を抱いている」と勘違いされやすいです。
 カニの卵のように見える部分は、フクロムシの体の一部です。エキステルナと呼ばれます。この部分には、フクロムシ自身の卵が、いっぱい詰まっています。
 フクロムシの本体は、カニの体内にあります。こちらは、インテルナと呼ばれます。インテルナは、植物の根のように、カニの体中に張り巡らされています。この部分が、カニから栄養を奪います。カニにとっては、災難ですね。
 災難は、他にもあります。寄生された宿主は、繁殖ができなくなるのです。
 なぜ、そうなるのでしょうか? 繁殖とは、とてもエネルギーを使う行為だからです。フクロムシにとっては、宿主から取れる栄養が、減ることになります。「そんな行為は許せない」とばかりに、フクロムシは、宿主の繁殖能力を奪います。
 ウンモンフクロムシに寄生されたカニが、雄だった場合は、さらに悲劇的なことになります。雄なのに、雌のようにふるまうカニになります。まるで卵を抱く雌のように、カニは、フクロムシのエキステルナの世話をします。
 宿主のカニは、結局、フクロムシの繁殖の手伝いまでさせられます。外見からは、袋のようにしか見えない生き物が、ここまでするとは、自然の驚異の一つですね。
図鑑には、ウンモンフクロムシの宿主となるイソガニイワガニヒライソガニが掲載されています。ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、寄生生物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ススキの下で、何を思う? ナンバンギセル(2010/09/10)
恐るべき?社会寄生、トゲアリ(2010/07/12)
年に二回、花が咲く? エゴノキ(2010/05/28)
ハリガネムシ(針金虫)は、ヒトに寄生する?(2008/08/27)
キチョウの雄(オス)が雌(メス)になる?(2007/09/03)
などです。

このブログ記事について

このページは、松沢千鶴が2011年10月17日 07:36に書いたブログ記事です。

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