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ハツカネズミは、世界的に分布するネズミの一種です。世界で最も平凡なネズミの一種でしょう。実験動物の「マウス」としても、知られますね。
世界中で、ハツカネズミがこんなに栄えているのは、ヒトによるところが大きいです。人家に入り込み、人間のおこぼれをもらうことで、繁栄するようになりました。ヒトの移動に付いていって、世界中に広がったと考えられています。
現在も、ヒトと関係なく、野に棲むハツカネズミもいます。けれども、ハツカネズミの原産地は、わかっていません。あまりにも古くから、人間と暮らし始めたために、原産地がどこなのか、わからなくなってしまいました。
ハツカネズミは、齧歯目【げっしもく】ネズミ科ハツカネズミ属に属します。ハツカネズミ属には、たくさんの種が含まれます。それらの種は、ユーラシア大陸の各地や、アフリカの各地に分布します。世界中に分布するハツカネズミは、例外です。
日本には、ハツカネズミ以外のハツカネズミ属が、もう一種、分布します。オキナワハツカネズミという種です。日本では、沖縄本島にしか、分布しません。
オキナワハツカネズミは、尾が長いのが特徴です。ハツカネズミより、腹部がはっきりと白くなっているのも、特徴です。尾の下部も、白いです。
日本国内の分布が限られているため、日本では、珍しい種です。とはいえ、絶滅に瀕しているわけではありません。沖縄本島では、普通に見られる種です。
日本国外の様子を見ると、中国南部や台湾などに、広く分布しています。なぜ、日本では、沖縄本島にしかいないのかが、謎です。この分布が不自然に見えるため、沖縄本島へは、人為的に持ち込まれたのではないかという説があります。
しかし、最近の研究によれば、沖縄本島のオキナワハツカネズミと、日本国外の同種とでは、遺伝的に、かなり隔たりがあるそうです。近年の外来種ではありません。
もしかしたら、いくつかの偶然が重なって、自然に大陸から来たオキナワハツカネズミが、沖縄本島にだけ、取り残されたのかも知れませんね。
図鑑には、オキナワハツカネズミ,ハツカネズミなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。
過去の記事でも、ネズミの仲間(齧歯目【げっしもく】)を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
哺乳類の世界は、ネズミだらけ?(2012/11/19
野ネズミは、ネズミ科じゃない?(2011/10/3)
鳥の巣? いえ、カヤネズミの巣です(2009/10/2)
日本最大のネズミは、ケナガネズミ(2008/11/10)
再発見! オキナワトゲネズミ(2008/3/7)
などです。
2014年6月アーカイブ
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ビヨウヤナギ 画像
和名:ビヨウヤナギ
学名:Hypericum chinense L.
東京 品川【2014.06.15】
図鑑には、ビヨウヤナギが掲載されています。ぜひご利用下さい。
水に浮かぶスイレン(睡蓮)の花は、涼しげで、情緒がありますね。スイレンの仲間(スイレン科の植物)は、世界中で、観賞用に栽培されています。
栽培されるのは、園芸用に作りだされた園芸品種が多いです。野生種のアカバナスイレンや、ニオイスイレン、キバナスイレンなども、栽培されることがあります。
日本に自生するスイレン科の植物は、ほんの数種です。スイレン科スイレン属のヒツジグサ、スイレン科コウホネ属のコウホネなどです。
コウホネは、日本と朝鮮半島にだけしか、分布しません。ヒツジグサのほうは、とても分布が広いです。日本から、ユーラシア大陸の北部を通り、ヨーロッパにまで分布しています。ヨーロッパで、ヒツジグサは、多くの園芸品種の元になりました。
園芸品種の数が多いのは、栽培の歴史が長いことを示します。昔から、世界各地で、親しまれた植物なのですね。それでも、最近まで、わからなかったこともあります。
それは、スイレン科植物の分類学的な位置です。じつは、スイレン科は、被子【ひし】植物の中で、非常に原始的な部類に入ると、わかりました。
被子植物とは、花が咲く植物のうち、裸子【らし】植物と並ぶ一大グループです。サクラ、タンポポ、ミカン、バナナなど、私たちが普通に思い浮かべる植物です。マツやスギなどの針葉樹は、裸子植物に含まれます。
被子植物は、現在、生きている植物の中で、最も進化したグループだといわれます。そんなグループが、どのように進化してきたのかは、重要な研究テーマです。それを知るには、被子植物の中で、どの種が原始的かを知ることが、手がかりになります。
近年になって、分子生物学が発達するまでは、この問題は、決着がつきませんでした。現在は、アンボレラ科アンボレラ属の植物が、最も原始的な被子植物とされています。
それに次いで、原始的な被子植物が、スイレン科です。アンボレラ科は、たいへん珍しい植物ですので、普通に見られる被子植物のうちでは、スイレン科が最も原始的といえるでしょう。近所の池で会える、生きている化石ですね。
図鑑には、ヒツジグサ,コウホネなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。
過去の記事でも、スイレン科の植物を取り上げています。また、生きている化石といえる他の植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
過去の記事でも、薬草として用いられる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
オオオニバスの画像(2013/3/17)※オオオニバスという種名ですが、スイレンの一種です。
マツバランは、陸上植物の祖先か?(2013/3/1)
ヤマグルマは、生きている化石?(2011/2/11)
熱帯スイレンの画像(2007/9/15)
スイレンとハスはどう違う?(2006/7/13)
などです。
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ホタルブクロ 画像
和名:ホタルブクロ
学名:Campanula punctata Lam.
東京 町田【2014.06.08】
図鑑には、ホタルブクロが掲載されています。ぜひご利用下さい。
日本のヘビの中で、どんな種を御存知ですか? おそらく、多くの方が、アオダイショウの名を挙げるでしょう。日本では、たいへん平凡なヘビの一種ですね。
アオダイショウは、北は北海道から、南は大隅【おおすみ】諸島にまで分布します。人家の近くでも、よく見られます。古い農家などに、棲みついていることがありますね。
幸いなことに、アオダイショウは、現在、絶滅の危機には、ありません。けれども、世界的に見れば、珍しい種です。日本にしか、分布しないからです。日本固有種です。
固有種のアオダイショウは、どんな種から進化したのでしょうか? これについては、大きなヒントがあります。アオダイショウと、とても近縁だと考えられている種が、日本にいるのです。それは、シュウダという種です。
シュウダは、中国南部、台湾、日本の南西諸島に分布します。シュウダの中には、二つの亜種があります。中国南部、台湾、尖閣諸島に分布するのが、チュウゴクシュウダという亜種です。南西諸島の与那国島に分布するのが、ヨナグニシュウダです。
アオダイショウとシュウダとには、共通する特徴があります。脅かされたりすると、悪臭のする分泌物を出すことです。これは、もちろん、敵を驚かせて、撃退するために出します。シュウダ(臭蛇)という種名は、この特徴から、付きました。
この共通する特徴のため、シュウダは、アオダイショウの祖先に、とても近いだろうと考えられています。日本列島と大陸とがつながっていた時代に、大陸からやってきたシュウダが、のちに、日本列島に隔離されて、アオダイショウになったのかも知れません。
とはいえ、シュウダをアオダイショウの直接の祖先とするには、証拠が足りません。一番の謎は、南西諸島の与那国島より北に、シュウダがいないことでしょう。沖縄本島のように、充分に大きく、海に沈んだことがない島にさえ、シュウダは分布しません。
いっぽうのアオダイショウは、大隅諸島以北にしか、分布しません。与那国島と大隅諸島の間が、どちらの種もいない、空白地帯です。シュウダがアオダイショウの祖先なら、この空白は、どうしたことでしょう? 謎が解けて欲しいですね。
図鑑には、アオダイショウなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。
過去の記事でも、日本に分布するヘビを取り上げています。また、ヘビと紛らわしい爬虫類も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
過去の記事でも、薬草として用いられる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
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日本に、大蛇はいるか?(2008/9/26)
などです。
人間は、遠い昔から、薬草を利用してきました。それぞれの地域に、それぞれの薬草が伝わっています。中には、遠く離れた地域にもかかわらず、同じように薬草として使われるものもあります。今回は、そのような一種を紹介しましょう。ウツボグサです。
ウツボグサは、日本を含む東アジアに、広く分布する草です。シソ科ウツボグサ属に属します。夏に、紫色の愛らしい花を咲かせます。
古くから、ウツボグサは、漢方薬に使われてきました。漢方薬としては、カゴソウ(夏枯草)と呼ばれます。この名は、ウツボグサの花が咲いた後に、すぐ、花穂が、茶色に枯れることに由来します。夏に枯れたように見えることから、夏枯草です。
東アジアのウツボグサと同じ種が、ヨーロッパにも分布するといわれます。そちらは、セイヨウウツボグサと呼ばれます。ウツボグサは、セイヨウウツボグサの亜種だとされているのですね(この二つは、別種だという異説もあります)。
セイヨウウツボグサも、ヨーロッパで、薬草として使われました。英語名が、それをよく表わしています。Self-healという名です。「自分で治す」といった意味ですね。
英語でSelf-healと呼ばれるのは、普通は、セイヨウウツボグサです。けれども、同じウツボグサ属の別種、タイリンウツボグサなどを含めて、そう呼ぶこともあります。
ウツボグサと、セイヨウウツボグサとは、同種の中の亜種同士か、別種であったとしても、ごく近縁な種同士です。なのに、薬草としての使われ方は、東洋と西洋とで、違います。含む成分は、どちらも同じだとされているのに、不思議ですね。
東洋では、ウツボグサを、膀胱炎【ぼうこうえん】や腎臓結石などに用います。西洋では、外傷に用いることが多かったようです。東洋と同じく、腎臓や膀胱の病気に用いることもありました。他に、胃腸病、肝臓病、発熱などと、たいへん幅広く使われました。
西洋では、Self-healの名に引かれて、何の病気にでも使われたのかも知れませんね。
ウツボグサと似た名前で、ウツボカズラという植物があります。ウツボカズラとウツボグサとは、まったく別です。互いに遠縁の植物ですので、混同されませんように。
図鑑には、ウツボグサなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。
過去の記事でも、薬草として用いられる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ゲンノショウコは、ゼラニウムの仲間か?(2013/5/3)
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などです。
ムラサキカタバミ 画像
和名:ムラサキカタバミ
学名:Oxalis corymbosa DC.
東京 港区【2014.06.17】
図鑑には、ムラサキカタバミが掲載されています。ぜひご利用下さい。
世界最大の昆虫は、何という種でしょうか? これは、答えるのが難しい質問です。何をもって「最大」とするか、定義がはっきりしないからです。
体の長さが最も長いことをもって「最大」とするのでしょうか? それとも、体重が最も重いことをもって「最大」とするのでしょうか? どちらも、間違いとは言えませんね。
今回は、最長の昆虫と、最重の昆虫とを紹介してみましょう。
世界最長の昆虫とされるのは、ナナフシの一種です。日本にはいない種のため、日本語名が付いていません。ラテン語の学名を、Phobaeticus chaniといいます。マレーシアのサバ州(ボルネオ島の一部)で見つかっています。二〇〇八年に、発見されたばかりです。
Phobaeticus chaniの体長は、35.7cmあります。他のナナフシと同じく、細長い棒状の体をしています。「歩く木の棒」という表現が、ぴったりです。
ナナフシの仲間には、他にも、非常に長くなる種がいます。Phobaeticus chaniが発見される前は、Phobaeticus kirbyiという種が、世界最長の昆虫でした。この種は、やはり、ボルネオに棲みます。Phobaeticus chaniより、2.9cm短いです。
最重の昆虫のほうは、コガネムシの仲間です。こちらには、日本語名が付いています。ゴライアスオオツノハナムグリという名です。ただし、この名は、種名ではありません。コガネムシ科オオツノハナムグリ属に属する種の総称です。
オオツノハナムグリ属の種は、一種も、日本には分布しません。なのに、日本語名が付いている種が多いです。これは、このグループが、「世界最大の昆虫」として、有名だからでしょう。日本でも、昆虫マニアやコレクターの間で、古くから知られていました。
ゴライアスオオツノハナムグリの体重は、100gになることがあるそうです。これは、例えば、哺乳類のハツカネズミより、ずっと重いです。ハツカネズミの体重は、30gに達しません。ハツカネズミの三倍以上もあるなんて、破格ですね。
オオツノハナムグリ属は、アフリカの熱帯域に分布します。先のナナフシの仲間といい、熱帯には、やたらに大きい昆虫が多いですね。<
過去の記事でも、いろいろな意味で「最大」の生物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本最大のヒトデとは?(2013/12/2)
ミミズは、どこまで大きくなる?(2012/4/16)
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などです。
ガクアジサイ 画像
和名:ガクアジサイ
学名:Hydrangea macrophylla(Thunb. ex Murray) Ser.
東京 港区【2014.05.27】
図鑑には、ガクアジサイが掲載されています。ぜひご利用下さい。
これまで、このブログで、奇妙な分布をする植物を、いくつか、取り上げてきましたね。今回も、そのような植物を取り上げましょう。アワブキ科の植物たちです。
日本には、アワブキ科に属する種が、六種ほど分布しています。アワブキ(泡吹)、ヤマビワ(山枇杷)、フシノハアワブキ(五倍子の葉泡吹)、アオカズラ(青葛)などの種です。ヤマビワは、ビワという名が付きますが、果物のビワの仲間(バラ科)ではありません。
世界的に見ても、アワブキ科は、小さなグループです。全部で、六十種ほどしか、属していません。分布は、温暖な地域に偏【かたよ】っています。日本などの東アジアと、マレーシアなどの東南アジア、インドなどの南アジア、中米・南米の熱帯域に分布します。
なぜ、こんな飛び離れた分布なのでしょうか? アワブキ科の場合は、この謎が解けています。ヨーロッパや北米で、化石種が見つかっているからです。
つまり、昔は、世界的に、広く分布していたのですね。それが、北米やヨーロッパでは、滅びてしまいました。このために、現在は、飛び離れた分布になっています。
アワブキ科が広く分布していた時代は、地球全体が暖かい時代でした。北米やヨーロッパで、アワブキ科が滅びたのは、のちに、そこが寒くなったためかも知れません。
日本は、アワブキ科の分布の北限といえる地域です。日本の中でも、温暖な地方にしか、ありません。例えば、アワブキは、日本の本州以南に分布します。ヤマビワは、本州の伊豆半島以南にしか、分布しません。アオカズラは、四国と九州でしか、見られません。
中でも、フシノハアワブキは、特異な分布をしています。日本では、山口県、長崎県の対馬、奄美大島以南の南西諸島、および、利島【としま】以南の伊豆諸島に自生します。国外では、朝鮮半島の一部、中国の一部、台湾、フィリピンに分布します。
ひょっとしたら、フシノハアワブキも、もっと暖かい時代には、もっと広く分布していたのかも知れませんね。この分布の謎は、まだ、解けていません。
アワブキ科は、分類についても、謎があります。他のどの科と近縁なのか、定まっていません。他の近縁な仲間は、みな絶滅したのかも知れないといわれます。
図鑑には、アワブキなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。
過去の記事でも、奇妙な分布の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
地球の歴史の謎を解く? ドクウツギ(2013/11/8)
フォッサ・マグナ要素の植物とは?(2012/11/2)
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生き別れの親類が再会? ヤマボウシとハナミズキ(2008/5/19)
などです。
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クチナシ 画像
和名:クチナシ
学名:Gardenia jasminoides J.Ellis
東京 港区【2014.05.31】
図鑑には、クチナシが掲載されています。ぜひご利用下さい。
ガクアジサイ 画像
和名:ガクアジサイ
学名:Hydrangea macrophylla(Thunb. ex Murray) Ser.
東京 港区【2014.05.24】
図鑑には、ガクアジサイが掲載されています。ぜひご利用下さい。
以前、このブログで、カメノコハムシという昆虫を取り上げましたね(謎の円盤UFO? カメノコハムシ(2008/3/10))。平たい「円盤型」をした甲虫たちです。甲虫目【こうちゅうもく】ハムシ科に属する種に、いくつも、このような種がいます。
カメノコハムシなどの「円盤型」のハムシたちは、かつて、ハムシ科のカメノコハムシ亜科にまとめられていました。けれども、最近は、カメノコハムシ亜科という分類グループは、使われなくなりました。分類学的に、意味がないとわかったからです。
以前、カメノコハムシ亜科に入れられていた種は、互いに外見が似るだけで、系統的には遠縁だとわかったのですね。「円盤型」の体は、種ごとに、別個に進化したようです。カメノコハムシ亜科の種は、多くが、ハムシ科トゲハムシ亜科に入れられました。
分類が変わっても、カメノコハムシたちが、奇妙な姿をしていることには、変わりありません。なぜ、このような体をしているのかは、いまだに、研究途上です。
「○○カメノコハムシ」の中には、成虫だけでなく、幼虫も、奇妙な姿をしているものがいます。アオカメノコハムシ、イチモンジカメノコハムシなどの種です。
アオカメノコハムシと、イチモンジカメノコハムシとは、どちらの幼虫も、背中に黒っぽいものを背負っています。この「黒っぽいもの」は、彼ら自身の糞や、脱皮した皮でできています。汚い? いえ、これは、廃物を有効利用しているのです。
アオカメノコハムシ、および、イチモンジカメノコハムシの幼虫は、成虫と同じく、植物の葉を食べます。何の武器も持たない、おとなしい昆虫たちです。彼らにとって、敵の目をどう逃れるかは、死活問題です。無防備なまま、葉の上に居続けるのは、危険です。
糞や、脱皮した皮を背負うことで、敵の目をごまかせるなら、死ぬよりもずっといいですね。実際、彼ら幼虫を見つけても、葉の上のごみくずにしか見えません。
もう少し、控え目な「化け方」をする種もいます。例えば、ヒメカメノコハムシが、そうです。彼らの幼虫は、お尻に、脱皮した皮を付けています。これだけで、敵の目をごまかせるのでしょうか? 生き残り続けているからには、効果があるのでしょうね。
図鑑には、アオカメノコハムシ、イチモンジカメノコハムシ、カメノコハムシ、ヒメカメノコハムシなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。
過去の記事でも、ハムシ科の昆虫を取り上げています。また、ハムシ科の一部の種のように、昆虫に見えない昆虫も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
眼も脚もない? カイガラムシの不思議(2011/7/25)
トゲアリトゲナシトゲトゲの秘密(2011/6/6)
小さいコガネムシ? いえ、ハムシです(2011/4/25)
謎の円盤UFO? カメノコハムシ(2008/3/10)
葉隠れの術を使う? ナナフシ(2006/11/20)
などです。
ガクアジサイ 画像
和名:ガクアジサイ
学名:Hydrangea macrophylla(Thunb. ex Murray) Ser.
東京 港区【2014.05.22】
図鑑には、ガクアジサイが掲載されています。ぜひご利用下さい。
動植物の種名は、特徴をうまく表わしていて、かつ、覚えやすいものがいいですね。今回は、そのような植物を紹介しましょう。ヤブレガサ(破れ傘)です。
ヤブレガサは、日本に自生する野草の一種です。朝鮮半島にも、分布します。その独創的な種名は、若葉の形から、名づけられました。春、芽吹いた時の若葉が、破れた傘にそっくりの形をしています。一度見れば、種名に納得できます。
この若葉の形が、印象深いからでしょう。日本の各地に、キツネノカラカサ、ウサギコーモリ、テンニンカサなどの方言名があります。中国語でも、キク科ヤブレガサ属の植物を、「兎児傘」と呼ぶそうです。どこの国でも、発想が同じですね(笑)
キク科ヤブレガサ属の種は、日本、朝鮮半島、中国、台湾などの、東アジアだけに分布します。ヤブレガサ属は、小さな属で、五、六種しか、種が知られていません。中には、ホソバヤブレガサのように、中国大陸と日本と、両方に分布する種もあります。
けれども、日本のホソバヤブレガサは、絶滅してしまったと考えられています。日本では、京都府南丹市の一部にのみ、分布していました。ここにあったホソバヤブレガサは、大陸のものの変種だとされます。タンバヤブレガサという変種名が付いていました。
日本独自の変種だった、タンバヤブレガサが絶滅したのは、残念なことですね。しかし、絶滅する種があれば、新たに発見される種もあります。二〇一三年に、ヤブレガサ属に属する新種が発見されました。ヒュウガヤブレガサという種名が付いています。
ヒュウガヤブレガサは、日向【ひゅうが】の名のとおり、宮崎県で発見されました。他に、大分県南部と、熊本県中部にも、分布するそうです。現在、確認されている限りでは、狭い範囲にしか、分布しません。それは、絶滅しやすいということです。
ヒュウガヤブレガサを、タンバヤブレガサと同じ目に遭わせては、いけませんね。それでなくても、ヤブレガサ属は、東アジアにしかない、ユニークな属です。まだまだ、これから、研究の余地があります。今後も、また、新種が見つかるかも知れません。
詩的な目で見れば、ヤブレガサの若葉の下には、小さな妖精がいそうです(笑)
図鑑には、ヤブレガサなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。
過去の記事でも、キク科の植物を取り上げています。日本で発見された、キク科の新種も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ハンゴンソウとは、どんな意味の名前?(2013/9/27)
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菊展の隠れた主役? イソギク(2010/11/15)
などです。
ベニバナトチノキ 画像
和名:ベニバナトチノキ
学名:Aesculus ×carnea Hayne
東京 品川【2014.05.04】
図鑑には、ベニバナトチノキが掲載されています。ぜひご利用下さい。
イワシ(鰯)は、日本人に馴染みのある魚ですね。食用魚として、重要です。ところが、日本語の正式名称(標準和名)を、「イワシ」という種名の魚は、存在しません。
「イワシ」と呼ばれる魚には、複数の種が含まれます。普通、「イワシ」と呼ばれるのは、マイワシ(真鰯)、ウルメイワシ(潤目鰯)、カタクチイワシ(片口鰯)の三種です。
この三種は、確かに、外見が似ています。どれも、小型で、すんなりしていて、背の青い魚です。海中では、表層に、群れをなして暮らすところも、同じです。
けれども、これら三種の中には、仲間外れがいます。それは、カタクチイワシです。
カタクチイワシは、ニシン目【もく】カタクチイワシ科に属します。対して、マイワシとウルメイワシとは、ニシン目ニシン科に属します。
昔、生物学が進んでいない頃は、これら三種は、外見どおり、近縁だと思われました。このために、同じ「イワシ」の名が付いたのですね。のちに、違うグループだとわかってからも、「イワシ」の名は、引き継がれています。
近縁でなくとも、外見が似るのには、理由があります。三種とも、生態が似るからです。生態が同じならば、体の形も同じほうが、都合が良いのですね。群れになるのは、敵から身を守るためです。小型で弱い魚なので、群れでなくては、敵に対抗できません。
日本人は、小型で弱々しく見える魚には、「イワシ」という名を付ける傾向があります。ニシン科にも、カタクチイワシ科にも属さないのに、「○○イワシ」という種名の魚が、何十種もいます。セキトリイワシ、トウゴロウイワシ、ハダカイワシなどです。
これらの「○○イワシ」たちは、分類学的には、ばらばらです。例えば、トウゴロウイワシは、トウゴロウイワシ目【もく】トウゴロウイワシ科に属します。セキトリイワシは、ニギス目【もく】セキトリイワシ科に属します。ハダカイワシは、ハダカイワシ目【もく】ハダカイワシ科に属します。セキトリイワシとハダカイワシとは、深海魚です。
これらの「○○イワシ」たちは、あまり食用にされません。日本の食卓に並ぶのは、ニシン科のマイワシなどか、カタクチイワシ科のカタクチイワシなどが、ほとんどです。
過去の記事でも、日本で食用にされる魚を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
魚か鳥か? シマアジ(2011/3/14)
味が良いから、アジ(鯵)?(2009/11/6)
キュウリウオは、キュウリの香り?(2009/4/17)
カサゴ(笠子)は、似たもの同士の一族(2007/11/26)
などです。
シャリンバイ 画像
和名:シャリンバイ
学名:Rhaphiolepis indica (L.) Lindl. ex Ker
東京 品川【2014.05.04】
図鑑には、シャリンバイなどが掲載されています。ぜひご利用下さい。