アキアカネ 画像
和名:アキアカネ
学名:Sympetrum frequens
長野 立科【2015.08.22】
図鑑には、アキアカネが掲載されています。
2015年9月アーカイブ
ヤブラン 画像
和名:ヤブラン
学名:Liriope platyphylla F.T.Wang & Ts.Tang
東京 港区【2015.09.16】<
図鑑には、ヤブランが掲載されています。
マツムシソウは、日本の高原などに生える野草です。青紫の、美しい花が咲くために、栽培されることもあります。マツムシソウ科マツムシソウ属に属する一種です。
マツムシソウ属の種は、何十種もあり、ユーラシア大陸に広く分布します。それらのうち、もともと日本に自生するのは、マツムシソウ一種だけです。
現在は、セイヨウマツムシソウや、コーカサスマツムシソウなどの外来種が、日本でも、観賞用に栽培されます。セイヨウマツムシソウや、コーカサスマツムシソウには、人工的に作られた園芸品種もあります。でも、野生のままの花も、充分に美しいです。
日本在来種のマツムシソウも、そのままで、適度な野性美があると思います。マツムシソウ(松虫草)という種名も、風情があって、いいですね。この種名は、何に由来するのでしょうか? 普通に考えれば、昆虫のマツムシ(松虫)に由来するのでしょう。
ところが、マツムシソウの種名の由来は、一筋縄では行きません。私の知る限り、由来には、三つの説があります。1)マツムシの鳴く頃に花が咲くから、2)松虫鉦【まつむしがね】という楽器に、花の形が似るから、3)能の『松虫』と関係があるから、の三つです。どれが正しいのかは、以下に書くとおり、決定打がありません。
マツムシソウの花は、実際に、昆虫のマツムシが鳴く頃に咲きます。1)は、すぐに思いつく説ですね。けれども、同じ時期に花を咲かせる種は、他に、いくらでもあります。ことさら、マツムシソウだけが当てはめられた理由が、わかりません。
2)の説の松虫鉦とは、歌舞伎に用いられる楽器です。その形と、マツムシソウの花の形とは、「似ていると言えば、言えるかも知れない」くらいのレベルです。
3)の説は、能の『松虫』に登場する松虫塚と、関係があります。松虫塚は、今も、史蹟として、大阪市に残ります。昔、この松虫塚に、マツムシソウが生えていたことから、名づけられたというのです。この説も、今では、確認のしようがありません。
種名の由来を調べると、能や歌舞伎といった、伝統芸能が絡んでくるのが、面白いです。個人的には、風情ある姿と、伝統芸能とを絡めて、名づけられたのではと思います。
図鑑には、マツムシソウが掲載されています。
過去の記事でも、能や歌舞伎といった伝統芸能と関係のある植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ピーマンとトウガラシとは、同じ? 違う?(2014/8/8)
ミカンとオレンジとは、違う? 同じ?(2014/2/14)
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分類が混乱中、ギボウシ(2011/7/29)
などです。
昆虫は、地球上で、最も栄えている生物だといわれますね。そんな昆虫が、海にはほとんどいないのが、謎とされています。そのかわり、海には、昆虫によく似た生物がいることがあります。今回は、そのような生物を取り上げましょう。ウミクワガタです。
ウミクワガタの姿は、昆虫のクワガタムシにそっくりです。雄にだけ、大きな顎【あご】があります。ただし、大きさは、普通のクワガタムシより、ずっと小さいです。大部分の種は、全長1cmもありません。小さいために、見つけにくいです。
ウミクワガタは、昆虫でないなら、何の仲間なのでしょうか? ダンゴムシやワラジムシの仲間です。最近、人気になったダイオウグソクムシの仲間でもあります。
専門的には、節足動物門【せっそくどうぶつもん】甲殻亜門【こうかくあもん】軟甲綱【なんこうこう】等脚目【とうきゃくもく】というグループに属します。ダンゴムシも、ワラジムシも、ダイオウグソクムシも、みな、この等脚目に属します。
ウミクワガタの分類を、詳しく言えば、等脚目のうち、ウオノエ亜目【あもく】ウオノエ上科【じょうか】ウミクワガタ科です。生物に詳しい方なら、ウオノエという名に、効き覚えがあるでしょう。ウオノエとは、魚類の寄生虫の名です。ウミクワガタも、幼生の頃には、魚に付いて血を吸う寄生虫生活をしています。
ちなみに、クワガタムシを含む昆虫は、節足動物門の昆虫綱【こんちゅうこう】に属します。綱【こう】のレベルで分類が違うのは、たいへん大きな違いです。
大きく分類が違うのに、なぜ、昆虫のクワガタムシと、等脚目のウミクワガタとは、姿がそっくりなのでしょうか? ウミクワガタは、クワガタムシと同じように、雄同士が、雌をめぐって、大顎で争うのではないかと考えられています。
「考えられています」というのは、ウミクワガタの生態が、よくわかっていないからです。何しろ、小さいために、発見して、観察するのが、容易ではありません。ウミクワガタ科には、何種いるのかさえ、わかっていません。今後も、新種が見つかる余地が、大いにあります。新種を発見したければ、ウミクワガタの研究者になることですね(笑)
過去の記事でも、「他人の空似」の生物同士を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
シャコとアナジャコとは、違う? 同じ?(2013/4/15)
シラウオ、シロウオ、どちらが本当?(2008/2/29)
アマツバメは世界最速の鳥?(2007/10/15)
シロアリとアリとは、どう違う?(2007/6/11)
ツタ(蔦)は落葉する?しない?(2006/12/1)
などです。
ウラギンヒョウモン 画像
和名:ウラギンヒョウモン
学名:Fabriciana adippe pallescens
長野県 立科【2015.08.22】
図鑑には、ウラギンヒョウモンが掲載されています。
ハギ(萩)といえば、日本の秋を代表する花ですね。以前、このブログでも、取り上げました(ハギという植物はない?(2005/9/27))。
一般的にハギと呼ばれるのは、ヤマハギ、ミヤギノハギ、キハギなどの種です。これらの種は、みな低木で、たくさん枝が分岐します。赤紫色の花を付けることも、同じです。マメ科ハギ属のうち、これらの特徴がある植物を、「ハギ」と呼んでいます。
ハギ属には、こういった特徴がない種も、属します。それらの種は、普通は、「ハギ」とは呼ばれません。けれども、種名には、「○○ハギ」と付くことが多いです。
例えば、イヌハギ(犬萩)という種があります。夏から秋にかけて、白い花を咲かせます。花の形は、いわゆる「ハギ」と同じです。マメ科独特の、蝶形花というものですね。全体の姿は、いわゆる「ハギ」よりも小さいです。低木というよりは、草です。
イヌハギは、観賞用に栽培されることはありません。野山に生える野草です。とはいえ、よく見れば、可憐な花が咲きます。日本の本州以南に分布します。
ハギ属には、ネコハギ(猫萩)という種もあります。こちらは、イヌハギよりも、さらに小柄です。そのうえ、全体的に毛が多く、ふわふわした感じです。このために、「犬萩」に対して、「猫萩」と名付けられたそうです。
ネコハギも、観賞用に栽培されることは、ありません。野山で、夏から秋にかけて、白い花を咲かせます。やはり、日本の本州以南に分布します。
イヌハギとネコハギとには、面白い性質が、共通します。普通の花以外に、閉鎖花と呼ばれる花を付けるのです。閉鎖花とは、文字どおり、開かずに、閉じたままの花です。
開かない花なんて、何の意味があるのでしょうか? 普通の花は、昆虫などを呼んで、花粉を運んでもらうために、開きますね。閉鎖花には、むろん、そういう機能は、ありません。閉じた花の中で、自分の雌しべに、自分の雄しべで受粉します。
何らかの原因で、昆虫などが花に来られなければ、普通の花は、結実できません。閉鎖花は、そういう状況でも、確実に結実できるように、保険の役割をしています。
図鑑には、ケハギ、ネコハギ、メドハギなどが掲載されています。
過去の記事でも、マメ科ハギ属の種を取り上げています。また、犬や猫の名が付く植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
犬がいるなら、猫もいる? 植物の名前(2013/8/30)
ハギという植物はない?(2005/9/27)
などです。
未確認動物という言葉には、ロマンを感じる方が多いでしょう。スコットランドのネス湖のネッシーなどは、代表的な未確認動物ですね。陸上は探索し尽くされても、水中になら、あんな大きな未確認動物がいるかも知れない、と思ったりしますね。
じつは、最近、日本の近海で、「未確認動物」が確認されました。ヒトよりも大きな体の新種の動物が、「発見」されたのです。それは、イルカの一種です。
その種には、ハセイルカという正式な日本語名(標準和名)が付きました。体長2mくらいになる種です。イルカとしては、標準的な大きさです。こんなに大きくて、活発な動物が、なぜ、最近まで、「未確認動物」だったのでしょうか?
ハセイルカは、マイルカに似ているからです。ハセイルカとマイルカとは、同じマイルカ科マイルカ属に属します。長らく、ハセイルカは、マイルカと混同されていました。科学が進んで、やっと最近、違う種だとわかりました。
じつは、「マイルカという種の中には、別種が混じっているのではないか」という意見が、ずっと以前から、出されていました。海域によって、体の大きさ、体色、体型などが違う「マイルカ」が、目撃されていたからです。
いろいろな意見が出されたのち、二〇一五年現在では、「マイルカ属は、マイルカと、ハセイルカと、二種に分けられる」という意見が、有力になりました。
話は、これで終わりではありません。もしかしたら、マイルカ属には、もう一種が属することになるかも知れません。それは、ネッタイマイルカという種です。
二〇一五年現在、ネッタイマイルカは、ハセイルカの中の一亜種ということになっています。ハセイルカと同種で、外見もそっくりながら、少し違う特徴のある亜種です。
ネッタイマイルカを、一亜種とすべきか、別種とすべきかは、まだ、研究者の間で、議論が続いています。どのみち、ネッタイマイルカは、日本近海には、いません。
マイルカとハセイルカとは、両種とも、日本近海に分布します。けれども、水族館では、めったに見られません。神経質で、飼育がしにくいのだそうです。
過去の記事でも、イルカの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
水族館にいないイルカとは?(2010/3/26)
イルカがクジラを救助した!?(2008/03/15)
イルカは淡水で暮らせない?(2007/09/05)
伊勢湾のスナメリが危機に?(2007/6/12)
ハンドウイルカ、バンドウイルカ、どっちが本当?(2006/6/24)
などです。
国立科学博物館で、面白い企画展が開かれています。「世界のヒョウタン展」です。植物のヒョウタンを集めた展覧会です。早速、行ってまいりました。
ヒョウタンといえば、日本人は、真ん中がくびれた、いわゆるヒョウタン形を思い浮かべますよね。ところが、あの形のヒョウタンが、世界のどこにでもあるかと言えば、そうではありません。もっと、いろいろな形のヒョウタンがあります。
会場では、世界各国の、さまざまな形のヒョウタンを見られます。ヘチマのように細長い形、カボチャのように丸い形、ねじれたキュウリのような形、丸い部分にツルの首のような細長い部分が付いた形、などがあります。
表面も、すべすべしたものばかりではありません。たくさんのイボが付いていたり、筋状の模様が入っていたりします。大きさも、同じヒョウタンとは思えないほど、違います。ヒトの指先くらいの小さい物から、子供が一人、すっぽり入りそうなほど、大きい物まであります。品種によって、バリエーションがあるのですね。
こんなにバラエティ豊かなヒョウタンの品種は、なぜ、生まれたのでしょうか? 人類が、とても古くから栽培して、品種改良をしてきたからです。なんと、一万年以上前から、人類は、ヒョウタンを栽培してきました。人類最古の栽培植物の一つとされます。
ヒョウタンは、ごく一部を除いて、食べられません。なのに、最古というほど昔から栽培されてきたのは、なぜでしょう? それは、ヒョウタンが、良い容器になるからです。
土器が作られる前、水が漏れない容器として、初めて人類が使ったのが、ヒョウタンではないかといわれます。ヒョウタンは、乾燥させて中身を抜けば、簡単に容器になります。しかも、軽くて、持ち運びやすいです。
「中身が空洞」というヒョウタンの性質は、楽器の共鳴用として、ぴったりでした。このために、世界各国で、ヒョウタンを使った楽器が作られました。
会場内では、ヒョウタンで作られたスピーカーから、ヒョウタンの楽器で演奏した音楽が流れています。ぶらぶらしているヒョウタンを見て、笑顔になれる展覧会です。
過去の記事でも、生物に関する展覧会を取り上げています。現在、開催中のものです。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
生き物を描く(2015/8/12)
などです。
先週のこのブログで、昨年、二〇一四年に、日本で、五種もの新種サンショウウオが発見された話をしましたね。先週、そのうちの三種を紹介しました。今回は、残りの二種を紹介しましょう。タダミハコネサンショウウオと、バンダイハコネサンショウウオです。
この二種は、どちらも、福島県で発見されました。タダミハコネサンショウウオのほうは、福島県只見町【ただみまち】で発見されたことから、種名が付けられました。バンダイハコネサンショウウオは、会津の磐梯山付近にいることから、名づけられました。
二種とも、サンショウウオ科ハコネサンショウウオ属に属します。福島県で発見されたのに、種名に「箱根」が付くのは、ハコネサンショウウオに近縁だからです。
じつは、この二種とも、以前は、ハコネサンショウウオだと思われていました。研究が進んで、ハコネサンショウウオとは、違う種だとわかったのですね。
この経緯は、先週に取り上げた、アマクササンショウウオ、オオスミサンショウウオ、ソボサンショウウオと、似ています。これら三種は、オオダイガハラサンショウウオという一種だと思われていました。それが、やはり、研究が進んだために、オオダイガハラサンショウウオから、三種が分離されることになりました。
このように、一種だと思われていた中に、複数の種が隠れていることは、よくあります。そのように隠されている種を、隠蔽種【いんぺいしゅ】といいます。
最近、日本のサンショウウオで、新種発見が相次いでいるのは、こういった隠蔽種が発見されているからです。DNA研究の発展などが、隠蔽種の発見に寄与しています。
タダミハコネサンショウウオと、バンダイハコネサンショウウオとは、ハコネサンショウウオの中で、隠蔽種となっていたわけです。ハコネサンショウウオでは、他にも、三種の隠蔽種が発見されています。どの種も、二〇一〇年代に発見されました。
かつて、ハコネサンショウウオは、日本の東北地方から、四国まで、同じ一種が、広く分布するとされていました。それが、隠蔽種の発見により、地方ごとに、違う種がいると判明したのですね。現在、ハコネサンショウウオ属には、六種が属するとされています。
図鑑には、ハコネサンショウウオなどが掲載されています。
過去の記事でも、日本のサンショウウオを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
二〇一四年は、サンショウウオの当たり年?(2015/9/4)
新種だけど、旧種? ハコネサンショウウオ(2013/12/16)
日本は、なぜ、サンショウウオ王国か?(2013/2/25)
日本のサンショウウオに、変動あり(2010/10/4)
サンショウウオのおたまじゃくしとは?(2010/5/10)
これまで、このブログでは、紛らわしい種名を持つ生き物を、たくさん紹介してきましたね。今回も、そのような一種を紹介しましょう。ヤマハッカ(山薄荷)です。
ヤマハッカは、日本の北海道から九州に、広く自生する植物です。低山に多い草です。秋の初め頃に、薄紫色の、小さな花を咲かせます。シソ科ヤマハッカ属に属します。
種名に「ハッカ」と付きますが、ハッカ属ではありません。ヤマハッカ属です。ハッカ属とは、同じシソ科に属するので、近縁だとは言えます。
ヤマハッカには、ハッカ属独特の、すーっとする匂いは、ありません。ならば、なぜ、「ハッカ」の名が付いたのでしょうか? 葉の形が、ハッカに似るためです。
ヤマハッカ属には、ヤマハッカ以外に、アキチョウジ、セキヤノアキチョウジ、ヒキオコシ、クロバナヒキオコシなどの種が属します。これらの種について調べようとすると、困った事態が起こります。図鑑やウェブサイトにより、ラテン語の学名が違うのです。
例えば、ヤマハッカのラテン語の学名を調べると、以下の三つの学名が出てきます。「Isodon inflexus」、「Rabdosia inflexa」、「Plectranthus inflexus」の三つです。
どれが正しいのでしょうか? 二〇一五年現在では、「Isodon inflexus」が正しいとされています。他の二つの学名は、古いものです。ヤマハッカと同じように、アキチョウジやヒキオコシなどの学名も、「Isodon」で始まるものが、正しいです。
二〇一五年現在では、ヤマハッカ属を指すラテン語の学名は、「Isodon」なのですね。
かつては、「Rabdosia」や「Plectranthus」が、ヤマハッカ属を指すとされたこともありました。日本語名は、「ヤマハッカ属」で変わらないため、日本人には、ラテン語の学名が変わったことが、気づかれにくいです。
ヤマハッカ属には、もう一つ、ややこしい問題があります。同じ属の中の別種同士で、雑種ができやすいことです。ヤマハッカとアキチョウジ、アキチョウジとクロバナヒキオコシなど、ほぼ、あらゆる組み合わせで、雑種が確認されています。おかげで、ヤマハッカ属の分類は、落ち着きません。常に、最新の情報を確認する必要があります。
図鑑には、ヤマハッカなどが掲載されています。
過去の記事でも、ヤマハッカ属の植物を取り上げています。また、ハッカ属の植物や、ラテン語の学名に関する説明もあります。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ハッカ(薄荷)は、分類学者泣かせ?(2013/9/6)
一つの種に、複数の学名は、あり?(2009/8/24)
学名で分類がわかるって、本当?(2009/08/17)
学名と標準和名とは、違う? 同じ?(2009/08/07)
セキヤノアキチョウジとは、どんな意味?(2008/9/5)
などです。
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ネギは、日本で、とても平凡な野菜ですね。ネギに近縁な植物(ネギ属の植物)には、食用にされるものが多いです。タマネギ、ラッキョウ、アサツキ、ニンニク、ニラ、ワケギ、西洋野菜のエシャロットやリーキなども、ネギと同じネギ属に属します。
これらの種名を見れば、ネギ属の特徴に気がつくでしょう。どの種にも、多かれ少なかれ、独特の匂いがありますよね。近縁な植物同士であることに、納得できます。
日本でも、お隣の中国でも、中央アジアでも、ヨーロッパでも、ネギ属の植物は、千年以上も前から、食用にされてきました。もちろん、古くから栽培され、栽培品種も、非常にたくさんあります。これなら、研究が進んでいるグループのはずですよね。
ところが、ネギ属の分類については、最近、大きな変動がありました。
長らく、ネギ属は、ユリ科に属するとされてきました。けれども、ユリ科の分類は、近年、大きく見直されている最中です。その一環として、ネギ属は、ユリ科から分離されることになりました。ネギ属は、ハナニラ属などと一緒に、ネギ科とされました。
しかし、この分類にも、異論が強くなりました。「ネギ科とされた植物には、ヒガンバナ科と共通の要素が多く、わざわざ別の科に分ける意味はない」というのです。
このために、ネギ科とされた植物たちは、まるごと、ネギ亜科として、ヒガンバナ科の中に入れられました。ネギ属の科の変遷をまとめれば、ユリ科→ネギ科→ヒガンバナ科ネギ亜科という順番です。ここ二十年の間に、ころころと変わりました。
このように変遷が激しいと、書籍やウェブサイトの記述が、混乱します。書籍でも、ウェブサイトでも、ネギ属の分類は、ユリ科とネギ科とヒガンバナ科とが、入り混じっています。書かれた時期によって、どうしても、そうなってしまいます。
ネギ属の場合、ネギ属内部でも、分類の変遷があります。例えば、ワケギは、かつては、ネギの中の一変種という意見が有力でした。現在では、ネギ(の一品種)とタマネギ(の一品種)との間にできた雑種が起源で、独立種とされることが多いです。
よく知っている生き物でも、分類などの情報には、注意が必要ですね。
図鑑には、ニラ,ノビル,ヤマラッキョウなどのネギ属の植物が掲載されています。ぜひご利用下さい。
過去の記事でも、ネギ属や、もとユリ科とされた植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
名前が総入れ替わり? ユキザサ(2015/6/5)
ユリ科は、大分裂中?(2013/9/20)
ヤマトタケルも食べた? ノビル(野蒜)(2012/3/23)
平城京の野菜? ニラ(2010/4/30)
スズラン(鈴蘭)は、ランではない?(2010/5/7)
などです。
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このブログでは、何回か、日本のサンショウウオについて、書いてきましたね。日本は、国土が狭いのに、二十種以上ものサンショウウオが分布します。しかも、その多くが、日本固有種です。そんな日本で、昨年、二〇一四年は、サンショウウオの当たり年でした。
この年には、なんと、五種もの新種サンショウウオが、発見されたのです。日本のような、国土の狭い先進国で、同じ年に、五種もの陸上脊椎動物が見つかるのは、珍しいです。
今回は、それらの新種サンショウウオのうち、三種を紹介しましょう。アマクササンショウウオ、オオスミサンショウウオ、ソボサンショウウオの三種です。三種とも、九州(の一部)に分布する種です。実際の分布域は、ごく限られた範囲です。
アマクササンショウウオは、天草諸島の天草上島【かみしま】に分布します。オオスミサンショウウオは、鹿児島県の大隅半島に分布します。ソボサンショウウオは、大分県・熊本県・宮崎県にまたがる祖母山系に分布します。
これら三種は、互いに近縁です。三種とも、サンショウウオ科サンショウウオ属に属します。発見されたばかりなので、生態などは、よくわかっていません。
同じ九州に分布する種が、いっぺんに三種も見つかったのには、理由があります。これら三種は、以前、同じ一つの種だと考えられていました。オオダイガハラサンショウウオという種名が付けられていました。
オオダイガハラサンショウウオは、かつては、紀伊半島、四国、九州に分布する種だとされていました。ところが、研究が進んだ結果、紀伊半島の個体群と、四国の個体群と、九州の三つの個体群とは、それぞれ、別の種だとわかったのですね。
二〇一五年現在では、オオダイガハラサンショウウオの分布域は、紀伊半島だけになっています。四国の個体群は、イシヅチサンショウウオという新種になりました。
そして、九州の三つの個体群が、アマクササンショウウオ、オオスミサンショウウオ、ソボサンショウウオとなりました。世界的に見れば、これだけ狭い範囲に、これだけ多種のサンショウウオがいるのは、異例なことです。両生類の豊かさを、誇れる国です。
図鑑には、オオダイガハラサンショウウオが掲載されています。ぜひご利用下さい。
過去の記事でも、サンショウウオの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
新種だけど、旧種? ハコネサンショウウオ(2013/12/16)
日本は、なぜ、サンショウウオ王国か?(2013/2/25)
日本のサンショウウオに、変動あり(2010/10/4)
サンショウウオのおたまじゃくしとは?(2010/5/10)
サルの新亜種と、サンショウウオの新種(2009/7/14)
などです。
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ムラサキツメクサ 画像
和名:ムラサキツメクサ
学名:Trifolium pratense L.
長野県 立科【2015.08.21】
図鑑には、ムラサキツメクサが掲載されています。ぜひご利用下さい。