レイシという植物の名を、聞いたことがあるでしょうか? 多くの方は、すぐには思い浮かばないでしょう。では、ライチという植物は? こちらなら、わかる方が多いと思います。熱帯や亜熱帯で取れる果物ですね。日本には、よく冷凍で輸入されます。
レイシもライチも、中国語名に基づく呼び名です。漢字で書けば、「茘枝」です。「茘枝」を日本語の音読みで読むと、「レイシ」です。ライチとは、中国南部の広東州や、台湾などでの「茘枝」の発音です。つまり、レイシとライチとは、同じ植物を指します。
二〇一七年現在では、ライチのほうが通じやすいですね。けれども、正式な日本語の種名(標準和名)は、レイシということになっています。昔は、レイシのほうが、一般的な呼び名でした。なぜ、今では、ライチなのでしょうか?
それは、おそらく、他の植物との混同を避けるためでしょう。じつは、日本語で「レイシ(茘枝)」と呼ばれる植物が、他にもあるのです。そちらの「レイシ」は、標準和名を「ツルレイシ(蔓茘枝)」といいます。ライチとは、まるで違う植物です。
ツルレイシと聞いて、どんな植物なのか、思い浮かぶ方は、ほとんどいないでしょう。ところが、ツルレイシは、多くの日本人に、馴染みのある植物です。スーパーの野菜売り場にあります。ニガウリ(苦瓜)、または、ゴーヤーと呼ばれる植物です。
ニガウリ、または、ゴーヤーの正式な名(標準和名)が、ツルレイシだとは、知られていません。ツルレイシの名は、現在では、学術的な場面でしか、使われないでしょう。
沖縄県では、ツルレイシは、ゴーヤーと呼ばれ、昔から、馴染みのある食用植物でした。日本の内地で、ニガウリ(ゴーヤー)が広く食べられるようになったのは、一九九〇年代以降でしょう。それ以降、ニガウリ、または、ゴーヤーの名が、普及しました。
ニガウリやゴーヤーの名が広まる前は、標準和名のツルレイシや、それを略したレイシという名で呼ばれることが、多かったです。これでは、ライチと紛らわしいですね。
標準和名レイシを「ライチ」、標準和名ツルレイシを「ニガウリ」や「ゴーヤー」と呼び分ければ、紛らわしくありません。人々の間に、自然に生まれた知恵だと思います。
過去の記事でも、標準和名レイシのような、熱帯または亜熱帯産の果物を取り上げています。また、標準和名ツルレイシと同じ、ウリ科の植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
グアバの日本語名は、バンジロウか?(2016/8/22)
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このブログ記事について
このページは、松沢千鶴が2017年3月27日 07:25に書いたブログ記事です。
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