私たちヒトと、他の生物とは、ずいぶん違うように思えますね。哺乳類で、常に二足歩行をし、服を着て生活するものなんて、他にいません。
けれども、「ヒトの体のでき方」を調べると、他の生物と共通する点が多いことが、わかります。どうやって、「ヒトの体のでき方」を調べるのでしょうか? ヒトの受精卵が、胎児となり、新生児として生まれるまでを、調べればよいのです。
そもそも、ヒトも、ネズミも、ニワトリも、カエルも、魚も、最初は、たった一個の卵細胞から始まります。受精卵ですね。受精卵から、だんだん体ができてゆくことを、「発生」と呼びます。これを調べるのが、発生生物学です。
何かを知るには、他のものと比較してみるのが、良い方法です。このため、発生生物学では、さまざまな動物の「発生」を研究します。よく使われる実験動物としては、マウス、ニワトリ、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ(魚の一種)などがいます。
驚くべきことに、マウスでも、ニワトリでも、アフリカツメガエルでも、ゼブラフィッシュでも、発生のある一段階では、互いに形がよく似ています。成体になれば、まるで形が違うのに、産まれる前には、区別が付けにくいほど、似た時期があります。
これは、「発生」という仕組みが、多くの生物で、共通することを示唆します。つまり、これらの生物のでき方は、ヒトのでき方とも、共通するわけです。
前記の実験動物たちには、それぞれ、実験動物に選ばれた理由があります。まず、飼育技術が確立していることが、大前提です。飼育が困難な動物では、実験どころではありませんからね。そして、発生が観察しやすいことが、重要です。
これらの点で、例えば、ニワトリは、優れています。何千年も前からヒトに飼われて、飼育技術には、まったく問題がありません。加えて、卵が大きく、観察しやすいです。ニワトリは、発生生物学に、とても重要な貢献をしています。
過去の記事でも、国立科学博物館で開催中の展覧会を紹介しています。「卵からはじまる形づくり」と同時期に開催されていますので、時間に余裕がおありでしたら、両方見るのが楽しいかと思います。
始祖鳥やドードーに会える、大英自然史博物館展(2017/3/30)
ニュース・トピックの最近のブログ記事
東京・上野の国立科学博物館で、大英自然史博物館展が開かれています。開館以来、百三十年を越える、由緒ある大英自然史博物館の所蔵品が、公開されています。
中でも、目玉の一つが、始祖鳥【しそちょう】の化石です。ロンドン標本と呼ばれる、たいへん有名な化石を、今なら、日本で見ることができます。
始祖鳥は、爬虫類的な特徴と、鳥類的な特徴とを、あわせ持った生き物です。約一億五千万年前のジュラ紀に、生息していました。恐竜と同じ時代です。爬虫類から―ひょっとしたら、恐竜から―、鳥類が進化した証拠の化石として、脚光を浴びています。
始祖鳥が、現生の鳥類の直接の祖先かどうかについては、いまだに議論されています。決着がついていません。とはいえ、鳥類の直接の祖先に近いことは、間違いありません。鳥類の進化を知るうえで、決して欠かせない生き物です。
この展覧会には、始祖鳥以外にも、たくさんの見どころがあります。入口すぐの所には、『アメリカの鳥』という、巨大な図鑑の原画があります。
『アメリカの鳥』は、伝説的な鳥類図鑑です。アメリカ合衆国に棲む鳥を、四百種以上も、実物大で(!)、正確な色で、細密に描いています。そんなことをすれば、巨大な書籍になるのは、当然ですね。値段も、巨額です。
この図版は、鳥好きなら、生涯に一度は見るべきです。鳥の図譜の最高傑作です。
鳥に関する展示では、他に、モアの全身骨格、ドードーの骨格の一部、オオウミガラスの模型などがあります。これらは、すべて、現代では、絶滅した鳥たちです。モアも、ドードーも、オオウミガラスも、人類が絶滅させてしまいました。
会場では、始祖鳥やモアやドードーの、復元映像を見ることができます。CGによって、絶滅生物がよみがえりました。まるで、本当に生きている姿を撮ったようです。
ことに、ドードーの映像が、かわいいです。小さな翼をばたばたさせて、異性にアピールしたり、同性と争ったりします。絶滅しなければ、こんなかわいい姿を、実際に見られたのでしょう。いろいろと、考えさせてくれる展覧会です。
過去の記事でも、モアやドードーやオオウミガラスに関連したことを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ダチョウは、昔、空を飛べた?(2017/2/10)
絶滅からよみがえる、シマホンセイインコ(2016/12/23)
南極にペンギンがいて、北極にいないのはどうしてですか?(2006/6/22)